『いとしきエブリデイ』(二回目)


一度目を観ている途中でジョン・シムが気になったので、こんなに好きな状態で観るということは、完全にジョン・シム目当てです。すみません。
以下、ネタバレです。




父親不在の家族が…という文句だと父親役であるジョン・シムはほとんど出ないような感じがするし、実際、出番が少なかったような印象でしたが、彼に注目して観てみると、案外出番があった。一度目は子供たちの演技の印象が強すぎて、ジョン・シムはかすんでいたんだと思う。

何度か刑務所に面会に行くシーンが出てきますが、最初の面会のシーンのときには、子供たちもお父さんに会える!とはやる気持ちを抑えきれないようでしたが、私も早くジョン・シムが観たくてドキドキしてました。

子供たちを実際に五年間かけて追っていて、一番上のお姉さんの身長の伸び具合とか、他の子も顔が大人びていたり、いっちょまえに他の生徒と喧嘩をするようになっていたりと、成長がよくわかるんですが、大人側は五年の違いはあまりわからない。
でも、五年前のジョン・シム(映画の中での初登場時)は少し顔がむくんでいるようでした。映画の中での出所後にあたる、一番最近のジョン・シムは見慣れたジョン・シムだった。多分、『Mad Dogs』を観ていたせい。

妻だけで面会に来るシーンで、イアン(ジョン・シム)が性欲を露にするんですが、その時の視線が独特でした。嫌がる奥さんに性的な言葉を言わせようとするんですが、ニヤニヤしているわけではない。真剣で、怖いくらいで、切羽詰まっていて、それでいて切なさが混じったようなあの視線。この時に、髭が伸びて髪もぼさぼさになっているのがまた効果的。

あと、ベッドシーンがあるんですが、裸になったときに肩のスペードのタトゥーを確認。『Mad Dogs』の風呂シーンで見て気になっていたんですが、役作りではなく、本物のタトゥーらしい。

映画内では何度も面会シーンが出てくるけれど、実際にはきっと何ヶ月ぶりかの対面なんですよね。会えないときを埋めるような、ぎゅうっとするハグと、別れるときのキス。愛が溢れていて、優しくて、本当に家族が愛しいのだということがわかる。
そして、別れたあとの、空虚な目と、独房ではなくて二人くらいの部屋だけれど、狭い部屋でベッドに横になったときの生気を失った顔。家族と接しているときの表情が一切消える。少し前には、家族の近況を聞いて一喜一憂していたのに、部屋に戻るとただただ天井をじっと見つめるだけ。何を考えているかもわからない。

これは一回目にも思ったけれど、それならなんで自ら刑期を延ばすようなことをするんだろうね…。彼の弱さなのかもしれないけれど。何をやったかはわからないけど、そもそも、一度捕まってるわけですからね。その時点で、本当に家族を大切にしているとは言い難い。

妻役のシャーリー・ヘンダーソンも、夫に直接不満をぶちまけるシーンもあるけれど、夫の母に、「そんなことだから、イアンがああなった」と思わず文句が出ちゃうシーンもあった。
四人の子供を寝かしつけて、すごく疲れているはずなのに、ベッドに横になってもすぐに眠れない。目を開けてため息をついている様を見ると、心底まいっているのがわかる。
イアンがいないときに、他の男の人に縋りたい気持ちもわかる。子供たちも懐いていたけれど、離婚ということにはならずに、ちゃんと告白をするあたりで、最初からやり直そうという決意が感じられる。隠したままではやり直せない。
イアンは浮気のことをとても怒っていて、そのあとの朝食中にも何か考えているような表情の描写があった。しかし、深い説明はないまま、子供たちの歌の発表会からラストの海のシーンへと進む。でも、あのラストを観たら、きっと許して、彼も自分の行いを反省して、最初からやり直すのだろうなと思う。
あのマイケル・ナイマンの叙情的な音楽と冬の海にいる六人の家族を遠くから映す映像だけで、丸くおさまった雰囲気が感じ取れる。説明や、事件などは変に起こらなくてもいいのだ。

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