『ナイト・マネジャー』(シーズン1)



原題もThe Night Manager。ナイト・マネジャーという役職を知らなかったのですが、ホテルの夜の時間帯の最高責任者のことらしい。
イギリスBBCとアメリカAMCの共同制作。2016年放送。日本ではAmazonプライムビデオで配信中。Dlifeで4月に放映されていて、8/13より再放送があるとのこと。もともと全6話ですが、日本では40分前後の全8話に編集されている。

プライムタイム・エミー賞の監督賞と作曲賞を受賞。監督は2010年のアカデミー賞外国語映画賞『未来を生きる君たちへ』のデンマーク出身のスサンネ・ビア。
ゴールデングローブ賞のリミテッドテレビドラマ部門でトム・ヒドルストンが主演男優賞、オリヴィア・コールマンが助演女優賞、ヒュー・ローリーが助演男優賞を受賞。
他にもBAFTAや様々な賞を受賞したりノミネートされていたりしています。

原作はジョン・ル・カレの1993年の小説。原作は未読なので、どの程度忠実なのかわかりませんが、シーズン2も放映されるらしい。

トム・ヒドルストンがホテルのナイト・マネジャー役ということで、姿勢が良く、礼儀正しく品行方正な様子が彼にとても合っていた。ホテルのユニフォーム姿も素敵でした。
ただ、彼はもちろん見た目が恰好良いのですが、たぶん役の上でも恰好良いらしく、地元のほぼマフィアのような有力者の愛人と寝てしまう。それで、愛人はジョナサン(トム・ヒドルストン)に武器取引のデータを流し、それがきっかけで愛人は殺され…という感じにジョナサンは事件に巻き込まれていく。

私はジョナサンが何か影のありそうな男だな、ジョン・ル・カレだしスパイなのかなと思っていたけれど、最初の時点では本当にただのホテルマンだった。ただ、父親がスパイだったという話は出てきた。そして、イギリスの国際執行機関員アンジェラ(オリヴィア・コールマン)に武器取引のデータを流したことで、彼女から、武器取引の中心人物、リチャード・ローパー(ヒュー・ローリー)の組織の奥に入れと言われる。ここで初めてスパイになる。
オリヴィア・コールマンは妊婦役なんですが、妊婦と言ってももういつ産まれてもおかしくないくらいお腹が大きい。そのお腹のまま、銃を構えたりするのでひやひやした。オリヴィア・コールマン、相変わらずうまい。少し『ブロード・チャーチ』での役に似てるかなと思った。

ジョナサンは、2話でも女性と寝て経歴詐称に役立てたり、ローパーの妻にも惚れられて寝たりするので、やはり容姿の良い役なのだと思う。
ただでさえ容姿の良いトム・ヒドルストンが容姿の良い役を演じているので、容姿の良さが際立って迫力があった。また、人も数人殺すので影もあるし、恋人がいるわけではなく、8話中で三人の女性と寝て、一人は有力者の愛人、一人はまったく好きではない女性、もう一人は人妻と、最初の品行方正具合はどうしたと問い詰めたくなる感じでしたが、そのようなダーティーなトム・ヒドルストンもよかったです。
あれ、最後にローパーの妻が「連絡するわね」だか「連絡して」だかと言っていたけれど、たぶん二度と会わないと思う。結局最後まで本名は明かさなかったし、スパイとして潜入していた以上、事件が片付いたら会わないのがルールだろう。

ローパーの妻役がエリザベス・デビッキ。お金持ちの妻役なので、毎回毎回着ているドレスもゴージャスだし、彼女も憂いを抱えていて、悲しんでいる瞳が綺麗だった。また、ショートヘアがよく似合っていて、顔が一層小さく見えた。実際、とてもスタイルが良い。
トム・ヒドルストンも相当スタイルがいいし、顔が小さいと思っていたけれど、エリザベス・デビッキと並ぶとトムヒの顔が大きく見えるというくらいだった。

エジプトの高級ホテル(実際にはスペインのホテルだったらしい)から始まり、スイスのツェルマットの山奥の高級ホテルからマヨルカ島の高級リゾートへ舞台が移り…と映像もとても見応えがあった。
また、7話で再び、元いたエジプトのホテルへ戻ることになるのにぞくりとした。全ての始まりの場所が終わりの場所になる。働いていた時代の友人に協力してもらうのもなるほどと思ったし、アンジェラもエジプトのホテルに来る。
ジョナサンは身分を偽ってローパーの組織の内部に潜入して以降も、アンジェラとはちょこちょこ接触はしていたけれど、そのどれもがもちろんローパー一味には知られてはいけないものだから、暗号などを使っていてスパイ物特有のハラハラ感も味わえた。けれど、7話で久しぶりにちゃんとアンジェラと会って抱き合うシーンは本当にほっとした。

なんとか事件がちゃんと片付くのかなと思っていたが、最終話が進んでも事態が悪い方へ進行していき、雲行きが怪しくなって来る。まさか、シーズン2に持ち越されるのでは…と思いながら、残り30分になったあたりから、ちょこちょこと残り時間を確認してしまった。
無事にローパーは逮捕されたけれど、ローパーの言う通り、彼は金持ちだし、根回しもきく。すぐに釈放されるのではないか…と思っていたら、武器の取引を失敗した相手にさらわれる。それ以降のことは描かれないけれど、おそらく無事ではないだろう。

一応の一件落着なので、原作はここまでなのかもしれない。だとすると、シーズン2はオリジナルになるのかな。ちなみに本国版の四話にジョン・ル・カレご本人がカメオ出演していたらしい。

出演者が豪華なんですが、私は『ワンダー』に出ていたノア・ジュプ目当てで見ました。
撮影が2015年だったらしいんですが、『ワンダー』よりもだいぶ幼く見えた。しかし、『ワンダー』の撮影も2016年だったらしく、子役は一年で結構成長するのがよくわかった。

ノア・ジュプは8話編集版だと3、4、5話に出演。ローパーの息子ダニー役。父親に怯えている部分はありそうだったけれど、聡明で良い子。父親の部屋に入って足を怪我して海に立たされたというのは、「怪我が治るから」と言っていてたけれど、おしおきとか虐待の類だと思う。

3話出てきた場面から、エリザベス・デビッキに頭を強めに撫でられて照れ臭そうに体が斜めになってしまっていたのが可愛かった。音楽に合わせて、二人で踊るのも可愛い。ローパーの部下にシャンパンを初体験させられて、興味津々で飲んでいる様子も可愛かった。
ダニーは暴漢に誘拐されるが、そこをトマス(ジョナサンの偽名)が救うことで、ローパーの組織に潜入する。もちろん暴漢も仕込みである。
怪我をして寝込むトマスにイカの本を読んであげるダニーも可愛かった。
そして、護衛付きだけれど、トマスと二人で街へ出た時のピンクのシャツもよく似合ってました。トマスに肩車をされて笑顔になっていた。また、アイスを買ってあげるシーンでのピスタチオアイスというチョイスも最高で、青いシャツのトムヒとピンクのシャツを着たノア・ジュプが手を繋いで薄緑色のアイスを舐めるというのはちょっとしたシーンながらもとてもよかった。
「パパの部屋にはミントのお菓子が隠してあるから入っちゃいけないんだって」と言うシーンや、寝る前に絵本を読んであげると言っていたトマスとの「どの本にする?」「『三匹の子豚』」「じゃあ、トマス版で読んであげよう」「やった!」という会話も子供(子供ですが)っぽくて、良かったです。
5話の頭で、学校があるからなのか、リゾート地のマヨルカ島から家に先に帰る。帰り際、ローパーに渡した花の絵がやけに大人びていたのも印象的でした。

今年4月にロンドンで行われた『クワイエット・プレイス』のプレミアの映像を見ると、もうだいぶ背も伸びていて、2015年とはだいぶ違う。声も低くなりかけています。これからの成長も楽しみだし、これまでの出演作ももっと観たい。
できたら、もう五年後くらいに、ローパーの復讐を企てる息子役で再び『ナイト・マネジャー』に出てきてほしい。シーズン4くらいで。




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