『インクレディブル・ファミリー』

原題はIncredibles 2。独特のキャラデザだし、インクレディブルと付いているからわかると思うけれど、2004年公開の『Mr.インクレディブル』の続編。続編とはいえ、キャラが同じというくらいで話はそこまで繋がっていません。この作品から観ても大丈夫。

以下、ネタバレです。





どちらかというと、大人向けかなと思ってしまった。
本作はヒーロー活動と家庭と…という二面が別々に描かれていて、ヒーロー活動側が母親であるイラスティガール、家庭がMr.インクレディブル…というか、ヒーローではない父親のロバートが主人公である。
女性の活躍が描かれるのは最近の作品の傾向であり、この続編が2006年あたりに公開されていたら、決してこのような作品にはならなかったと思う。
自動運転の車が出てくるのも今風かなと思う。

また、敵も女子だし、彼女とイラスティガールは男に対する不満を話して意気投合するシーンもある。世の女性たちがどれだけ抑制されているのかがよくわかる。

また、邦題を『Mr.インクレディブル2』にしなかったのかも納得。
本作ではロバートはほとんどヒーロー活動をしない。家事で疲弊している主夫である。今までやってこなかったツケなのだろうし、きっと皮肉でもあると思う。
でも、イラスティガールの活躍を描くために、彼の出番が極端に減らされているのは残念といえば残念。

イラスティガールの新しいユニフォームはシックなグレーなんですが、彼女が洗脳されて、Mr.インクレディブルが助けに行くとき、赤いユニフォームとグレーのユニフォームが戦っていると、見た目がまさに正義と悪という感じでなるほど、ここで生かされるのか!と思った。けれど、ごく短時間の戦いだった。もっと長くても…と思うけど夫婦だしこれくらいか。

それにしても、夫の力で正気に戻るのかと思ったらジャック・ジャックの力だった。最初と最後には家族全員で戦う場面があるものの、Mr.インクレディブル自体は、あまりヒーローとしての見せ場はなかった。父親としての見せ場はあった。

同じく、子供達も、ジャック・ジャックの覚醒はあったけれど、ヒーロー活動はあまりなかった。続編があるなら、そこで子供のヒーロー活動が見たい。

ヴァイオレットがヒーローマスクを取ったところをうまく行きそうだった男の子に見られてしまうんですが、男の子は記憶を消されちゃってヴァイオレットとのデートの約束も忘れてしまう。ヴァイオレットはもちろん激怒するけど、最後、仕方ないと事実を受け入れた上で、もう一度最初から始めようとするのが良かった。大人になってる。
ヒーロー活動とは違うけれどいいシーンでした。

序盤から一家を支援する金持ち実業家兄妹が出てきて、いかにも怪しいんですが、結局、悪者は妹だけだった。
見た目も『マイティ・ソー バトルロイヤル』のグランドマスターっぽい(というか、ジェフ・ゴールドブラムっぽい)感じ。金が余っていて道楽に使っていそう。
でも、どうやらミスリードを誘うだけのキャラクターだったのがかわいそう。ただの純粋なヒーロー好きだったのに。

また、他にも描き方が雑だなと思ったのは、一家とフロゾン以外の能力者です。
彼らはいわば、X-MENシリーズでいうミュータントだったり、エージェント・オブ・シールドでいうインヒューマンズだったりという、能力を持て余して今まで隠れて暮らしてきた人たちです。彼らがやっと脚光を浴びられると思ったら、悪者の洗脳により、ほぼヴィランのようなことしかしない。
ヴォイドはイラスティガールの補助として少し活躍してたけど、他の人も正義のほうで活躍させてほしかった。様々な能力は悪いことに使おうとは思ってなかったはず。
一方で割を食うキャラクターがいるというのはどうにもかわいそうだと思ってしまった。

もっとヒーロー要素が強くても…と思うけど、家庭とヒーローとを描くのがこのシリーズの特徴なのだろうし、バランスが取れているのかもしれない。それにしても、ちょっと、家族部分とヒーロー部分が乖離していた。

家族側でジャック・ジャックが覚醒したりするけど、それはヒーロー要素というよりは、そのまま成長の意味だろう。イラスティガールというか、生身のヘレンの「初めて能力を使うところ見逃しちゃった」というセリフは、赤ちゃんが初めて立ったところを見逃しちゃったというのと同意義だと思う。

ファミリーで力を合わせて戦うというシーンが最初と最後なんですか、そこでフロゾンがやたらと恰好いい。
ただ、狙ってやっているんだとは思うけど、最初も最後も、止まらない大型の乗り物を必死で止めるというミッションで、だからフロゾンの役割も似てしまう。
止まらない乗り物の疾走感とひやひや感はいいんだけど、違ったタイプのピンチにしたほうが良かった気もします。

エンドロールでヒーローたちのテーマソングが流れてどれも恰好いい。
特にフロゾンが黒人だから、ソウルフルなブラックミュージックになっているのが凝っていた。
ここでも、子供たちの曲は無かったので全員分欲しい。これも、続編でお願いします。

同時上映の短編、『Bao』。饅頭という意味かな。
オリエンタルな音楽が流れてきて、舞台はおそらく中国。
女性が饅頭を作っているが、その一つが赤ちゃんに変わる。ファンタジーかなと思って観ていたんですが、饅頭がどんどん成長していくうちに、許せないことが起こり、彼女はその饅頭を食べてしまう。ヒヤッとしたが、そこから現実に戻って、ああ、そういうことか…と。
内容はありきたりではあると思うけど、描き方がうまい。泣きました。

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