ショートショート フィルムフェスティバル 2014 インターナショナルプログラム


この前観たのはアカデミー賞ノミネート作品が集められている回でいいのは当たり前だったので、今回は実はほとんど期待をしていなかったのですが、なかなかどうして、どの作品もそれぞれ特色があっておもしろかった。いろいろな作品を撮る方がいるのを再確認。
また、今回はウクライナ、アイスランド、イギリス、ドイツ、ベルギー、スペインの映画だったんですが、各国の景色や部屋の内装などもそれぞれ違って楽しかったです。

以下、全作品について、ネタバレなど含みます。





『Not less than 50 kg/50kg以下お断り』
ウクライナの映画は初めて観ました。主人公の女の子がとても可愛かった。

50kg以下では動かないエレベーターに乗るために四苦八苦。オフィスの観葉植物と一緒に乗ったり、清掃用具を勝手に借りたり、警備員さんと同乗してもらったり。 挙げ句の果てに、カロリーの高そうなお菓子やパンをがぶがぶ食べて太ろうとしていた。その奮闘具合が微笑ましくて、つい笑顔になってしまう。
セリフがない作品なので詳細はわからなかったのですが、会社を辞めさせられたか、部署の異動を言い渡される。本当は50kg以下なのがバレたから? 乗るためのすったもんだを見られたから?
異動先か新しい会社は階段で下におりていく半地下のような場所で、エレベーターは関係ない。そして、部署の人が林檎をくれる。カロリーの高そうなお菓子よりも林檎のほうがいいし、半地下でも窓からは光が差し込んできている。辞めさせられたときは落ち込んでいたけれど、これはこれで、見方を変えればこっちのほ うが素敵かもしれない。
という解釈でいいんだと思うけれど、なんせ、セリフがないのではっきりとはわかりません。


『Bruised/傷跡』
アイスランドの映画も初めてかもしれない。
野生のヤク(多分)が草をはんでいる草原で男性がバイクで事故に遭う。目覚めると少し様子がおかしくて、どうやら女性の姿だけが見えないらしい。
前回観た『The Voorman Problem/ミスター・ヴォーマン』と同じ部類の世にも奇妙な物語系の少し不思議な世界へ迷い込んでしまう話。

見えないけれど、男性が罵倒しているのは聞こえるし、何かを殴っているのもわかる。そして、自分はどうやら女性が見えなくなっているらしい…ということは殴 られているのは女性だ。そこまでわかっているのに、見えないためにDVに遭っている女性を助けられないというジレンマがつらい。
今作も主演の男性が恰好良い。若い頃のヒース・レジャーの顔をもっと痩せさせた感じ。


『The Boy with a Camera for a Face/カメラの顔をもった少年』
コメディアンであり、俳優、脚本などもこなすスペンサー・ブラウンの初監督作。

これも世にも奇妙な物語系。産まれたときから頭がカメラになっていた男の話。産まれ落ちたときに両親や医者が驚く顔も、ちゃんと録画してた。
当然いじめにあうけれど、記録しているので犯人がすぐにわかって先生に怒られていじめはなくなる。便利なこともあるけれど、著作権保護の関係から映画館に入れないなど不便なことも。この監督さんが知っているのかはわかりませんが、外見がまさに映画泥棒です。
テレビにスカウトされて、トゥルーマンショーみたいなものを放送することになるけれど、みんながテレビに釘付けでゾンビのような生活を送るようになってしまったため、世界を救うために自殺をすることになる。世界は元に戻ったけれど、恋人は悲しんでいる、というような話。
途中はコミカルで笑いも起きていたんですが、最後は少し切なかった。


『Half You Met My Girlfriend/僕の彼女』
恋人がおしゃべりしすぎてうるさいなー、そうか、もう下半身だけでいいんじゃないの?という話。
アニメーション作品。綺麗なあわい色づかいですが、映像は暴力的なほどせかせか進んでいく。マネキンの下半身だけがちょこちょこと横を歩いているさまがシュール。

Nicolas de Leval Jezierski監督が来場していて、軽い質疑応答があった。このアイディアはどこから来たのか、という質問には、デート中に彼女の前にガラスの板が 通って、下半身しか見えなくなったときに思いついたと言っていた。主人公が芸術家なのは?という質問にはそこまで深く考えていなかったとのこと。今回字幕 を付けてそこまでちゃんと読んでくれたのは嬉しいけれど、どちらかというと内容よりは流れを重視しているとのこと。でも、主人公のモデルはやはり自分で、 自分も女性のお尻に目がいっちゃうとのことでした。
ちなみにバンドもやっているらしく、エンディングの曲は彼のバンドの曲らしい。


『THE HUNGER/ウサギ』
家も何もない、草むらでのセックスを目撃してしまった少年。嫌悪感を抱いたのか、ウサギの死体を二人に投げつける。怒った男が追いかけてきて、少年を殴る。
投げつけた死体は何か他の動物にくわれたのか、内臓が見えてしまっていた。

生と死というか、プリミティブな話なのかと思っていた。タイトルもHUNGERだったし。
実際に、海の中まで逃げるウサギを追いかけていって、耳を持って持ち帰ってくる少年は野性味あふれて見えたし、そういう撮り方をしていたと思う。

ただし、この話にはオチがある。
おそらく、少年の家は厳格なキリスト教徒一家であり、父親が特に厳しそうだった。
そして、食事の際、少年の正面に座るのは、さきほどセックスをしていた女性。少年の姉だったのだ。
食事の前のお祈りで、姉が「処女マリア様に」という言葉を発した際に、少年がわざとらしく咳をしていた。てっきり私は、少年は何をしているかわからずに嫌悪感を抱いたのかと思っていたけれど、全部知っていたのだ。
そして、出された食事はウサギ。さきほど、内臓が飛び出している姿を見ているし、姉はぎょっとしていた。
すごい秘密を握ってしまった少年の話でした。これでいつでも優位に立てる。

個人的に、今日観た作品の中で一番好きでした。


『PACIFIER & BLOWPIPE/決行の時』
深夜のダイナーにお面をつけた二人組の強盗が入ってくる。どうやらどこかの強盗を失敗したらしくあとが無さそう。ジャンルも何もわからないで見始めると、シ リアスなのかなとも思ったんですが、二人組のお面がそれぞれ笑いを誘うような力が抜けたものである点もそうなんですが、会話がおもしろく、どうやらコメディで良さそうだった。クライムコメディですね。

ダイナーに二人組で強盗に入ってきて喋りまくるということで、タランティーノの影響を感じる作品だった。

途中で警官がハンバーガーを買いに来るんですが、まったく気づかない。で、外に停めてあるパトカーの中で、ハンバーガーをかじりながら同僚とどうでもいい会話をしている。ジョージ・マイケルはもう心が女性になっていて、その上で同性愛者ってことはレズビアンなんだ!ジョージ・マイケルは女が好きなんだ!イ エーイ!みたいな、本当にどうでもいい会話。ダイナーの中と、外に停めてあるパトカーの中という、二元というか、少し群像劇っぽくなるあたりもタラン ティーノっぽい。

それにしても、どうでもいい会話と群像劇を13分という短編の中でやりきるのは素晴らしい。
絶対にアメリカ映画だろうと思っていたら、スペイン映画だった。



『Beat/鼓動』
ベン・ウィショー主演作。この作品目当てだったのですが、これが本当に難解でした。
鼓動という邦題がついてますが、そのままビートでいいのではないかと思う。

ウィショーが曲に合わせて外を激しく踊りながら歩いているので、ミュージカル的なものなのかと思ったらそうではなかった。感情を表現していて外からは普通に見えているのかと思ったらそうでもないらしい。
しかも、動きが曲と合っていたけれど、外から見たら曲も聞こえない。ただの踊りながら歩いている人ですよね。ウィショー以外の人は普通に生活をしているから不審者にしか見えない。
コンビニの陳列棚の商品をざらざらーっと下に落としては外につまみだされ、飲食店でテーブルを叩いては注意されてつまみ出され殴られ。ギャルたちにはキモーイ!みたいなことを言われ、チンピラに殴られ。

映像的には恰好良かったけれど、ストーリーがあるタイプではないのかなと思った。今作の監督は、ミュージックビデオやCMを作っているというのに納得。

使われていたのはBATTLESの曲だったみたいなんですが、それに合わせて激しく踊るベン・ウィショーは恰好良かったです。長い手足をゆらゆらさせたりめいっぱい使っていて魅力的でした。ただ、日常生活にそんな人がいたら怖いのは怖い。
殴られたあとに鼻血を出しているショットがあるのも嬉しかったです。

0 comments:

Post a Comment