『ワン チャンス』



2014年公開。イギリスでは2013年公開。
イギリスの“ブリテンズ・ゴット・タレント”という素人オーディション番組からオペラ歌手になったポール・ポッツの自伝映画。スーザン・ボイルもこの番組出身らしい。

オペラ歌手というと、なんとなく育ちが良さそうであったり家が金持ちであったり、お高くとまっていそうなイメージだけれど、このポール・ポッツという人はもちろん才能はあったのだろうが、ただの歌好きの一般人であり、その辺にいそうである。そのため、映画自体もオペラ歌手とはいっても、難しさとか格調高さなどはなく、親しみやすいものになっている。こちらも構えずに観ることができる。そもそも、映画で描かれているのがオーディション番組に出るまでであり、ポール・ポッツがオペラ歌手になる前の日常部分なのだ。

伝記とはいっても、すべて真実ではなく、元にした創作なのだろうと思った。盲腸や内臓の腫瘍、のどの病気、自転車での交通事故…。わざとらしいほどに不幸に不幸が重なって、うまくいくものもうまくいかない。なかなか前に進めない。
だが、調べるとそれら全部が本当に起こったことのようであり、更にポール・ポッツご本人のインタビューを見ると、「あれよりもっと不幸なことが起こっていた」と言っていたので驚いた。

のちに妻となる女性ジュルズとの出会いは事実とは少し異なるみたいですが、映画では元々メール友達だった。自分はブラッド・ピットに似ていると言っていたのと、自分の容姿に自身がないことから会うのを拒んでいたが、仕事先の同僚が勝手にメールを送ってしまい、会うことになる。
容姿は聞いていたものとまったく違っても、メール上のことはそんなものだとジュルズはわかっていたのか、特に気にしていない様子だったし、一日デートをしている間に、ポール・ポッツの人柄にひきこまれていたようだ。
臆病で容姿もいまいちだけれど、歌が大好きで心優しい好人物というのがよく伝わってきた。ジュルズが終電で帰るために二人で手を繋いで駅のホームを走り、ジュルズが電車に乗り込んで、窓にはーっと息を吹きかけてポールあてにハートマークを描くシーンのくすぐったくなるほどの青春映画っぷりが良かった。二人は瑞々しくて、キラキラしてて、涙が出てきた。

二人とも好感が持てるし、一人では一歩踏み出せないポールの背中を常に後押ししてあげていて、その関係性も良かった。

ポール・ポッツを演じたのがジェームズ・コーデン。気弱で心が純粋なポールにとてもよく合っていた。体型も似ている。
この映画は一人の男のサクセスストーリーだけれど、ちょうど、ジェームズ・コーデンもこの映画の前の2012年にトニー賞を受賞して、イギリスだけでなくアメリカでも受け入れられたところだったらしい。また、今年、アメリカCBCの長寿トーク番組『ザ・レイト・レイト・ショー』の新司会者に決まった。イギリス自虐ギャグも時々飛び出しているこの番組が好評らしく、更に五年間1000万ポンドという契約での続投が決まったとのこと。彼自身のサクセスストーリーも続いている。

映画内での歌はポール・ポッツご本人の吹替らしいけれど、ボイストレーナーがついて、ジェームズは歌いながら演技をしていたらしい。

ポールの同僚であり友達のブラドン役にマッケンジー・クルック。ポールとは体型も真逆だし、性格もポールがうじうじと悩んでいるところでブラドンはスパンスパンと簡単にいろいろ決定していて、そのコンビがおもしろかった。マッケンジー・クルックが好きなせいもあると思うけれど、ちょい役でも強烈な印象が残った。

最後のオーディション番組のシーン、審査員の映像は実際の番組の映像だったのだろうか。違うとしても、ポッツのそのオーディションで実際に審査をしていた方々みたい。その審査員の一人、ワン・ダイレクションの生みの親としても知られる音楽プロデューサーのサイモン・コーウェルは、この映画の製作にも関わっているようだ。

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