『メッセージ』



ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。アカデミー賞作品賞などノミネート。
主演はエイミー・アダムス。
以下、ネタバレです。








なんだかわからない飛来物が地球にやってきて大騒ぎになる。言語学者ルイーズの元に軍の関係者が訪れて、中にいる“宇宙人”の声を聞かせて解読しろと言う。これがかなり序盤なので、もう中に何者かが存在して、コミュニケーションはとれないまでも接触をしているのに驚いた。

そして、ルイーズは軍のヘリで前線へ連れて行かれる。つるっとしていて、静謐なフォルム。攻撃的ではない。しかし、とても大きいし、静かなだけに不気味ではある。まるで観客もヘリに乗っているかのような映像に口をあんぐりと開けてしまった。旋回するヘリの窓から映されるその異様で巨大な物体と、眼下にかまえられた軍の前線基地からただ事じゃなさが伝わって来る。

基地の中で、“宇宙人”と接触をはかるためにワクチンを接種される。カメラはルイーズと物理学者のイアンのすぐ後ろにつくので、私たちも基地の中に入ったような感覚になって緊迫感が伝わって来る。

そして、“宇宙船”の中へ潜入。近くに寄ると、少しだけ浮いていることがわかる。中に入ると無重力のようになっていたり、不思議なことばかりである。ここも序盤から宇宙船の内部に潜入することになって驚いた。
毒ガス検知のためのカナリアなのか、鳥カゴもあって、そのなかで小鳥がピッピッと鳴き声を上げ続けているのも一層不穏な雰囲気。

そして、半透明な仕切りの向こうにタコ型の宇宙人がぼんやりと現れる。このタイプの宇宙人かと思う。だけど、想像していたよりも大きい。大きくて得体の知れないものがぬっと浮かぶ様も迫力があった。もうこのあたりまで、ずっと口を開けたまま夢中になって観てしまった。

白を基調にした雰囲気といい、宇宙船の馬鹿でかさや不穏な雰囲気は、同じドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『複製された男』を思い出した。監督のSFはこの雰囲気になるのかもしれないと考えると、10月公開の『ブレードランナー 2049』も楽しみである。

また、基地の中と宇宙船の中という閉鎖された空間での描写が中心で、外の人間たちの騒動(暴動やカルト教団の集団自殺など…)は、ニュースやインターネット動画でのみ知らされるという作りも面白かった。視点が統一されているので緊迫感が続く。

ただ、この先、少しずつ会話をかわしながら、彼らが来た目的を聞こうとするんですが、その目的は予告編ですでに見てしまっていたので、「武器を与えに来たんだよ…」と思いながら観てしまった。武器が何なのか、それを使って何をするかなど、物語の核心部分ではなかったけれど、予告編に入れるのは勘弁してほしかった。

そして、原作を読んでいないせいもあるのかもしれないが、途中から話がよくわからなくなってしまった。
最初の過去の回想と思われた部分が実は未来で…というのはわかる。時系列については逆にわかりやすいくらいだった。

わからなかったのは、ヘプタポッドが何の目的で来たかである。何千年後だか、遠い未来にヘプタポッドたちを人間が救うから、ここで人間を滅ぼすわけにはいかないから、ルイーズに未来がわかる力を与え、この場を救わせたが、ヘプタポッドが来る前も世界情勢は悪かったのだろうか。彼らが来たせいで分断しそうになっていたわけではないのか。
それとも、この先、世界情勢がまずくなったときに、宇宙人襲来の危機を乗り切ったのだから…という思い出の共有で団結するための演出だろうか。

未来のことがわかるのはルイーズだけだったが、ヘプタポッドに危機が訪れるときには、とてもルイーズが生きているとは思えない。
ルイーズが授かった力というのは、超能力的なものではなく、ヘプタポッドの文字を理解することで得た知識のようなものなのかもしれない。
ルイーズは講演会を開いていたし、本を出していたから、それを読んで理解をすれば、誰でも未来を見通せるのだろうか。

でもそうすると、夫であるイアンに、未来がわかると言ったら離婚をすることになった理由がわからない。ルイーズが未来がわかるということを、イアンは信じていないのだろうか。娘が病気で死ぬなんて縁起でもないことを言うなという感情論だろうか。
宇宙人と邂逅をするなどという体験をしたのはイアンも同じである。それでも、信じられないことなどあるのだろうか。どんな不思議なことでも、そんなこともあるかもしれないという気持ちになりそうだけれど。

原作は短編らしいので、もしかしたら余計にわからなくなってしまうかもしれないけれど、このままではもやもやしたものが残ってしまうので読んでみたい。



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