『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』



スコットランドの女王メアリーとイングランドの女王エリザベスの対立を描いた話だと思われそうなタイトルですが、原題が『Mary Queen of Scots』ということで、メアリー側の話中心。
メアリー役にシアーシャ・ローナン。エリザベス役にマーゴット・ロビー。メアリーの2番目の夫、ダーンリー卿役がジャック・ロウデンで、彼目当てで観ました。

以下、ネタバレです。








メアリーがフランスからスコットランドへ戻ってきて、処刑されるまでが描かれている。
メアリーとエリザベスの往復書簡でのやり取りを描いたドキュメンタリーを事前に見ていて、大体の流れや出来事を知っていたせいもあるのかもしれないけれど、基本的にそれをなぞっているだけに思えて、少し淡々として見えてしまった。衣装やヘアスタイルの豪華さには目を奪われたけれど、話自体はいまいち盛り上がりに欠ける気がした。
ラスト付近のメアリーとエリザベスの会談の部分は夢のような美しさとドラマティックさでした。ただ、二人は書簡のみのやりとりで実際には顔を合わせていなかったと思うので、あの部分は創作だと思う。それでも、その部分が一番映画的であり、見せ場でもあると思った。
小さな小屋の中で二人きり。薄い布のようなものが張り巡らされていて、互いの姿が見えそうで中々見えない。この焦らされ方も良かったし、やっとのことで対面するのもロマンティックだった。長年恋い焦がれた人物にやっと会えたという積年の想いが遂げられたのを感じた。
このシーンはマーゴット・ロビーは最終日、シアーシャ・ローナンは初日で、実際に初めて顔を合わせたというのもぐっとくるエピソード。

日本では同時期公開だったので同じイギリス宮廷ものとしてどうしても比べてしまうんですが、『女王陛下のお気に入り』くらいあけすけな女同士の愛憎入り混じった戦いが見たかった。
だから、本当は本作に対しても、エリザベス側の出番をもっと増やして、二人の書簡でのひりひりするやりとり中心で見たかった気がする。
エリザベスはあまり出てこないのですが、ラストの処刑付近で衣装がどんどん派手になっていくのは見所だと思った。ただ、一瞬しか映らないのが残念。
原作があるものだし、原題を考えたらメアリーについての話というのは明らかではあるんですが。
ただ、今、EU離脱の件でも荒れているし、今とは比べ物にならないほどの男社会の中で戦う二人の女王ということで、Me Too的な面をテーマにしても良かったのではないかと思うが、そのような社会的なものではなく、どちらかというとメロドラマになっていた。

ただ、宮廷ものはメロドラマにしやすいとも思う。戦いのシーンは一回だけです。
エリザベスにとってのロバートは夫になりうる人物として描かれていたけれど、バージンクイーンとして有名だし、どうなんだろうか。ロバート役にジョー・アルウィン。なんとなく『女王陛下のお気に入り』とも似た役だと思った。あそこまで情けなくないけれど。

メロドラマ的な要素が強く、メアリー側の話が多いということで、ダーンリー卿の出番が思っていたよりもだいぶ多くて嬉しかった。
ダーンリー卿、イングランド人でカトリックでバイセクシャルで大酒飲みということで国民からだいぶ嫌われていたという情報は得ていた。また、メアリーが懐妊した際にも自分の子ではなく仲の良かった秘書の子ではないかと嫉妬して殺し、その結果、建物ごと爆破させられて殺され、爆破現場から離れた場所で見つかった遺体には首を絞められた痕があったなどもう散々な話しか聞いていなかった。ただ、どの資料でもハンサムとは書かれていたらしい。顔の良さだけが取り柄の男…。

ほとんどその通りだったんですが、想像していたよりは鬼畜ではなく、駄目男とかカスといった印象で、これはジャック・ロウデンの演技や優しい顔つきによるものなのか、私がジャック・ロウデンが好きだからなのかわからない。

まずダーンリー卿の父親役が『ダウントン・アビー』のベイツ役でお馴染み、ブレンダン・コイルだったのがちょっとおもしろかった。
彼は父と一緒にスコットランドへ赴く。侍女とメアリーは同じような服装をしていて、詩を詠みながらその中から見事メアリーを当てて求婚する。
メアリーも恋やセックスに憧れがあったし、ダーンリー卿も言葉巧みだし優しいのですぐに恋に落ちる。
しかし、ダーンリー卿は結婚式で泥酔。メアリーの秘書の男性に絡んで、結局一夜を共にする。メアリーは結婚式の最中から後悔した顔をしてましたが、この浮気もすぐに見つかる。
そこからは夫婦仲は冷めていくばかりで、一応懐妊はするものの、その時のセックスも愛なんてないもので、ここはちょっと鬼畜めでした。
でも、秘書を殺すのも、ドキュメンタリーだとダーンリー卿の独断っぽかったが、本作では周囲にそそのかされてしぶしぶといった感じだった。人の良さが滲み出ていた。秘書の子ではないかと疑うシーンもなし。
別居の住まいにも男性を連れ込んでいた。ドキュメンタリーだとバイセクシャルとのことだったけれど、本作では男色家と呼ばれていた。

ダーンリー卿のせいで狂わされたメアリーの人生が中心のようになっていた。失脚の原因も、メアリーが不倫を隠すためにダーンリー卿を暗殺させた、メアリーは淫売!みたいな噂を立てられたからだった。その前からダーンリー卿とのあれやこれやも国民に吹き込まれていたが、その吹き込む役が最初から女王の存在をよく思わないジョン・ノックス。演じたのがデヴィッド・テナント。宮廷ものだから仕方ないけれど長髪に髭ということで、あまりデヴィッド・テナントらしさはない。ただ、ぎょろっとした目はそのまま。また、声に特徴があるので、人を煽動するような演説に向いているので役に合っていた。

まるで、ダーンリー卿がまともだったら彼女が国を統治してしたのではないかとでも言いたそうな作りだった。もちろんその部分もあったのかもしれないが、その部分に特にスポットが当てられているのですごい悪役具合でした。出番が多くて満足。

0 comments:

Post a Comment