『セブン・サイコパス』


スランプに陥った脚本家がネタづくりのためにサイコパスを募る広告を出したら変な奴らが集まってきちゃってさあ大変?みたいな宣伝のされかただったけれど、実際の内容は少し違っていた。ポスターに映っていた7人がそれぞれ集まってきた人たちなのかと思っていたけど、それも違っていました。

以下、ネタバレです。






広告を見て来たのはトム・ウェイツだけだったし、彼はどちらかというとメインというより、ゲスト出演っぽい感じでした。
あと、セブン・サイコパスとはいえ、ポスターに映っている七人はサイコパスではなく、登場人物が並べてあるだけ。この内の女性二人はまったく活躍しないし、セリフも少なく、出てきても殺されていた。
でもこれって、主人公のマーティ(コリン・ファレル)の書く脚本通りなんですよね。実際にそんなセリフが出てくる。「女には過酷な世界だから」と言っていた。

序盤では、マーティの書く脚本の内容が映像化されているシーンもあって、最後まで創作なのか本当に起こっていることなのかわからなかった。ラストも、「夢オチでもいいんじゃないか?」という助言があったのでまさか夢オチ?とも思ったけれど、違った。
この、書いた文章が映像化されていて、現実だか妄想だかわからないという部分は『危険なプロット』と構成が似ていた。

ハンス(クリストファー・ウォーケン)がテレコに吹き込んだ、ベトナム人のサイコパスの結末についてのアドバイスは、脚本についてのアドバイスであり、実際にマーティが置かれた状況に対するアドバイスでもあったのだと思う。それと、自分のしたことに対する後悔なのかもしれない。
きっと、自分も復讐で人を死に追いやったことを後悔していたのだ。奥さんを殺されていて、とても憎いはずなのに、復讐は繰り返してはいけないのだということを語る強さ。正しい心を取り戻したあとに、拳銃を出そうとしたのと勘違いされて撃たれたハンスの最期は、少し『グラン・トリノ』を思い出した。

脚本が進まない友人のためにちょっと頑張りすぎるくらい頑張るビリーを演じるサム・ロックウェルが良かった。全体的にはっちゃけた役で、出演者の誰よりもまともな部分が無い役だった。友人の脚本を派手にするために、わざわざ危険な戦いを挑んでいたけれど、結局は自分が楽しければいいという感じになっていたんだろうと思う。
途中で出てくる動物の顔の付いた帽子も可愛い。なんであんな帽子かぶってたのかは不明。子犬に照明弾の銃をつきつけている姿もピンチなはずなのに可笑しい。その銃が蛍光カラーなのもポップな印象になっていた。
ラストのウディ・ハレルソンとの戦いのあたりは彼の独壇場だった。
2丁拳銃が好きなんですけど、今作では両手に拳銃を持って、おまけに口に一つくわえているシーンがあって素晴らしかった。見せ方の恰好良さが追求されていた。主人公はこちらではないかと思えてくる。

一応主人公はマーティだけど、ビリーの前では地味すぎて霞む。コリン・ファレルのハの字困り眉は、巻き込まれ系の役に似合っていたと思う。

シーズーを抱えているおっさんとうさぎを抱えているおっさんが出てくるのはどうなんだろう。可愛かったけど、一本の映画の中に小動物を抱いてるおっさんが二人出てくるのって設定がかぶりすぎなんだけれど、いちいち捻ってきているので、これも狙ってるのかもしれない。

小粋なクライムムービーなんですが、クエンティン・タランティーノの影響が感じられた。結構、威勢良く血は出るし、頭もふっ飛ぶ。
特に最初のシークエンス、マフィアが二人でぺちゃくちゃ蘊蓄っぽいことを喋っていて、後ろから来た殺し屋にあっさり撃たれるというあたりはニヤリとさせられた。

この監督の前作も少し変わったクライムムービーらしい。殺し屋が指令を待ってだらだらするという2008年の『ヒットマンズ・レクイエム』、DVDスルーだったらしいですが観てみたい。

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