『白いリボン』


2010年公開。ドイツでは2009年。カンヌのパルムドール受賞作品。ミヒャエル・ハネケ監督。『コッホ先生と僕らの革命』での意地悪級長役が良かったテオ・トレブス目当てで観ました。

コッホ先生が1874年、この映画は1913年ということで、似たような時代のドイツが舞台になっている。そして、両方とも子供が多く出てくる。
ただ、コッホ先生が厳格な規律にしばられた学校の中で最初は従っていたが次第に子供らしさを取り戻していくのに対して、この映画では逃げ場がない。学校でもがんじがらめだし、小さな村の中でも規律に縛られている。
ましてやタイトルにもなっている白いリボンである。要は未熟者の証ということなんだと思うけれど、子供なので未熟であって当然。なのに、晒すようにして腕に付けられてしまう。

小さな村で連続して事件が起こり、犯人は捕まらずに不穏な空気だけが蔓延していく。
語り手が学校の先生で、先生はたぶん真実に辿り着いているけれど、真実は明確には明かされない。村の有力者である牧師さんに脅されては、探偵めいた事ができないのも当然だと思うし、謎を完全に暴いちゃうのも映画が俗っぽくなってしまう。
有耶無耶のまま語り手が村を離れることで、謎が明かされなくても、本当にそんな村存在してたの?幻じゃないの?というような後味の悪い昔話みたいな感じになって良い。

結局、カーリと助産婦、アンナとドクターがどこに消えたのかは、もうヒントすらないのでわからない。
最初のドクターの事故は、親であるドクターから性的虐待を受けていたアンナを可哀想に思った子供たちがやったのかな。笛の件で男爵の息子を池に落としたのは家令の息子だったし、最初の男爵の息子の事件もそうなのかも。家令の娘がカーリが酷い目に遭う夢を見たと先生に言ったのはSOSではなかったのではないか。

子供たちはほぼ感情を示さないし、笑わない。教室で騒いでいるシーンが唯一だと思うけれど、それも見つかってこっぴどく怒られていた。
大人たちへの反抗でもあるのかなとも思うけれど、とにかく謎は明かされないので、予想です。ただ、じわりじわりと村が蝕まれていく様子が怖かったし、雰囲気が良かった。

モノクロ撮影なのもいい。ドイツの田舎の村の雪景色が綺麗だった。子供たちの黒い洋服もよくはえていた。アカデミー賞を含め、いくつかの映画賞の撮影部門にノミネート、受賞しているようです。
いまとの時代の違いを表すためにモノクロになっているらしいけれど、最初はカラーで撮って、モノクロに変換したらしい。

テオ・トレブスは出番がそれほどなく、ほぼセリフもなかった。子供がたくさん出てくるわりに子供たちはほとんど喋らないですが。少し声が高く、もしかして声変わり前だったのかもしれない。撮影が2008年らしいので、当時のテオ・トレブスくん14歳。まだまだ少年の危うさがあって良かった。子供たちのなかでも際立って見えるけれど、それは私が彼目当てで観たからだと思う。

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