『コーヒーをめぐる冒険』
Posted by asuka at 10:40 PM
ドイツでは2012年に公開。原題は“Oh Boy”。2013年のドイツアカデミー賞にて、作品賞、監督賞など、主要6部門を制覇したとのこと。さらにすごいのは、監督のヤン・オーレ・ゲルスターはこれがデビュー作。
私はその辺の事は知らずに、テオ・トレブスくん目当てで観ました。
以下、ネタバレです。
邦題ですが、コーヒーは常につきまとってはくるものの、めぐる冒険という感じではないし、冒険というほど壮大なものではない。それを考えると、ビートルズの『A Day In The Life』の歌い出しのI read the news today oh boyからとったらしい原題はいいタイトル。「なんてこった」とか、そんな意味みたいなので、いまいち抜けきらない一日をうまく表していると思う。でも、アメリカ版も“a coffee in berlin”といういまいちつまらないタイトルに変えられてしまっている。
行く先々でコーヒーを飲もうとするけれど、何かしらがあって飲めないのが続いて、それはそっくりそのまま、この主人公ニコのサエなさみたいなものにつながってきていた。大学を中退し、彼女とも別れ、いまいちぱっとしない。
映画で描かれているのは一日の出来事ですが、コーヒーが飲めない=ほっと一息つく暇がないという感じで、同じマンションの住人や、友人や、昔の同級生や、父親や、まったく知らない人などが次から次へと慌ただしくニコに関わってくる。
結局、話を聞いてあげたり面倒をみちゃったりして巻き込まれてる。家に入れてあげちゃうし、一緒に出かけるし、ゴルフに付き合うし、芝居も観に行くし、病院にも行く。
それでも距離をとりたいのか、頂き物のミートボールは芝居に出るようにすすめられても断るし、ドラッグも買わないし、セックスもしない。どこかさめているところが、この人の魅力であり、駄目なところなのかもしれない。
だから、最後にちょっと喋っただけの見知らぬ爺さんが倒れた時に、病院についていっただけではなく、手術室に入ろうとしたり、朝まで病院にいたりしたのを見て、何かしら成長したのかなと思った。
それは最後、一夜明けて、やっとコーヒーが飲めたことからも感じられた。一日中一人になれなかったニコが、おそらく不思議な一日を思いながら、少し苦いコーヒーを飲む。このラストの余韻が最高で、エンドロールはドイツ語で読めないけれど、席を立ちたくなかった。
次々出てくるドイツの俳優さんは詳しくはないので知らなかったけれど、きっと豪華キャストが集められているんだろうし、少し『グランド・ブダペスト・ホテル』的だと思った。また、本編が慌ただしめに過ぎていって、最後一人になって想いを馳せるという構造も似ているところがある。
ニコ役のトム・シリングですが、角度によってはジェームズ・マカヴォイにも似ていた。鼻の形が似てるのかも。マカヴォイよりもちょっと顔が丸い感じはする。仕送りを止められていたので大学生役だったと思うんですが、1982年生まれのようなので今年32歳。撮影時も20代後半だと思われる。動画んです。
あと、背が低いんですが、煙草の火をつけてもらうときに相手をかがませるシーンがあって、結構良かったです。
今回は情けない役だったんですが、びしっとしたのも観たい。
テオ・トレブスは出番が一瞬だった。自分の家でドラッグをさばく役だったんですが、ニコはその家のおばあちゃんと触れ合っていた。どちらかというと、おばあちゃんエピソードが中心だった。キャップを深くかぶっていてあんまり顔も見えない。TシャツにFUCKっぽいことが書いてある悪ガキ役。出方からしてカメオみたいな扱いになっちゃってるけど、彼がドイツでどの程度の位置にいるのかわからないのでただのちょい役なのかもしれない。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: