『ゼロ・グラビティ』


びっくりする映画体験だった。観終わった後、エンドロール中も脱力していたし、3Dメガネをかけたまま席を立とうとしてしまった。
映画館を出てからも、なんとなくふわふわしていたし、
『アバター』は公開時ではなく少し経ってから観たんですが(青い人が恐かった)、その時も前情報を入れずに観たらこんな感じになったのだろうか。
そんなことは絶対にないのはわかっているのに、宇宙に俳優さんたちを放って、クルーが宇宙でカメラを構えて撮影しているようにしか思えない。そして、どうやったらこんな映像が作り出せるのかわからない。
できる限り大きなスクリーンで、そして絶対に3Dで観たほうがいいです。91分とトータルタイムは短いので、3Dが苦手な人も我慢できる時間だと思うし、3Dを想定して画面が作られている。ちゃんと飛び出しもするし、奥行きも素晴らしい。

以下、ネタバレです。






音のボリュームが上がっていきタイトルが出ると、一気に静寂に包まれる。最初の画面からしてただごとではなかった。地球が見える。遠くから宇宙飛行士がゆっくりと飛んでくる。このシーンは長回し風に作ってある。しかも3Dだ。向こうからゆっくりふわふわとこちらに本当に飛んでくるのだ。この辺りで、既に映像に圧倒されて少し涙ぐんでいた。
ちなみにこの辺りはヒューストンと船外活動中のクルーが通信をしているのですが、字幕を読むのがいやになるくらいスクリーン全体から目を離したくなかった。吹替のほうがじっくり観られそう。専門用語が多かったのでちゃんと読んでいたのですが、実はあまりストーリーには関わってこない。ロシアがやらかしたということだけ

塵が大量に飛んでくるシーンも本当に塵はこちらに飛んできたし、時々、サンドラ・ブロック演じるライアンの視点になるから、リアリティがあって本当に怖かった。映画を観て、あまりのリアリティを感じて涙ぐんだのは、『インポッシブル』の津波のシーン以来です。あれも怖かった。

一人飛ばされたライアンはジョージ・クルーニー演じるマットに救出されるのですが、この状況に合うこと合わないことをべらべら話し続ける。さっき一人で宇宙空間に投げ出された状況とは比べ物にならないほどの安心感。
ライアン視点のカメラが多いせいもあるけれど、マットが本当に頼りになる男に見えて、マットだけでなく演じるジョージ・クルーニーのことも好きになってしまった。ライアンはどうだかわからないけど、私が。
結局最後までライアンがどうだったのか、そのような描写は無いのでわからない。でもその辺りの恋愛感情を排除してあるのも良かったと思う。極限状態、サンドラ・ブロック、恋愛というと…。

ライアン視点のために、姿勢が安定せずにぐるぐるまわってしまうシーンなどは、まるでアトラクションのようだった。このアトラクションを最大限に楽しむには、やはり3Dのほうがよろしいかと思います。

地球の一般人と交信しているシーンでは、最初、地球の人ではなくてどこかの宇宙人だというオチなのかと思ってしまった。
普通の人間だとわかったあとでは、この人がNASAに連絡して、NASAから助けが行く展開ならいいのに、と思た。でもこれ、自分がライアンの立場だったら、というのを無意識のうちに考えていたみたい。宇宙人でもいいから助けてくれ、どうにかしてNASAと連絡をとって助けにきてほしい。そんなことを考えてしまうくらい、ライアンと一緒に追いつめられた。ライアン視点のカメラが臨場感ありすぎるせいでしょう。

ライアン視点カメラ、長回しカメラの他にも、ライアンが無重力下で流した涙が球状になり、その球がこちらに向かって飛んできて、急に焦点が合うと、そこに上下逆のライアンが映っているというカメラワークもお洒落だった。


地球での様子、例えばヒューストンが緊急事態に陥ってる様や、犬の鳴き声を真似していたおじさんが映ったりしたら台無しだったと思う。ただのパニック映画になってしまっただろう。それに、長まわし風の映像が多用されていることからも想像できるけれど、実際に宇宙にいる感じが薄れてしまう。地上=現実に戻されるし、緊張感を途切れさせたくもなかったのだと思う。
その結果、登場人物は二人。ほとんどはサンドラ・ブロックの一人芝居、そして91分という上映時間になったのだろう。

様々な要素が排除されているけれど、ストーリーがないわけではない。非常にシンプルではあるけれど、生きていく強さはしっかりと描かれている。ライアンは娘を亡くしている。途中、あきらめて、もうすぐ娘に会える…という思考に陥っていたが、マットの幻に勇気づけられ、娘に伝言を頼むわね、という考えに変わっていた。
また、地球に帰還したときにも、重力におしつぶされそうになりながらも、両足で力強く立ち上がる。

この帰還シーンですが、画的に『パシフィック・リム』のラストを思い出させた。『パシフィク・リム』は海の底から、『ゼロ・グラビティ』は空の上からという違いはあるものの、脱出ポットのハッチが飛んでいく様子、映画中唯一明るく青空が見える、中から出てくる女性は特殊な服装をしているなど似通っていて、ヘリコプター部隊が飛んでくるのではないかと思ってしまった。お互いがエンドロールのスペシャルサンクス欄に名前を載せ合うくらいだし、意識してのことだと思う。

ちょっと説明を読んでも、文章だけではいまいちよくわからなかったけれど、撮影用の専用のプログラムを組むのに四年かかっているとか、あの無重力状態はまったくそうは見えないけれどワイヤーアクションであるとか、CGと役者さんたちの演技、照明などがものすごく細かく決められていてそれを合致させているとか…、メイキングを映像で観たい。

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