邦題『ビトレイヤー』。元々、観るつもりでロンドンに行ったんですが、到着して、
ヒースロー空港の地下鉄の駅に早速看板があって大興奮。ロンドンバスに大き な広告も付いていて、主演の二人、ジェームズ・マカヴォイとマーク・ストロングは英国で人気があるのを確認。当たり前だけど、日本では考えられない宣伝の仕方です。
(3月の時点でまだ『007 スカイフォール』をやっていたのもイギリスならではで感慨深かった。2012年10月公開だったみたいなので、超ロングラン)

『Hansel and Gretel: Witch Hunters』を観たempireの隣りの隣りくらいにあるVueという映画館で観ました。こちらのほうが新しい印象だったけれど、実際はどうだったんだろう。椅子は倒れませんでした…。
以下、ネタバレです。





タイトルのリズムとパンチという言葉のなんとなくのポップさ、それにポスターの色合いなどから、楽しげな雰囲気を想像していたのですが、実際はハードボイルドな刑事物でした。復讐の話で、ジェームズ・マカヴォイが可愛い顔の眉間に皺を寄せていた。

それならそれでも良かったんですが、敵同士だったマカヴォイとマーク・ストロングが共通の敵に向かっていくことになって、途端に作品の雰囲気が変わる。呉越同舟ものだった。
どうしても許せない相手だったのに、父親である面を見て、自分とも似た面を見つける。ハードボイルドなのに、主演の二人の男が泣き顔を見せるのが良かった。
また、最後の最後では、殺したいほど憎いはずなのに、一緒に行動したことで情が芽生えたのか、結局撃てずに逃がしてやるのもいい。

敵の家に潜入して、お母様を囲んでマカヴォイとマーク・ストロングが座っているシーンは緊張感の中になんとも言えぬ可笑しみがあった。一触即発なのに、何も知らないお母様は息子のお友達をもてなしているつもりになっている様子がおもしろく、劇場内でも笑いが起こっていた。
そのあとの家の中での銃撃戦も恰好良かった。

銃撃戦はこの他にもクラブみたいな場所と最後のトランクルームのようなコンテナ置き場のような場所でと、合計三回くらいありましたが、どれも恰好良かった。スローになるのもいいし、最後の銃撃戦では主演二人の身長差も良かった。

ただ、アクションシーンは見応えがあっても、英語がわからないため、細かい陰謀のくだりがよくわからなかった。あと、女性記者も、マカヴォイがかなり怒り悲しんでいたため、殺されたのがあとでわかった。いまいち流れがわかりにくかったので、日本語字幕付きで見直したい。


グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』のその後。森に捨てられた兄妹が、
大きくなってウィッチハンターになったというストーリー。
最初は日本での公開日も告知されましたが、その内公開がないかもしれないという話だったので、ロンドンで観ました。当然、字幕は付いていなくて英語がほとんどわからない中観ましたが、アクションが主体だし、内容はわかった。

主演二人がとても可愛く撮られているのが良かった。グレーテルは勇ましいところもあるけれど、ちゃんと女の子らしいところもあるし、モテるのがいい。ヘンゼルは女性にアプローチされてもなんだかんだでかわしていくのが良かった。でも、力づくで迫られるとあっさり籠絡されちゃうあたりも愛おしい。武器が大型なんですが、その持ち方も恰好良かったです。

途中から、優しい怪人とヘングレマニアの男子という二人の仲間ができるんですが、そのキャラクターもいい。その新パーティー四人で新しい町を訪れる続編を作ってほしい。ストーリーは別に同じ感じでもかまわないので。


日本公開が危ぶまれている原因はゴア具合だという話を聞いたんですが、本当のところはよくわからない。普通のヘンゼルとグレーテルだと思って子供が観てしまったら…という懸念でしょうか。

『リンカーン/秘密の書』と同じテイストだと思う。あちらはヴァンパイアハンターでこちらはウィッチハンターという点も含めて。ゴア具合にしても、この作品はそんなでもなかったです。確かに肉片は多少飛びますが。一応ジャンルもホラーになるのかもしれない。でも、『リンカーン/秘密の書』のほうがよっぽどゴアだった。それでも、きっとあの作品も興行成績はふるわなかったんだろうし、難しいのかもしれない。

公開しないのは仕方がないにしても、DVDスルーでいいのでなんとか日本でも観られるようにしてほしい。今回、劇場では3Dで観ましたが、別に2Dでいいと思います。
(追記:公開は無くなり、DVDスルーになりました)


ロンドンのレスタースクエアにあるempireという映画館で観ました。もう公開が終盤だったせいか、客席はかなり少なかった。けれど、横に長いのでスクリーン自体は大きく観やすかった。列は三列くらい。
椅子が寄っかかると後ろに傾く、リクライニングシートのようになっていた。でも、後ろに傾いても固定されるわけではないので不安定で落ち着かなかった。
日本では採用されてない椅子だと思うけど、海外だと一般的なのかな。海外ではハワイの一箇所の映画館にしか行ったことがないんですが、ハワイの椅子は普通だった。
(追記:『ユー・ガット・メール』で二人が行く映画館がその椅子っぽく倒れているのを確認。たぶん、場所はNY)


飛行機内にて三本目。だいぶ頭が朦朧としてきた中で観ました。
本当はこの後に、オムニバス映画『BUNGO〜ささやかな欲望〜』の中で山下敦弘監督が担当した“握った手”(坂口安吾原作)も観たんですが、山下監督は昔の大学生が主人公の映画が続いてるなあと思ったくらいで、あまり内容を憶えていません。山田孝之は、変態と紙一重の演技をするのがうまかった。

『コズモポリス』はデヴィッド・クローネンバーグ監督作品。名前はよく聞くけれど、実は一作も観たことがないです。

一人の金持ちの一日なんですが、いろんな場所でいろんな人に会っていろんな会話をする。ストーリーはほとんどが会話を通じて進んでいくけど、その会話内容にそれぞれ重大な意味が隠されていそうだった。途中のレゲエソングみたいなのも唐突でありながら意味深。
一見普通の会話のようで、哲学的なことを言っていそうな感じがしたけど、深い意味はよくわからなかった。

主演のロバート・パティンソンは『トワイライト』シリーズで有名ですが、『トワイライト』→ラジー賞常連ということで、観たことがないにも関わらず、作品や彼自身に対してあまりいい印象を持っていなかった。
しかし、今回初めて演技しているのを観たら、少しファンになってしまうくらい良かった。
自信家なようでいて、ツメが甘い部分もあって、妙な色気もある。映画全編を通して出突っ張りでしたが、没落していく金持ちボンボンがハマり役だと思った。

以下で少し、ラストシーンについてネタバレです。







特に、ラスト、殺し屋に後ろから銃を突きつけられて泣き出すシーンがすごく良かった。いままで得意げだった顔が、一気に幼く情けないものに変わる。このラストが好きなので、映画自体の評価も上がってます、私の中で。


映画館で観ようと思っていて逃していたので飛行機内にて観ました。ティム・バートン監督作品。84年に作られた30分の短編映画を長編化したものとのこと。
キャラ造型がティム・バートンの描いたイラストの通りで、それが動くのだから可愛い。人間も動物も可愛かった。そのくせ、スパーキー(犬)やおヒゲちゃん(猫)については、見た目はぬいぐるみっぽくても、動きが誤魔化すことなく本物の動物みたいなのも良かった。しっかり研究されているような動き方をしていた。
あと、個人的に好みですが、トシアキが恰好良かったのでフィギュアとか欲しいけど、出てないみたい。
吹替で観たのでわからないんですが、トシアキはちゃんと日本人が話す英語になっていたらしいというのが気になる。

配給がディズニーなんですが、最初にロゴとシンデレラ城の映像と『星に願いを』が流れる場面、音楽が途中で一転しておどろおどろしいものになり、お城の背後も曇って…というのが良かった。ストーリーへのうまい導入の仕方でした。たしか、『トロン:レガシー』もこの画面が変えられていたと思う。

キャラクターや映像は良かった。でも、ストーリーの最後がちょっとどうなんだろうと思ってしまいました。

以下、ネタバレです。








タイトルにフランケンと付いていることからもわかるように、死んだ愛犬、スパーキーを生き返らせたことでのすったもんだが描かれています。他の子供も真似して死んだものを生き返らせたために、大変なことに。
それは、子供のしたことだから…では済まされないけれど、事態が終息して、大人が子供のいたずらを諭して一件落着だと思うんですよ。
ところが、大人たちがフランケンになったスパーキーをフランケンとして復活させることに協力しちゃう。そりゃあ、フランケンでもスパーキーの動きは愛らし かった。飼い犬とはいつも一緒にいたいよね。でも、不慮の事故とはいえ、一応は死んでいる。そのお別れまで含めないといけないんじゃないの? 悲しくても仕方ないじゃない。その辺をファンタジーだからといって有耶無耶にしてしまうのはどうかと思う。子供も観るだろう映画なんだし、ちょっとした教訓みたいなものは必要なんじゃないか。

短編のほうは観ていないので、違いはわからないけど、もともとこんな終わり方なんだろうか。そもそも、死んだ者を生き返らせたことで大変なことになったことは、みんな忘れちゃったんだろうか。今回スパーキーを生き返らせたら、いつか、うちのおじいちゃんも…とかってことになるよ。子供はそれが許されると思っちゃう。


飛行機内にて鑑賞。小さくそんなに良いモニターではありません。
ブラッド・ピット主演作ということで派手な宣伝が行われていましたが、映画自体は地味目でした。
トム・クルーズの出た『アウトロー』に雰囲気が似ていた。少し影のある主人公…ダークヒーローの活躍。でも、いまいちどんな人物だかわかりにくくもある。キャラクターが弱い。
世界観自体は恰好良くはあるけれど、少し地味すぎた。

ここで?と驚いてしまうような終わり方も中途半端で、もう一盛り上がり欲しかったような物足りなさが残った。97分作品なので、もう2、30分くらい付け足して派手な見せ場が欲しかった。


ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァというダブル監督作品。172分とかなりの長丁場ですが、六つの時代が描かれていて、それがバラバラに映画に組み込まれているのでそれほど長さは感じない。一つ一つの作品を順番にやっていたら三本目か四本目くらいで飽きそうだけど、この方式だと短編を六本一気に観させられたような感じ。それぞれまったく違う時代だし、美術や話のトーンも違うので、話がごちゃごちゃになることはない。

元々、輪廻がテーマになってるという情報しか入れていなくて、確かにトム・ハンクスとハル・ベリーは過去に会ったことがあることをなんとなく感じているみたいだったけどこの二人だけじゃないか、と思っていたら、エンドロールで実は誰がどの役演じてましたみたいなのが出て驚いた。特殊メイクやちょい役すぎるなどの理由でまったく気づかなかった。それを踏まえた上でもう一度観たいけれど、やっぱり173分に尻込みしてしまう。見始めたらそんなに長さを感じないことはわかっていても覚悟がいります。
以下、ネタバレです。








ただ、その演じている役が同じ人がその時代でのその人なのかというのがよくわからない。例えば、ベン・ウィショーはある時代では作曲家を演じていて、別の時代ではレコード屋の店長を演じていた。それは音楽という繋がりがあるし、生まれ変わりなのかなとも思うけど、未来の韓国人ビジネスマンはまったく関係ないし、ちょい役すぎて本編からは削られているらしい。そういったお遊び的な配役と本当に輪廻なのかというのが不明。でも、ベン・ウィショーの女装はもう一度観たいです。

ベン・ウィショーが好きなせいもあるけど、彼が主役のエピソードはもっと長く観たかった。あれだけで映画一本作ってほしい。できれば、次の時代で結ばれてほしかったけれど、死んだ時期が違うと生まれ変わる時期も違ってしまうんだろうか。ハッピーエンドにはならなかったけど、苦悩の表情とナイーブさで、悲劇が似合う俳優だと思う。

ペ・ドゥナのエピソードは未来のイメージがダサいっちゃダサいんだけど、どことなく昔懐かしさすら感じて、それが逆に心地良い。ペ・ドゥナが量産型娼婦みたいなのをやるのは『空気人形』から何かしら影響を受けているのかなとも思った。もともと無表情女優だとも思うけど、あのつるっとした感じが可愛い。

一つ一つのエピソードはそれぞれ面白いけれど、観終わったときに、いまいち一貫したテーマが見えてこないのが残念。
輪廻の面でのそれぞれのキャラクターの繋がりや因果関係が明確にわかって、はっとする瞬間が欲しかった。過去の記憶が蘇ったりはしないまでも、何かしら、匂わせるようなものは欲しい。私の理解力が足りないだけかもしれないけど。

太 平洋航海記、クラウドアトラス六重奏、紋章のような痣、ソンミ様など、ところどころ、キーワード的なものは受け継がれていても、それが大きな力を持ってこない。全ての時代を貫く何かが欲しかった。そのため、面白かったのに、なんとなくもやっとしたものが残った。整理するためにパンフレットを購入して読んでみたけれど、各時代がまとめられていて、資料としてとてもよくできていた。映画だけよりも、この作品のことが理解できた気がする。

原作を読んだらもう少しわかるだろうとも思うけど、パンフの出演者インタビューを見てると、原作読んでもわかりづらいみたいなことを言っている人が多くてここでも尻込み…。でも、もう一度、映画は見直したいです。

『キャビン』


 『アベンジャーズ』を監督したジョス・ウィードンが脚本、製作で関わってます。公開や撮影時期は『アベンジャーズ』の少し前。
若い男女が人里離れた場所でいちゃいちゃしている間に次々と襲われて…という定番中の定番のホラー設定だったけれど、そのままそのような映画ではないことは知っていた。でも、じゃあ、どんな話なのかというのはまったく耳に入れないようにしてのぞみました。この映画、予告編や公式サイト、ポスターまでがネタバレだというので、観る前にはかなり気をつけた。その結果、実際のストーリーは予想してたものとは二回転くらい違ってて、驚きとともに楽しめました。
以下、ネタバレです。







よくある定番ホラーの始まり方だった。肌色多めのギャルがちょっと恋愛について悩んだりしながら女友達や男の子とキャイキャイしている。それで遊びに行くことになって、途中に気味の悪い住民がいて、いやな予感がして…というよくある感じ。しかし、わりと序盤に種明かしはあった。彼らの姿をどこかの施設で監視しているのだ。どうやら、その施設の人たちが、若い男女をよくあるホラー風にプロデュースしようとしているらしい。
なんとなく、映画の中の山小屋パートは古典的なために古い映画のように見えて、なんだかよくわからない謎の施設のパートはハイテク満載のため最近の映画に見える。この二重構造が面白い。

モンスターを送り込んで、怖がっているギャルたちを監視しているときには、施設側の立場でもっとやれなんて思いながら観ていたけれど、途中から様子がおかしくなる。モンスターを使って若者たちを本当に殺し始めてから、もう一度、映画の方向性が見えなくなってくる。しかも、モンスターは作り物ではなく本物らしい。え、謎の施設でこの人たち何やってるの?何者なの?

そして、どうやら人を本当に殺しているのに、施設内ではドッキリ大・成・功!みたいな感じで大喜び。賭けまでしている。この辺から、施設側ではなく、若者側に感情移入先が変わった。この観客の視点変更の誘導も見事。

生き残った若者たちは逃げて施設に辿り着くんですが、ここでの出来事がおもしろい。施設内に保管されてた様々なモンスターが外に放たれる。
静寂の中、エレベータがチンという音を立てて、この階に止まったのを知らせる。扉が開き、よく知ってるモンスターや知らないモンスターが、ぐわっと大量に飛び出して来る。本当に多数の、いろんな種類の各国のモンスターが出てくるので、設定資料集みたいなのが欲しい。それぞれ細かい背景とかありそう。
このモンスター大集合具合を観ていると、ジョス・ウィードンはこの大集合系をうまくまとめるのが上手い人なのかなと思ってしまう。

モンスターたちは施設の人間を襲う。阿鼻叫喚。さっきまでひとごとだと笑っていた人たちがどんどん喰われていく。
ここでの人の襲われ方はなかなか壮絶で、やっぱりこの映画は一応ホラーなのかなと思う。ただ、モンスターたちの大量さ加減はいっそ清々しくて、楽しくなってしまう。わーきゃー言いながら観たい。怖くはないと思うけど、血は大量に出るのでその辺が駄目な人には向きません。

そして、最後にシガニー・ウィーバーがこの施設の所長役で出てくるのも無駄に豪華。ラストは更に話が大きくなって……。これは、本当に、他では観たことのないストーリーでした。意外性が高いです。

『マイティー・ソー』でブレイクした(かどうかは知りませんが)、クリス・へムズワーズも出てます。どこかで、『キャビン』の役から『マイティー・ソー』の役を指名されたみたいなのを見たと思ったんですが、ソースが不明なのと、『キャビン』の撮影時期もいまいちわからないので違うかもしれません。
ただ、すごくクリヘムらしい役です。クリヘムらしいというか、ソーっぽいというか。考えるより力勝負。バイクで突っ込んでいって壁に当たって死ぬというのもとてもそれらしい。


観終わったあとで、ネタバレだと噂の予告編を見てみたけど、確かに、本当に映画の前に見なくて良かったと思う内容だった。普通のホラー映画っぽいシーンもあるんだし、偽の予告でいいんじゃないかと思う。この場合はそんなシャレも必要でしょう。施設で監視しているシーンは入らないほうがいいと思う。
予告編って映画館で否応無しに見せられるものだから、『キャビン』の予告を流す映画を観なくて良かった。

そういえば、主題歌がNINの『Last』でした。このある意味、投げっぱなしで絶望しかない終わり方に続く、暴力的なギターリフがよく似合う。個人的に大好きな曲ということもありますが、この映画の締めに最高。


三月末で閉館する銀座シネパトスを舞台にした、銀座シネパトス限定上映作品。シネパトスにゆかりの作品の出演者が次々とやってくる。ネタバレも何もないですが、一応間を空けておきます。










そこには昔は川があったらしい。東京大空襲で発生した瓦礫を処理するために川を埋めたらしい。そこが昭和27年に地下街になり、映画館もできたのだとか。上映している作品も独特で、杉本彩や最近だと壇蜜みたいなソフトポルノものや昔の時代劇、二ヶ月遅れくらいの最近の作品、B級ホラーにセガールの沈黙シリーズなど。一風変わった場所にあり、おもしろい雰囲気の映画館だったけれど、耐震性の点から立ち退くことになったとのこと。

職場がすぐ近くだったものの、数えるほどしか行ったことが無かった。イッセー尾形が昭和天皇を演じた『太陽』、『嫌われ松子の一生』と『宇宙人ポール』のリバイバル、 『修羅雪姫』二作品くらいでしょうか。でも、映画館を舞台にした作品をその映画館限定で、しかも閉館前最後のロードショーとなったら行っておくしかないだろうと思った。あと、ポスターの染谷くんが恰好良かった。彼はどちらかというと優等生的なイメージが強かったけれど、このポスターでは一瞬誰だかわからなかった。金髪で目が隠れるくらい前髪が長くぼさぼさ、だらんとした服装。ガラが悪くて最高。映画の本編ではそんなに悪い子ではなかったです。

シネパトスの館長秋吉久美子とその夫染谷将太が一応の主人公。二人と閉館する映画館を軸にして、シネパトスにお客さんがやってきて、座席で会話をする。出演者はパンフレットのプロフィールを読むと納得したけれど、お姿を見ただけだとどなただかいまいちわからなかった。たぶん、詳しい人が見たら、すごく豪華なんだろうと思う。古い日本映画やテレビドラマにまったく詳しくない。わからなくて残念。月光仮面の方とウルトラマンの方の共演とか、知ってたらぐっときただろうなあ。
ただ、監督、出演者、他のスタッフ全員がシネパトス大好きという気持ちと無くなるのを惜しむ気持ちが伝わってきた。あのラストも、どうせなら俺たちの手で…という痛快さが感じられた。

本当に序盤に、シネパトスの地下鉄の音についての解説が入った。確かに映画を観ている最中でもときどき聞こえてくる。それについて怒って席を立つお客さんもいたらしい。いやいや、こんな変な場所にあるんだし、古い映画館なんだから仕方ないでしょう。あれが味なんだと思う。

そういえば、予告の時間が二分って書いてあって随分短いと思ったけど、この作品で最後なんだし予告もなにもないんだったと考えてさみしい気持ちになった。


タイトル、原題のUnchainedを“繋がれざる者”と訳してあるのが粋。
レオナルド・ディカプリオの舞台挨拶付きの回を観てきました。以下、ネタバレです。



ディカプリオ、前までは好きではなくて、キャーキャー言われているのもよくわからなかった。『インセプション』のコブのキャラがあれだったので、最近はなんとなく好きです。
この程度だったけれど、実物はとても恰好良かった(ほぼ最後席でしたが)。レオ様と呼ばれるのもわかる。トム・クルーズがスターだったのに対して、ディカプリオは王子様のようだった。顔が大きいイメージがあったけれど、案外背が高く、スタイルもいい。そして、なんとも言えない気品みたいなものが漂っていた(ほぼ最後席でしたが)。

舞台挨拶での質問抜粋。
参考にした悪役はいるか?という質問には、『トゥルー・ロマンス』のゲイリー・オールドマンと『トゥームストーン』のヴァル・キルマーと答えてた。ヴァル・キルマーの話し方が良かった、とのこと。

ディカプリオが演じるカルヴィン・キャンディが人の頭蓋骨を持ち出して骨相学を披露する場面がありますが、それはディカプリオの提案でタランティーノが脚本に組み入れたもの。

他に何役をやってみたかった?の質問には、「ジャンゴ!」というディカプリオジョーク。でも、とにかくこのカルヴィン・キャンディという役が気に入っていそうでした。

日本では京都が好きで五回行ったとのこと。ローマやポンペイみたく、歴史が感じられるのがいいらしい。「京都、行ったことある人ー?」の質問にはほとんどの人が手を挙げてたので、ここは「京都、五回行ったことある人ー?」にしたら良かったのに。

「自分のことだけ考えてわがままに振る舞えたから、悪役を演じるのは楽しかった」って言ってたけど、『インセプション』も…そんな役じゃなかったですか…? 

ともあれ、今回の悪役はかなりぶっ飛んだ感じで、いきいきととても楽しそうに演じているのがよくわかった。Nワード連発、ゲスな笑い方もカワイイ。
そうなんですよ、カルヴィン・キャンディは悪者でひどいこともたくさんするけど愛嬌があった。どちらかというとサミュエル・L・ジャクソンが演じてたキャラクターのほうが極悪人だった。でも、どちらも好きです。

キャラクターが全員良かった。一人一人が愛情を持って生み出されたのがよくわかる。
クリストフ・ヴァルツはやっぱりうまい。あやしいんだか、誠実なんだかわからない感じがたまらない。また、彼の幌馬車のてっぺんに歯がついていて、それが動くとびよんびよん揺れてるのも可愛いかった。
ビールの注ぎ方のこだわりとか、メイドさんなんでミニスカなのとか、細かく気になるところもちらほら。

ストーリーは勧善懲悪だし、どんでん返しもない。いままでのタランティーノ作品にあったアクは弱まってるので、この作品でアカデミー脚本賞を受賞したのは少し意外な気もする。そもそも、タランティーノがこれを書いたっていうのがおもしろかったのかな。

ただ、大筋は勧善懲悪であっても、タランティーノ特有の無駄話、無駄シーンは多い。上映時間165分なので、普通ならその無駄なシーンを削ってコンパクトにしてほしいと思ってしまうが、タランティーノ作品の場合、その無駄シーンがおもしろいので、逆にもっとみせてくれと思ってしまう稀な例。

きっと、西部劇の小ネタも満載だったんだと思いますが、詳しくないのでまったくわからなかった。しかし、観終わったあとに、気持ち良く映画館を出られるのがいい。楽しかった!



『レギオン』



2010年公開。世界観が好きそうな雰囲気だったので観てみました。

12/23に不良天使みたいなのが街に降り立って、自分の翼をもぐ…というところまでは良かった。ポール・ベタニーかっこいい!

そ のあと、シーンが変わって、なぜか砂漠の真ん中の廃れたダイナーが舞台になる。舞台はさっきの街で良かったと思うし、これ以降、クリスマスは関係ない。と思ったけど、赤ちゃんが産まれた日付が12/25でキリスト…みたいなのと関わってくるのかな。聖書の話が出てきたし。明確な説明はなされません。

それで、そのダイナーに出産間際の女性と恋人とその家族、ダイナーのお客さんがいて、人間を滅ぼそうとする天使軍団が襲いかかってくる。ポール・ベタニーは人間側に寝返ったので味方です。
天使軍団は天使といっても羽根は無くて、人間に乗り移っているのでゾンビのようになっている。生身の人間なので、銃で撃たれれば死ぬけれど、ほぼゾンビ映画でした。死にかけの旦那さんを救おうとする妻の描写などは、ゾンビとわかっていても見た目は知り合いなので殺せないというような、ゾンビ映画特有の悲哀がありました。
そのゾンビ軍団、ではなくて天使軍団がいちいち車でやってくるのがおかしかった。砂漠の真ん中だから仕方ないよね。人間に乗り移ってるだけだから空飛べないしね。なんにせよ、もう少しどうにかならなかったのか?と思うようなシュールな光景でした。

それを迎え討つポール・ベタニーがとにかくかっこいい。無敵。2丁拳銃ならぬ2丁機関銃もあるし、強いだけでなく、女性のお産のサポートもする。さっきまでばったばったとゾンビ…じゃなくて、天使が乗り移った人間を撃ち殺してた人が、「もっといきんで!」と言っていた。なんでもできてしまう。パーフェクトです。

ラストでまた会えるかとの質問に「信じればな」みたいなことを言っていたけど、まさか続編を作るのかな…。そう思って調べていたら、去年、同じ監督、ポール・ベタニー主演で『プリースト』という映画が公開されていた! しかし、こちらは続編ではなく吸血鬼ものらしいです。少し気になってきていてどうしよう。