『クラウド アトラス』


ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァというダブル監督作品。172分とかなりの長丁場ですが、六つの時代が描かれていて、それがバラバラに映画に組み込まれているのでそれほど長さは感じない。一つ一つの作品を順番にやっていたら三本目か四本目くらいで飽きそうだけど、この方式だと短編を六本一気に観させられたような感じ。それぞれまったく違う時代だし、美術や話のトーンも違うので、話がごちゃごちゃになることはない。

元々、輪廻がテーマになってるという情報しか入れていなくて、確かにトム・ハンクスとハル・ベリーは過去に会ったことがあることをなんとなく感じているみたいだったけどこの二人だけじゃないか、と思っていたら、エンドロールで実は誰がどの役演じてましたみたいなのが出て驚いた。特殊メイクやちょい役すぎるなどの理由でまったく気づかなかった。それを踏まえた上でもう一度観たいけれど、やっぱり173分に尻込みしてしまう。見始めたらそんなに長さを感じないことはわかっていても覚悟がいります。
以下、ネタバレです。








ただ、その演じている役が同じ人がその時代でのその人なのかというのがよくわからない。例えば、ベン・ウィショーはある時代では作曲家を演じていて、別の時代ではレコード屋の店長を演じていた。それは音楽という繋がりがあるし、生まれ変わりなのかなとも思うけど、未来の韓国人ビジネスマンはまったく関係ないし、ちょい役すぎて本編からは削られているらしい。そういったお遊び的な配役と本当に輪廻なのかというのが不明。でも、ベン・ウィショーの女装はもう一度観たいです。

ベン・ウィショーが好きなせいもあるけど、彼が主役のエピソードはもっと長く観たかった。あれだけで映画一本作ってほしい。できれば、次の時代で結ばれてほしかったけれど、死んだ時期が違うと生まれ変わる時期も違ってしまうんだろうか。ハッピーエンドにはならなかったけど、苦悩の表情とナイーブさで、悲劇が似合う俳優だと思う。

ペ・ドゥナのエピソードは未来のイメージがダサいっちゃダサいんだけど、どことなく昔懐かしさすら感じて、それが逆に心地良い。ペ・ドゥナが量産型娼婦みたいなのをやるのは『空気人形』から何かしら影響を受けているのかなとも思った。もともと無表情女優だとも思うけど、あのつるっとした感じが可愛い。

一つ一つのエピソードはそれぞれ面白いけれど、観終わったときに、いまいち一貫したテーマが見えてこないのが残念。
輪廻の面でのそれぞれのキャラクターの繋がりや因果関係が明確にわかって、はっとする瞬間が欲しかった。過去の記憶が蘇ったりはしないまでも、何かしら、匂わせるようなものは欲しい。私の理解力が足りないだけかもしれないけど。

太 平洋航海記、クラウドアトラス六重奏、紋章のような痣、ソンミ様など、ところどころ、キーワード的なものは受け継がれていても、それが大きな力を持ってこない。全ての時代を貫く何かが欲しかった。そのため、面白かったのに、なんとなくもやっとしたものが残った。整理するためにパンフレットを購入して読んでみたけれど、各時代がまとめられていて、資料としてとてもよくできていた。映画だけよりも、この作品のことが理解できた気がする。

原作を読んだらもう少しわかるだろうとも思うけど、パンフの出演者インタビューを見てると、原作読んでもわかりづらいみたいなことを言っている人が多くてここでも尻込み…。でも、もう一度、映画は見直したいです。

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