『コッホ先生と僕らの革命』
Posted by asuka at 5:23 PM
2012年公開。ドイツでは2011年公開。ドイツにサッカーを持ち込んだとさせるコンラート・コッホが主人公。
当時、映画館で予告を何度も見ていたんですが、内容は良くも悪くもその通りのものでした。実際に、現代のドイツにサッカーはあるし、ラストはまず想像できる。ストーリーのあらすじとしても、厳格な学校に送られてきたのはイギリス帰りの自由な気風の先生で、その人が最初は受け入れられないが、凝り固まった考えの生徒を変えていき、更に教職員や周囲の大人たちにも変化をもたらしていく、という、まあ、よくあるといえばよくあるもの。
オックスフォードからサッカーチームが来るところまで予告編に入れなくても良かったのにとは思いました。
ただ、政府の視察団が来た試合が無事にうまくいって、その後のドイツ内でのサッカーの広まりについて文章で説明が出始めて、あれ?もう終わり?となってしまった。
ドイツにおけるサッカーの始まりの話だから、こんな風にしてサッカーが入ってきましたとさ、おしまい、で終わりなのはわかってる。もちろん、続編があるような映画でもないのもわかる。けれど、コッホ先生は始め、生徒たちもそれぞれのキャラクターが良かったから、各キャラクターのエピソードがもっと観たいと思ってしまった。こんなことを言うと元も子もないんですが、もうサッカーの始まりとかどうでもいい。
生徒一人一人を主役にして、金八先生的な連続テレビドラマにしてほしいくらい。
生徒の中で特に目立っていたのは、労働者階級の巻き毛の小さい子と美形の金持ちの息子である級長とボールメーカー社長の息子の太っちょだ。それぞれの外見がまず漫画っぽい。
太っちょのオットー・シュリッカーについては、ボールづくりにも興味を持って工夫をしていたし、最後の試合のシーンでは商才を発揮してたし、たぶん工場を継ぐのだと思う。勉強や運動などはできなくても、そっちの面で活躍するさまがもっと見たかった。キーパーとしての才能もめきめき伸びていたし、サッカーの試合シーンももっとあると良かった。
生徒たちは、学校に通う時はタイまでしたきちっとした服装だけど、サッカーをする時は真っ白な肌着みたいな姿になるのもいい。
巻き毛で小柄なヨスト・ボーンシュテッドは、いじめられていても、気が強いのが良かった。労働者階級ということで、住んでいる街並もかなり汚い。彼の暮らしについても言及してほしかった。
級長フェリックス・ハートゥングは背が高くて美少年だけれど、鼻がやや上がっていてそこに幼さが残っている。美少年とは言っても、エルンスト・ウンハウワーやエズラ・ミラーみたいな完璧な魔性ではなくて、不完全なところがいい。
彼については、コッホ先生が来る前の、意地悪全開だった頃のエピソードも観たい。とりまき引き連れて、校内を仕切ってる感じの。
彼はいい家の子なので父親に逆らえないんですが、殴られた時に、白い頬が赤くなるのが痛々しいやら素敵やらでした。鼻血も出す。父親に対する愛憎みたいなものももっと見たかった。
また、使用人の女の子との恋愛話もわりとあっさりしていた。家にいる時から想い合ってはいたようなので、そんなものなのかもしれないけれど、階級の違いという障害を案外するっと乗り越えてた。あの先が大変なのかな。
使用人の女の子は階級が同じである巻き毛のヨストとも仲良くなっていってたので、三角関係になるのかと思ったらそんなこともなく。
フェリックスはいじめてたのに、最後の試合のシーンで「ヨスト!」とかファーストネームで呼んじゃって、ヨストからパスをもらって見事にゴールするんですよね。それで、二人で抱き合って仲直り…したのだと思うけれど、ここもその描写だけなので、もっと詳しく観たかった。
演じたのはテオ・トレブスくん(テオ・ターブス表記のところも)。1994/9/6、ベルリン生まれ。ドイツのテレビドラマ中心に活動しているみたい。映画だとミヒャエル・ハネケ監督のパルムドール受賞作『白いリボン』、今年日本で公開された『コーヒーをめぐる冒険』、劇場公開されたかわからないけどDVDが出てる『ベルリン・オブ・ザ・デッド』に出演してるっぽいので観たい。
コッホ先生関連でも、ヨストの母とのエピソードや、イギリス留学時代の話も見たかった。特に、友人イアンとの話。イギリスでチームメイトだったっぽい写真も出てきたけれど、彼にとってイギリスでサッカーがどんな役割だったのかがわかりにくかった。フェアプレーの精神だろうか。
イギリスに行ったことを逃げたと罵られていたけれど、そもそも、彼と父との間の確執もあまりよくわからなかった。
演じているのはダニエル・ブリュール。正しい事を教えようという気概を持った真っ当な先生役。もともとは彼目当てに観ました。
一応は実話でありコンラート・コッホというのも実在の人物らしいけれど、実際はイギリスに留学はしていなかったらしい。サッカーボールも彼の父がイギリスから持ち帰ったものだったとのこと。
この前観た『キル・ユア・ダーリン』もそうだったけれど、実話ものについてもっと観たいと思っても、実話なのだからそれ以上のものはない。それでも、この映画についてはこれだけ脚色が加えられているのなら、コッホとイアンのイギリス時代のエピソードくらいは入れて欲しかった気もする。
19世紀の規律が厳しいドイツの学校、牧師でもある怖い父親、豪華な屋敷の坊ちゃん、労働者階級の同級生…。おもしろくする設定がわんさか入ってる。舞台は整っているのだから、もう少し奥深いところまで描いてほしかった。
それでも、もともとが、ドイツサッカーの始まりの話なので、本当はこれで充分なのだ。学園ものとして観たかったというただのわがままです。
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