『ウォーム・ボディーズ』


ゾンビの男の子が人間の女の子に恋をする、ゾンビ・ミーツ・ガールものだと聞いて興味はあったのですが、監督が『50/50』のジョナサン・レヴィンだと聞いてますます観たくなって、主演のゾンビ役がニコラス・ホルトだと聞いて観るのを決めました。
『50/50』 を観た時に、ジョナサン・レヴィンはジェイソン・ライトマンと作風が似てる?と書きましたが、今回は別に似ていなかった。人物描写は『50/50』のほうが丁寧だったと思う。ただ、変わった題材の見つけ方と曲の使い方のうまさはこの監督らしさなのかもしれない。他のも観てみたい。

以下、ネタバレです。







最初から、ゾンビのモノローグなのがおもしろい。ゾンビがものを考えてるなんて思いもよらなかった。そして、ものを考えているというのがわかると、ゾンビなのに怖くない。人間を食べるシーンも多少出てくるけど、ホラー映画がだめな人でも楽しめると思う。

アクションやバトルシーンも出てきますが、ラブコメにカテゴライズしていいのではないかと思う。
ゾンビゆえの負い目や躊躇、考えてはいるけれど呻くばかりでうまく喋れなさや、動きの緩慢さ。それは、好きな女の子の前でやると、そのまま不器用な男の子や童貞性に置き換えられる。
うまく喋れないから気持ちを代弁するような曲をかける様子は、まるでラブソングを集めた自作カセットテープを好きな女の子にあげる行為のよう。
同じ部屋の床に寝ていいよと言われたときの戸惑いや、着替えを見ちゃいけないと思いつつ目が離せない様子などは、本当に青春ムービーのようでした。
ゾンビだから、記憶をなくしていて、自分の名前もRまでしか思い出せない。だから、ピュアで女の子への接し方もわからないあたりがかわいい。女の子が活発なタイプなのもいい。

ラブコメ面では文句なしだったんですが、バトルシーンはちょっとお粗末かなと思った。ゾンビより更に悪い者としてガイコツというのが出てくるんですが、CGがあまりうまくない。それに、こんな第三勢力が出てきちゃったら、ゾンビと人間は結託するんだろうなというのがなんとなく予想できてしまう。

それでもラブストーリー側のことは予測できない。そもそも、ゾンビ・ミーツ・ガールというのが前代未聞だから、終わり方が見えない。
彼女のことを文字通り食べちゃうのかもしれない。Rが人間に頭を撃たれて死ぬかもしれない。

ストーリーが雑な部分はいくつかあった。
ゾンビはゆっくり歩いているけれど、走って追いかけてくるタイプもいたみたいだった。どちらかに統一されてないの?
関係がうまくいっていなかったとはいえ、彼氏を食べてしまったゾンビをそんなに簡単に好きになれるものなの?
ラスト付近でRは胸を撃たれていたけれど、人間に戻りかけているならそれが致命傷にはならないの? 痛みが嬉しいとか言ってる場合ではないのでは?
ゾンビと人間が共存することになったのはいいけど、ゾンビは人間を食べたくはならないの?
そもそも、ゾンビが生き返るってなんなの?

『50/50』は人物描写が細かく丁寧で、ジェイソン・ライトマンに作風が似ている監督さんなのかと思ったけれど、粗も目立つ今作では、あまり似ている感じはしない。

それでも、そんな話の整合性とか細かい部分なんてどうでも良くなるくらい、ニコラス・ホルトが演じるRはゾンビのくせにとてもキュートで、彼の恋を応援したくなる。ゾンビだけれど、恋に落ちる瞬間が描かれている映画がやっぱり好きです。もちろん、人間に戻ったいつものニコラス・ホルトも恰好いい。そして、いろんなことはもういいかと思えるハッピーエンド。


原作があるとはいえ、今回も題材のチョイスの仕方が独特で面白い。あと、曲の使い方が若い監督らしくて、好みでした。
同じ部屋で寝ていて、Rが夢を見た次の朝、彼女が外に出て行ってしまったときの曲が良かった(Chad Valley『Yamaha』)。
気持ちを代弁するレコードも、レコードゆえに少し古めのボブ・ディランやガンズなどが使われているのもいい。
ゾンビのRに人間らしいメイクをするシーンで、プリティーウーマンのテーマ曲をかけちゃうお遊びもあり。

お遊びといえば、人間の町にこっそりRが来た時に、バルコニーから彼女が顔を出すんですが、ロミオとジュリエットっぽいと思って観ていたら、やっぱりあれはオマージュだったらしい。


ジョン・マルコヴィッチが出ているのを知らなかったので驚いた。あと、パンフレットを読むまで、彼氏役の俳優さんデイヴ・フランコがジェームズ・フランコの弟さんだって知らなかった。『グランド・イリュージョン』にも出るらしいです。

エンドロールにトム・フォードがヴィジュアルなんとかでクレジットされていた。ニコラス・ホルトのことになると口出してくる感じなのかな。と思って調べてたけど、どこにも何も書いてなくてもしかしたら、トム・フォードなんて書いてなかったのかもしれない…。
(追記:ヴィジュアル・エフェクト・プロデューサーとしてクレジットされていたトム・フォードはデザイナーであり『シングルマン』の監督であるあのトム・フォードとは別人のThomas F.Ford IVという方。1996年からヴィジュアルエフェクト関連の仕事をしているベテラン)

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