『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』



2014年公開。
西部劇でコメディという日本で売れない要素がつめこまれているのによく劇場公開したなと思う。セス・マクファーレンが監督・制作・脚本・主演とすべてにおいて関わっているため、『テッド』シリーズが流行った日本なら大丈夫だろうと思われたのだろうか。

ウエスタンっぽいものが嫌いな主人公の出てくる西部劇という一風変わったストーリー。人がすぐ死ぬ世界はごめんだと思っている羊飼いで、本当はサンフランシスコに住みたいと思っている。そして、そのへたれが原因で、彼女にもフラれてしまう。

セス・マクファーレンなので、エロネタも汚ネタも含め、かなりキツい下ネタが多いんですが、それらを抜いたらディズニー映画にできるのではないかと思った。
まず濃いキャラクターたちは擬人化の逆で擬動物化する。

主人公アルバートはネズミ(ミッキーではなく)。アマンダ・セイフライド演じる元恋人ルイーズはリス。ニール・パトリック・ハリス演じる立派な髭をたくわえたルイーズの新しい恋人フォイはキツネ。ジョヴァンニ・リビシ演じる情けないけど優しい友人エドワードはミーアキャット。ニコール・キッドマン演じる女性ガンマン、アナは上等な毛並みのミンク。リーアム・ニーソン演じる夫のクリンチはクマでしょうか。

へたれな主人公が可愛い彼女に捨てられて、彼女の新しい恋人は主人公とは正反対の西部が似合う男。立派な口ひげもたくわえていて、口ひげの男たちが口ひげの歌で主人公を追いつめ踊る様子もディズニー映画っぽかった。
傷心の彼の元にどこからか美しい女ガンマンが現れて、彼の成長の手助けをしてくれるのもまた、王道展開。しかも、私たち観ている側は美しい女ガンマンには怖い夫がいることを知っている。女ガンマンは少し意地悪顔(ニコール・キッドマン)なので、もしかしたら悪い奴で主人公は騙されちゃうんじゃないの?という疑惑も捨てきれない。騙されて、結局は元恋人とよりを戻すのかな…とも思っていた。

ただ、大麻クッキーのあたりとか、セス・マクファーレンとニコール・キッドマン二人のシーンだと、彼のギャグに本気で笑っているようにしか見えなかった。あんなに気持ち良さそうに「あっはっはっはっ!」と馬鹿笑いするニコール・キッドマンを初めて見た。あんな笑い方をする人が悪人のわけがない。

望まないながらも二回ほど決闘をすることになるのですが、一回目のフォイとの決闘はアナが飲み物に強力な下剤を入れて勝利。二回目のクリンチとの決闘は毒を塗った弾を腕にかすらせて勝利。両方とも姑息である。

もちろん練習もしていたけれど、近くまで寄って行っても全然当たらなくて結局手で落とすとか、上に投げた皿が撃てなくて自分に当たっちゃうとか散々だった。そのアナによる特訓風景もディズニー映画のように見えた。
こんな状態の男が、練習したとはいえ短時間で上達するはずがないから、姑息な手を使うのは正しいと思う。

また、部族に助けられた時のトリップ風景の悪夢的な感じもディズニー映画にありそうな感じだった。ヒツジが喋ったり、二足歩行であの口ひげの歌を踊ったりする。

姑息な手でも勝利は勝利。お尋ね者だったクリンチを倒した懸賞金が出たが、それでアルバートがなにをしたかというのがラストシーンで出る。あり得ないくらいの大量のヒツジ、その真ん中で抱き合ってキスをするアルバートとアナ。

もう本当に王道コメディなんですよね。
これ、エロ要素、下品要素はどうしても入れなくてはならなかったのだろうか。照れなのか?
とも思ったけれど、考えてみたら、『テッド』シリーズも下品すぎるギャグを抜いたら、ストーリー自体はわりと王道なのだ。王道の合間にあの毒っ気を入れるというのが、セス・マクファーレンの作風なのかもしれない。
今作も、大きな幹があって、途中途中、枝葉が出ていて、投げっぱなしの下品ギャグが挿入されている。一緒である。枝葉をすっぱり切り落とし、太い幹だけにしたら立派ではあるけれど、見栄えも良くないし物足りないのだろう。

同じ西部劇ということで、エンドロールのあたりでまさかのジャンゴが出演していて笑った。この場合、ジェイミー・フォックスではなくジャンゴです。
途中でも、ドクとデロリアンが出てきた。クリストファー・ロイドではなく、ドクです。
他、カメオでユアン・マクレガーとライアン・レイノルズが出ていたらしいけど見つけられなかった。
パトリック・スチュワートもまったくわからなかったけれど、トリップしていたときの喋るヒツジの声らしい。




0 comments:

Post a Comment