『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』



『ミッション:インポッシブル』六作目。監督は前作と同じくクリストファー・マッカリー。
以下、ネタバレです。









本作は盛り上がり部分にアクションがあるというよりは、全体的に様々なアクションの連続で息をつく暇がない。だから、三幕というよりは全編クライマックスという印象だった。

前作はイーサン・ハントが飛行機にぶら下がる部分がポスターになっていて、そこが一番のクライマックスだろうと思っていたらアバンで出てきて驚いた。今作はヘリからぶら下がる部分はアバンではないです。
でも、病院で尋問していて実は病院じゃなかった!というシーンは痛快でした。ここで出てくるシンジケートの一員の男性役のKristoffer Jonerというノルウェーの俳優さんが気になりました。『レヴェナント』には出ていたみたいですが、ノルウェーの映画中心のようです。少し、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズに似ている。ケイレブくんの20年後という感じ。

ストーリーは爆発テロを起こされる前にプルトニウムを奪い返せというシンプルなもの。
わかりやすく依頼が来て、“なお、このメッセージは何秒後に消滅する”という、ミッション:インポッシブルお決まりのシーンを経てスタート。
ただ、それに際して、犯罪者と交換するために護送車から奪還しろとか、IMFとCIAとMI6の思惑が絡みあう。全員が味方というわけではないのだ。さらに、ベンジーが変装するし、CIA女ボスや監視役のウォーカー(ヘンリー・カヴィル)の胸の内は特に読めない。

序盤、早々にプルトニウムを手にできそうになるけれど、イーサンは、ルーサーを救い、代わりにプルトニウムが奪われてしまう。
一人の仲間を救うために、世界中の人類を危険にさらすという行為を、IMFの新長官は責めなかった。しかし、本作はプルトニウム奪還任務の影で、イーサンの優しさと弱点にのなりうる甘さに焦点が当てられていたと思う。

序盤、スカイダイビングのように飛行機から飛び降りるシーンがあるが、イーサンはそこで気絶したウォーカーを救う。
この時点では仲間だと思っていたから憎まれ口を叩かれていても当然救うんですが、結局、後半、苦しめられることになる。しかもまた空中で。
イーサンも「あの時、助けなければよかった」と言っていたが、イーサンなら絶対に助けてしまうのだ。

また、妻であるジュリアから離れたのも結局優しさ故なんですよね。前作では、とても魅力的なヒロインであるイルサが出てきて、いい感じにもなっていたので、でもどうするのだろうと思っていたら本作でそのあたりの決着もついたのがよかった。

ウォーカーを演じたヘンリー・カヴィルは『コードネームU.N.C.L.E.』の印象が強かったので、男前なインテリの役かと思ったけれど、スーパーマン役のためかだいぶ筋肉が付けられていて、腕っ節の強い筋肉バカといった感じでした。特にイーサンと二人で飛び降りた後でのクラブのトイレでの戦闘シーン、スーツのジャケットを脱いだら、ワイシャツがはちきれんばかりになっていて、そこでの重量のありそうなパンチがすごかった。迫力のある格闘シーンだった。

ピンチがあって、そのピンチを脱するためにアクションシーンがあるんですが、その脱し方やアクションの種類が見たことのないものでどれも見応えがあった。
それが連続して出てくるから、本当に息をつく暇がない。

ベンジーがガイドをしながら、屋根の上やらオフィスやらを疾走しながらの最短距離での追跡やパリの街中での超絶カーチェイスなど、口をあんぐりさせながら見ていた。最初のスカイダイビング部分もなんですが、前作では飛んでいる飛行機にしがみつき、前々作ではドバイの高速ビルによじ登ったトム・クルーズが一体本人でどこまでやったのかなと思ったら、ほとんど自分でやっていた。

スカイダイビングはヘイロージャンプと呼ばれるもので、スカイダイビングと違うのは抵高度まで自由落下をしてからパラシュートを開くらしい。敵に見つからないための降下方法として軍が用いているものらしいけれど、100回以上飛んだとか…。また、屋根から屋根にジャンプするときに足を骨折して、そのまま走ってたとか…。メイキングやインタビュー記事を読むと、トム・クルーズのプロ魂は感じるけれど、無理しないでほしいとも思う。

そして、クライマックスのヘリでの追跡シーンは実際にトムがヘリの免許をとったらしいし、乗っていたのも一人だとか…。低い位置での複雑な運転などもこなしつつ、演技をして、カメラで撮影もしていたという…ちょっと他では考えられない。その後に断崖絶壁にぶらさがっていたときにも足の骨が折れていたというのがもう。
ただ、本当にすごいとは思うけれど、これをトム・クルーズが…と考えてしまうことで、イーサン・ハントには見えなくなってしまうことも何度かあった。
すでにミッション:インポッシブルシリーズはイーサン・ハント=トム・クルーズという印象なのでいいのかなとも思うけれど、本作は特に、ストーリーというよりはトム・クルーズのアクションを見る映画なのかなと思ってしまった。
ただ、イーサン・ハントだしトム・クルーズなのだから絶対に死ぬことはないし、爆発は止められるのだろうというのはわかってはいてもハラハラしてしまった。無事に起動装置が止められたときには心底ほっとした。この、映画本編中ずっと緊張している感じは『ダンケルク』を思い出しました。

私は、ミッション:インポッシブルシリーズだと前々作のゴースト・プロトコルが好きで、それは、チーム戦が描かれていたからなんですね。
本作もクライマックスシーンでイーサンがヘリでウォーカーを追跡し、地上でベンジーとイルサがプルトニウムを探し、ルーサーとジュリアがコードを切るというのはチーム戦でもあるとは思うけれど、ヘリとあまりにも乖離してしまっているというか、もう少し直接的な協力プレイを見たかった。
ただ、本作はイーサン自身の優しさと甘さについての話でもあると思うので、彼一人に特別に焦点が当てられているのも仕方がないのかなとも思う。

また、ブラントが今回は出番がないのが残念だった。ジェレミー・レナーがアベンジャーズで忙しくスケジュールが合わなかったらしいのと、監督からの「冒頭で仲間の犠牲になって死ぬというのはどうか?」との提案を断ったとのこと。
でも、本作では、最初に仲間の犠牲になろうとしたルーサーをイーサンが救ったことでストーリーが動き出すし、その彼の優しさがテーマにもなっていると思うから、仮にブラントが序盤で死んでしまったら、話全体が変わってしまいそう。というか、イーサン、ブラントも救ってあげてほしい…。きっとまだ続くのだろうし、次作に期待しています。

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