『アンブレイカブル』



2000年公開。日本では2001年公開。
M・ナイト・シャマラン監督最新作『スプリット』のネタバレも含みますのでご注意ください。







『スプリット』の最後に本作主人公が出てきて、しかも、2019年1月18日(現地)には『アンブレイカブル』と『スプリット』の世界が合わさった両方の続編『GLASS』が公開されるとのこと。
この情報は『スプリット』公開前から監督自らがTwitterにて発信していたが、私は『アンブレイカブル』はタイトルしか知らなかった。観ておけばよかったのですが、忘れたので遡って鑑賞。

17年前の作品であるにも関わらず、まったく昔の作品という印象は受けなかった。むしろ、当時はどうだったのだろうと思ってしまうくらい、現代の作品の雰囲気だった。
簡単に言ってしまうと、今流行りのアメコミヒーローもののようだった。

もしかして、マーベルとかDCでコミックスが出てるものの実写化なのかなと思ってしまったほどだ。しかし、もちろんそんなことはなく、シャマランのオリジナル脚本作である。

ヒーローものだけれど、主人公が力に悩み、でも使命に気づき、人助けをするというストーリーは、最近の王道でもあるし、ほとんど『ダークナイト』のようだった。ちなみに、特典映像では原作の『ダークナイト』の話もされていた。『ダークナイト』公開が2008年なので、だいぶ先取りだ。あれが、明るいだけではなくヒーローが悩んで人間的な面も見せる、リアリティのあるヒーローものの先駆けなのかと思っていたが、その8年も前にこの作品があったのだ。

これ、コスチュームを自分で作ったりし始めたら本当にアメコミだなと思ったけれど、助けるときの防水ポンチョがそれのようだった。
新聞に助けてくれたヒーローのイラストが出ていて、妻が洗い物をしている時に、主人公のデイヴィッドは無言でその記事を自分の息子に見せる。息子は「これがお父さん?」と口には出さず信じられなさそうにデイヴィッドを見て、デイヴィッドは内緒だと言うように人差し指を口にあてる。
なんかこの構図知ってる! 自分が自警団的な世直しをしていることは親しい人にも明かせないのだ。

そして、デイヴィッドを見つけ出して、ヒーローとしての使命を与えたのが、もう一人の主人公とも言える(のではないかと思っていた)イライジャ。些細なことで骨折してしまう骨形成保全症という病を患っているため、ミスター・グラスというあだ名をつけられている。

映画内でも階段から落ちておそらく全身を骨折して以降は車椅子である。アメコミが好きで、ヒーローに人一倍憧れを抱いているが、自分は車椅子なので悪者をやっつけることができない。でも、デイヴィッドを見つけたことで、彼が代わりに動くのだ(と思っていた)。
イライジャはブルース・ウェインに対するアルフレッド兼ルーシャス・フォックスのような役割で、きっとポンチョではなくヒーローらしいスーツを作ったり、サポートにまわったりするのだろうと思っていた。

しかし、ラストで、列車の事故などはデイヴィッドのような人間を発見するためにイライジャが仕組んだことだと発覚する。
ああ、そうだよ、ミスター・グラスというあだ名まで付いていた。オズワルド・コブルポットがペンギンであるように、セリーナ・カイルがキャットウーマンであるように、ハービー・デントがトゥーフェイスであるように、エドワード・ニグマがリドラーであるように、ヴィランにはあだ名がついている。

ただ、イライジャの気持ちもわからないでもないのだ。小さい頃からアメコミを読み、本当だったら自分がヒーローになりたかったろう。しかし、病気のせいでそれは無理な話だった。そこでまったく逆の存在、強靭な肉体の持ち主を探したのだろう。それくらい追い詰められていたし、ヒーローへの憧れが強く、子供の心を持ったまま大人になってしまった。
デイヴィッドの息子だってヒーローの存在を信じていて、デイヴィッドを騙して重いバーベルを持ち上げさせたり、怪我をしないことの証明をしたいあまり、デイヴィッドに銃を向けたりしていた。デイヴィッドが認めなかったら、息子だってどんどん過激な方法をとったかもしれない。

結局、デイヴィッドがイライジャを通報し、彼が精神病院に入れられて話が終わる。いわゆる、ヒーロー誕生までを描いた映画だったけれど、相棒(ここではイライジャ)がいなくなってしまうヒーローものは初めて観た。その辺はいわゆるマーベルやDCなどの王道とは違う。

『アンブレイカブル』はヒーローの誕生までのプロローグで、“ビギニング”のような存在だった。しかし、一人、放り出されてしまったデイヴィッドはどうするのだろう。でも、一度目覚めてしまったら、正義感は強そうだし、能力を封印することはしないだろう。何より、息子も悲しむ。
本格的にデイヴィッドが活躍する続編が観たい。『アンブレイカブル2』は無いの?と思ったら、それが2019年公開のものだった。しかもタイトルが『GLASS』。ということは、ミスター・グラスも病院から出てくる? しかし、そうすると、デイヴィッドは、ミスター・グラスもビーストも相手にしなくてはならなくなる。

『スプリット』で、デニスが駅のホームに花を手向けるシーンがあった。何か、ビーストを誕生させる儀式の一部なのかと思っていたけれど、これは『アンブレイカブル』の最初の列車事故に関わってくるのではないかとも言われているらしい。列車の事故を起こしたのは、ミスター・グラスである。そうすると、ビーストを誕生させたのもミスター・グラスということになるかもしれない。ならないかもしれない。

また、『アンブレイカブル』で、デイヴィッドはスタジアムでの仕事中、親子にぶつかり「ぶたないで、ママ!」という子供の声を聞く(吹き替えでは多数の声に混じってしまって聞こえないが日本語字幕だと出る)(シャマランが演じるドラッグの売人と思われる男が出てくる少し前のシーン)。デイヴィッドはまだヒーローとしての自覚を持っていないので振り返るだけで救ってはいない。もしかしたら自覚云々ではなく、本当によく聞こえなかったのかもしれない。この子供がケヴィンだという話もあるようだ。
本当にそうならば、そもそも、あの時に、デイヴィッドが子供(ケヴィン)を救っていたら、他の人格もビーストも生まれていなかったということになる。

二つの作品の世界が繋がっているということをふまえると、『スプリット』でビーストが出てきたときの、うわあ、そうゆうのが本当に出てきちゃうんだ…という気持ちも無くなる。
『スプリット』単体で観ていると、こんなつもりじゃなかったと思うけれど、ヒーローもの(『アンブレイカブル』)の一端ならば、ヴィランとしてこのような怪物が突然変異的に出てきてもあまり唐突さがない。

2019年公開というと、『アンブレイカブル』からほぼ20年である。劇中の時間は同じように流れているのだろうか。デイヴィッドはあの後、一人で悪者を倒し続けていたのだろうか。それとも隠居生活をしていたのだろうか。
どちらにしても、能力が何かしらの影響で消えていない限り、殺人など事件の現場の映像は頭に入ってきてしまうし、相当つらかったと思う。

単体でもいいから続編を観たいと思ったので、しかも『スプリット』とのクロスオーバーというのは本当に楽しみだ。
クロスオーバーが発表されたときの盛り上がりがやっとわかった。





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