ショートショート フィルムフェスティバル 2014 インターナショナルプログラム


この前観たのと同じくインターナショナルプログラムですが、違うラインナップで。今回はフランス、スペイン、アメリカ、スイス、トルコ、イギリスの作品です。
今 回はセリフがなかったり少なかったり、映像も奇妙で不思議なものが多かったので、わかりにくい作品が多かった。でも、これこそがショートフィルムの醍醐味 ともいえるかもしれない。今回、三日間で複数のショートフィルムを観ましたが、観る前までの印象は今日観た作品に近いかもしれない。

以下、全作品について、ネタバレなど含みます。





『MILK/ミルク』
子供が食卓でシリアルを食べようとしているけれどミルクがなくなってしまい、冷蔵庫から出したいけれど、冷蔵庫の前には馬が鎮座していて…という話。もう家 の中に馬がでーんといる、という画がなんとも言えない奇妙な感じ。家族も困っているけれど、パニックには陥らず、わりと冷静に受け止めている感じだった。

二階の部屋におじいさんがいて、不吉な感じのする歌を歌っているのですが、家の中の厄介ごと=馬=おじいさんという皮肉なのかなとも思ったんですが、はっきりせず。

監督さんの質疑応答があったんですが、CGの馬を使おうとしたけれど、うまくいかなかったので、本物の馬を使ったとのこと。冷蔵庫の前でも子供に押されても動かないし、撃たれたあとも寝たまま動かないので、何か特別な訓練をされた馬なのかもしれない。
また、次回作は長編のロマコメらしいです。


『Canis/野良犬』
犬の吠える声はたくさん入っているのですが、人間のセリフはなかった。人形を使ったストップモーションアニメ。犬はフェルトかな。家の飼い犬は可愛いですが、野良犬たちは怖かった。

ま ず世界観からよくわからなかったんですが、少年と犬とおじいさんで住んでいて、あまり食料がないようだった。外の野良犬たちも飢えているようだったので、 罠を仕掛けていたけれど、不注意でおじいさんが野良犬たちに喰われてしまう。このシーンが怖かった。そして、その中の一匹が犬ではなく人間というのも、一 層怖い。

飼い犬を泣く泣く殺すはめになったりと怖いシーンが続いて、犬と一緒にいた人間が少年の子供を産み、少年が赤ちゃんを抱き上げて終わる。
少年も最後は犬の皮をかぶっていたし、これからは野良犬と一緒に生きるのかもしれない。

ラストに力強さを感じたものの、やはり各シーンでの怖さが強烈だった。ダークファンタジーというか。ファンタジーでもないのか…。モノクロなのもまた、怖さを際立たせている。


『Portraiture/友の遺した写真』
亡くなった友人の部屋の部屋へ入り、大量のフィルムを現像すると、そこに写っていたのはセルフポートレイトだった。
病気なのか、悩みがあったのかはわからないが、写真の中の友人は少しずつ痩せ、表情からも苦悩が読み取れるようになってくる。
もっと、ちゃんと向き合っていれば、何か友人の役に立てることがあったかもしれない。しかし、もう遅い。後悔と切なさに溢れた作品だった。

わずか10分ながら、途中、過去の映像として、その友人との会話が何度か挿入されたり、作りが凝っていた。また、友人の部屋は棚にカメラがたくさん置いてあったりと、おしゃれで美術面でも見応えがある。
しっとりした作風も好きでした。


『Collectors/コレクターズ』
昆虫採集の話かと思ったら、なんでもかんでも採集していた。しかも、窓から手だけひょいと出していたので、家にいながらにして、ということはインターネット なのかもしれない。ひょいひょいなんでも取っていたら、結局何もなくなってしまい、もうその集めた家ごと集めたりと、欲望に際限がなかった。
たぶん、現代社会の皮肉なのだと思うけれど、この作品もセリフ無しのアニメーション。

この作品も監督さんの質疑応答があったのですが、アイディアを出すところから始めると、完成までに1年半かかったとのこと。アニメーション作品のほうが作るのが大変らしい。
監督自身には特に収集癖はないけれど、強いて言うなら、お金かな?とのこと。
スタジオに四角い窓が付いていていてそこから手がにゅっと出てきてびっくりしたことが今作の始まりだった、とのこと。


『HUNGER/最後の晩餐』
砂漠の真ん中に食卓と簡易キッチンをかまえられている。四人家族が囲むテーブルで、食事の前のお祈りよろしく、ロシアンルーレットが始まる。結局、子供が倒れ、鍋の蓋をあけると、肉が三つだけ入っている。

ああ、なるほど、HUNGER(飢え)…、と観終わってタイトルに納得してしまった。わずか2分の作品ですが、テーマが簡潔に、濃縮された形で表現されていて、映像の作り方がうまいと思った。トルコの作品です。


『THE PHONE CALL/一本の電話』
悩み相談の電話がかかってきて、その相手との会話劇。とはいえ、実際には電話はしていないと思うので、ほぼ一人芝居です。画面も、ほとんど電話をしている顔を正面からとらえている。

この相談員を演じているのがサリー・ホーキンスでびっくりした。やっぱりすごくうまい。最初はあまり親身になっていなかったものの、少しずつ引き込まれ、なんとか命を救おうと必死になっていく。ほぼ、表情や口調の変化のみですが、観ていて飽きない。
特に、ジャズをやっていた話が泣ける。これから死のうという人に元気づけられて、彼女はどうしても救いたいと思う。

電話の向こうの人を演じていたのがジム・ブロードベント。『ブリジット・ジョーンズの日記』のお父さんや『クラウド アトラス』の逃げ出すおじいさん役の人で、こちらも豪華。しかも、最後に後ろ姿は出てきたかもしれないけれど、ほぼ声のみの出演。

サリー・ホーキンスの同僚役のEdward Hoggという人が恰好良かった。『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』に出てたいたいだけど、憶えてません…。

最後、セリフや説明はないんですが、たぶん、電話ですすめられたジャズの店に憧れの同僚を誘って行くシーンが良かった。結局、命は救えなかった、というところで終わりにしなかったのがうまいと思う。後味がいい。


『Woodrow Wilson/ウッドロウ・ウィルソン』
特別上映ということで、この作品のみ2005年のもの。デイン・デハーンが出ています。ノースカロライナ・スクール・オブ・ジ・アーツという表示が最初に出たんですが、学生さんの作品だったらしい。

大人しくて変わり者の子がなぜか上級生を差し置いて人気者になってしまったので、こらしめるために偽のドラッグを作ったら、プラシーボ効果でみんながそのドラッグにハマって、その子は更に調子に乗るわ、学校全体が堕落するわ、事が大きくなっていく…というコメディ。

最初は変な色の太い縞縞のラガーシャツだかポロシャツにでっかいメガネですごくダサい恰好だったデハーンくん。段ボールで作った人形に話かけたりと、変わり者でしたが、次第に調子に乗っていく。
グラデーションの入ったサングラスにヒップホップ系の服装のいかにも遊び人の格好になり、服装だけでなく、女の子たちもたぶらかす。主人公の憧れの女の子にも手を出したりやりたい放題。

最後、病院から脱走して、なんとか家まで帰ってきた時の格好も、入院してるときに着る背中が開いた服に、どこ通って帰ってきたのかは知りませんが麦わら帽みたいなのをかぶってボロボロのジャングル帰りみたいになっていた。

16分半の中で服装がコロコロ変わる。服装だけでなく、性格も変わる。
最初の、なんにも知らないウブな感じもニコニコしていて可愛い。車の後部座席で居心地悪そうにしている様子は、この頃から少し影があるのを感じた。
でも、図に乗ってきて、服装や言動が次第に派手になっていく様子も憎たらしくてすごく可愛い。
ドラッグの話を出されて知ったかぶりで話を合わせるところも可愛かったし、偽のドラッグを渡されて、耳でやるとキクぜ?という言葉を信じて耳に羽根みたいなので塗り込んで、「本当だ!タマがゾワゾワしてきた!」とか言っちゃう姿も可愛かった。
もう、恩とかまったく感じてなくて、踏み台にするだけするという極悪人。でもちゃっかりしていて憎めない。たぶん、登場人物たちは憎んでるけど。
そうして最後、お母さーん!と命からがら(に見える)家に帰ってきた時の様子も反省してるんだかしてないんだかわからないけど可愛い。
もう、全体的に可愛かったです。
勿論、自分がデハーンくん目当てで観ているせいもあるとは思いますが、それでも、主人公より確実に目立っていたし、キャラクターとしても一番良かった。
これ、ソフト化はされてないのかな…。手元に置いておきたい。

ちなみに、劇中では14歳の役だった。たぶん、実際のデハーンくんは2005年で18歳くらいかな。見た目は、いまとそんなに変わらなかった。

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