『バンブルビー』



『トランスフォーマー』シリーズのバンブルビーをメインとしたスピンオフ…という位置付けなのかもしれないけど、マイケル・ベイ監督とは別物に感じた。どちらが良い悪いではなく、作風がまったく違うので両方好きです。
監督は『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のトラヴィス・ナイト(NIKE創業者のご子息)。

以下、ネタバレです。





まず驚いたのが、最初のオプティマスたちオートボットとディセプティコンの戦い。マイケル・ベイ版だと滑らかなCGというイメージだったが、本作ではおもちゃっぽいのだ。トランスフォームも滑らかというよりは本物のおもちゃっぽい。無理のない変形というか。トランスフォーマーは元々おもちゃなのだし、おもちゃっぽくていい。なんとなく、子供同士がトランスフォーマーで対戦させて遊んでいる様子を想像してしまった。あれがどうしてそう見えたのかはよくわからない。少し安っぽい(それが悪いという意味ではなく)映像だったからだろうか。妙にくっきりしているというか、日本の特撮っぽいというか。最初から違いが出ていておもしろかった。

予告を見る限り、優しい少女がバンブルビーと出会って友情を育み…というストーリーなのかと思っていた。優しくはあるけれど、少女チャーリーは最愛の父を亡くしたことで傷つき、家族の中で孤立していた。また、学校は出てこないからスクールカーストというのもおかしいかもしれないけど、上のほうにいる集団に馬鹿にされ、友達もいない。
傷ついてはいても、彼女にはロックがあるというのも良かった。『キャプテン・マーベル』もキャロルがNIN Tシャツを着ていたけれど、チャーリーもモーターヘッドやザ・スミスのTシャツを着ている。メイクもゴス調。それが彼女を守る戦闘服だ。ラストの本当のバトルの際も、ロックTシャツに革ジャンで気合を入れていた。
音楽も80年代のものが多く使われていた。特に、チャーリーが好きなスミスは何曲も使われていた。

孤独なチャーリーとバンブルビーが出会って心を通わせる。バンブルビーは大きいが、小動物のようだった。どの動作も可愛かった。瞳の青い光もチャーリーを見つめる時だけ大きく、黒目がちになる。
チャーリーを傷つけたときに怒って赤い光になったときは多少つり目で光も小さかった。少しアニメ的でもあると思う。

少女とオートボットの触れ合いと別れという、所謂『E.T.』のような話かと思っていたが、軍隊も絡んでくる。87年が舞台ということで、冷戦の話も少し出てくる。明言はされないが、ディセプティコンの機能で居場所を突き止める云々の話もそのことだろうと思っていたけれど、米軍ではなく架空の政府機関らしいので違うかも。
また、オートボット対ディセプティコンという、本来のトランスフォーマーの要素も当たり前だが入っている。
バンブルビーが可愛いし、チャーリーも魅力的だったので、ロボットと少女の触れ合いだけで観たいとも思ったけれど、それではトランスフォーマーでなくなってしまう。
中盤あたりまでは、それぞれの要素が独立してるし、詰め込みすぎでは…と思いながら見ていたけれど、ちゃんとすべてが絡み合って綺麗に収束するのがお見事。

チャーリーは飛び込みの選手で、でも父が亡くなってからは飛び込めなくなっているというエピソードが出てくる。カースト上位のイケメンが煽るように、飛び込み対決をしろと誘うシーンがあって、チャーリーがそれに応じて根性を認められて仲良くなるのかと思った。しかし、チャーリーは飛び込めず、イケメンの出番もそこで終了。飛び込みのことをすっかり忘れていた。
しかし最後、ディセプティコンにバンブルビーが海に落とされた時に姿勢を正してしまった。来る!と思った。ここで、チャーリーが飛び込むのだ。このための伏線だった(このシーンは『パディントン2』や『シェイプ・オブ・ウォーター』を思い出した)。
飛び込むことでチャーリーは父の死を乗り越えた。バンブルビーとは別れることになるが、ちゃんと成長していた。

ラストのバトルもおもちゃっぽかった。まったくないわけではないけれど、変に飛び道具を多用しない。殴り合いメインです。
ディセプティコンで、ロボット、車、ヘリコプターと変形するものが出てくるんですが、ヘリコプターになった時にバンブルビーが鎖を投げてプロペラに巻きつける。その状態でロボットに戻ると体に変な感じに鎖が絡まっていて、それを引っ張るとばらばらになる。これって、本物のおもちゃも多分同じなんですよね。ヘリコプターの時に糸を絡めて、そのままロボットに戻したらぐちゃぐちゃに絡まってどうしようもなくなる。糸が強固なものなら、おもちゃはばらばらに壊れてしまうと思う。
ちゃんと変形の法則が考えられているところにトランスフォーマー愛を感じたし、『KUBO』での折り紙が折られる様子を思い出してしまった。

かといって、マイケル・ベイ版が駄目というわけではなく、マイケル・ベイはマイケル・ベイで、あのドッカンドッカンの派手な映像は観ていて気持ちがいい。あれはあれで好きです。派手さでは断然マイケル・ベイが勝っていた。

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