『ムーン・ウォーカーズ』



1969年の月面着陸のあの映像はスタンリー・キューブリック監督の捏造映像だった!?という都市伝説を元にしたストーリー。タイトルのロゴも『時計じかけのオレンジ』風になっています。
出演は『ハリー・ポッター』シリーズのロン役のルパート・グリント、『ヘル・ボーイ』シリーズや『パシフィック・リム』の闇商人役のロン・パールマン。
監督は本作がデビューのアントワーヌ・バルドー=ジャケ。なんと、イギリス人ではなくフランス人だった。

以下、ネタバレです。









ルパート・グリントは『ハリー・ポッター』シリーズで有名なようですが、私は『ハリー・ポッター』を観ていないので、1999年の『ターゲット』の印象が強い。今作も『ターゲット』と同じルパート・グリントでした。どことなく情けなくて、面倒ごとに巻き込まれてしまう。
そのひょろひょろした感じと、がっしり強面のロン・パールマンの二人の対比がおもしろい。闇金業者に突撃したときに、ロン・パールマンの後ろに隠れていたのが、体格の違いなどもよく表れていた。ロン・パールマンに命じられるままに、ひぃぃぃと言いながら金を回収する様子もいい。若い頃のマーティン・フリーマンがやりそうな役。

キューブリックの月面着陸捏造映像の話とはいっても、実話というわけではない。なんせ、元々が都市伝説だし、そもそもこの映画にはキューブリックは出てこない。もともとが偽キューブリックである。なので、全部フィクションとして自由にやっています。

偽の映画を作って何かの事態を救うというと『アルゴ』が思い出されるが、それとも違っていた。また、素人の映画作りというと、ミシェル・ゴンドリー監督の『僕らのミライへ逆回転』なんかも思い出すがこれとも違った。ただ、本作の製作のジョルジュ・ベルマンはゴンドリー監督のプロデュースに多く関わっている方だった。

だったら、もっともっと映画作りのシーンを多く観たかったなあという気もする。後半では撮影シーンも出てくるけれど、物足りなかった。いやに立派なアポロ11号を作るのはどうやったんだろう。月面の砂などの作り方も知りたい。宇宙服も手作りにしてしまっても良かったのでは…など気になる点をすべて映像で見せて欲しかった。
ただ、前衛映画とはいえ、一応、映画監督に撮影を頼んでいるし、日にちもないという設定だったから仕方が無いのだろうか。それに、本物に見せるために作るから、奇抜なアイディアでどうにかするというよりは、地味目な映像になってしまうのかもしれない。

それか、途中でバンドのメンバーが乱入して来て、誤魔化すために君らのPVの撮影だよなどと言っていたけれど、それの撮影風景でもやってほしかった。そちらなら、だいぶめちゃくちゃなことができるだろう。くらげの姿になっていたけれど、楽しそうじゃないか。

映画作りだけの映画にしても良かったのではないかと思うけれど、思ったよりもドンパチが多かった。しかも、撃たれて頭が吹っ飛ぶなど過激なもの。三回くらい吹っ飛んでいた。当然、血の量も多い。この辺で映画の年齢制限がかかったのかもしれない。

それか、映画を撮影するのがヒッピーの館だというところ。スウィンギング・ロンドンという60年代イギリスの若者文化も本作のテーマになっている。オープニングのサイケな色合いのアニメはイエローサブマリンを思い出した。
この館には多数の上半身裸(映っては無いけれど、上半身だけじゃないかも)の女性たちがいる。また、ドラッグも吸い放題。
アヘンにLSDで、悪夢のようなイメージ映像とともにへろへろになっているロン・パールマンは可愛かったです。ロン・パールマン演じるキッドマンはCIAでベトナム戦争帰還兵という役柄なのですが、PTSDに苦しめられていた。ドラッグのあとで、手の震えが止まっていたので何かを克服できたのかもしれない。ドラッグのおかげではなく、みんなと楽しく遊んだからかもしれないが。

撮影していたヒッピーの館が銃撃戦でめちゃくちゃになり、キッドマンたちは逃亡するんですが、途中で月面着陸のニュースを見る。さきほど、宇宙飛行士役だった青年が「あれ、俺たち?」と聞くと、ルパート・グリント演じるジョニーは「違うよ、着陸成功したんだ…。リアルの映像だよ」と言う。それを受けて、キッドマンが少し不安そうに「…だよな?」と言うのが良かった。あくまでも、捏造なんてありませんでした!ではなく、少しだけぼやかしているのが粋。

エンドロールでは、撮影を頼んだ監督のインディーズ前衛映画『跳ねる』が使われていた。太った男性が跳ねている様子がスローでとらえられているだけ。ダブサウンドにのって、肉がぼよよんと震える。映画内では「三年かけたんだ!」と言っていたのを思い出してくすっとした。

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