『ターゲット』


イギリスでは2009年公開。日本では劇場公開はされずに2011年にDVDスルー。1993年の『めぐり逢ったが運のつき』というフランス映画のリメイクらしい。だから、劇中で主人公がフランス語を勉強してたのかな。

主演のビル・ナイは『パイレーツ・ロック』よりもだいぶ若く見えたけれど、公開は『パイレーツ・ロック』のほうが先。撮影はどうかわからないけれど、55歳の役だった。
家族代々の殺し屋で、未婚。でも、結婚に興味はあり。そんな彼が、ターゲットである女性に恋しちゃう。
ローズはマーケットをすいすい歩きながら、通りすがりに女性のスカーフを拝借したり、カフェの人のテーブルのジュースを飲んだりとやりたい放題。だけど、やり方がディズニー映画のように軽快で憎めない。ビクターは彼女を殺す依頼を受けていたため、近くで彼女をじっと観察している。その内、恋に落ちてしまう。この時の、ビル・ナイの「困った奴だなあ」みたいなゆるんだ顔が本当に可愛い。恋に落ちる瞬間が描かれている。

ビクターは冷静沈着な殺し屋だったはずなのに、彼女と、偶然居合わせたトニーと三人で逃亡するうちに、人間らしさを取り戻していく。慌てたり、怒ったり、上の空になったり、どのシーンもキュートなんですが、誕生日パーティーのシーンが特にはっちゃけていて最高。踊ったり笑ったり酔っぱらったり、本当に楽しそう。

ビクターはローズに恋をしていても、二人じゃなくてトニーも一緒の三人なのがいい。別に三角関係ではないです。トニーとビクターがくっつきそうな謎シーンはありましたが。
ローズがわりと厄介な性格というか、自由奔放すぎて、たぶんビクター一人では手に余りそう。あと、ビクターも頑固だし、ローズが早とちりの勘違いをして、衝突ばかりしそう。トニーはちょうどいい緩衝材の役割を担っていた。

トニーはトニーで、家族がいないようだったので、ビクターとローズを疑似家族的にとらえていたように思う。
ラストでビクターとローズに子供が生まれていましたが、トニーも一緒に住んでいるようだった。

別の殺し屋から命を狙われているのでスリルのあるシーンもありつつも、三人の関係がとてもいいので、大半のほのぼのシーンをにこにこしながら観ていた。

これもリメイクだし、続編がないのはわかってるんですが、本当は三人の活躍がもっと観たい。

セリフの言葉のニュアンスで事態が違う方向へ進んでいったり、うまい具合に間一髪で逃れたりというシーンが舞台っぽかったので、原作は舞台なのかと思っていたが違った。

ローズ役は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も楽しみなエミリー・ブラント。トニー役はハリー・ポッターのロン・ウィーズリーでお馴染みのルパート・グリント。私はハリー・ポッターをまともに観たことがないのでこの俳優さんを知らなかったんですが、良かったので他の作品でも観たいと思ったけれど、出演作がほぼハリー・ポッターだった。知ってる人からしたら、その印象が強すぎてしまうんだろうか。

ビクターの次に雇われた殺し屋、ヘクター・ディクソン役にマーティン・フリーマン。実は彼目当てで観ました。プライドが高そうで腕も確からしいけれど、ビクターよりは雇う金額が安かったらしい。いつものマーティンは慌てたり、巻き込まれたりする役が多いけれど、今回は違っていた。巻き込まれないし、声を荒げることなく、抑えめの演技で、わざとらしい笑顔を絶やさない。黒いタートルネックを着ていて、服装からも感情を殺しているのがわかる。
それでも所詮かませ犬というあたりも良かった。

0 comments:

Post a Comment