『シンプル・フェイバー』
Posted by asuka at 9:18 PM
2017年の小説『ささやかな頼み』を原作にしているとのこと。
監督はポール・フェイグ。アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリー主演。
おしゃれとしか感想を聞いていなかったので、肝心のストーリーについてはあまり気にしていなかったのですが、おもしろかった。
以下、ネタバレです。
主人公のステファニーはママ友(といっても本当の意味でのママ友ではなく、これを見ていてくれるあなた方はみんな友達みたいな意味でのママ友)向けの動画ブログをやっていて、そこで事件の発端が紹介される。
途中途中、また顛末まで動画ブログで紹介されるので、あたかも私までブログの読者になったような気持ちになる。
ステファニーはちょっと服装が少しズレてはいるんですが、明るくて人懐っこい。ブログを見ていると彼女の味方になりたくなってしまう。
どの辺がズレているかというと、猫ちゃん柄の10足1000円の靴下を履いていたりする。夫を亡くし、シングルマザーのためお金がないのだ。それでも子供に惜しみない愛情を注いでいるし、猫ちゃん柄の靴下も似合っている。登場時のどピンクの服もぎょっとはしたけど似合っていた。
そんな彼女は自分とは正反対のママ、エミリーと会う。子供が同じ学校だけれど、エミリーはNYで働いていて、忙しい。夫は元売れっ子作家で二人の住む家はハイソで豪華。服装もびしっときまっていて、背も高くて素敵。夫との仲も良好で、ステファニーはエミリーと昼からマティーニを飲みながら語らい、憧れを強めていく。
しかし、エミリーが子供を預けたまま失踪していまい、湖の底から遺体で発見される。ステファニーは犯人探しを決意する。
ステファニーには少しズレているピュアな天然さんみたいなイメージがあった。だから、本当に親友の事件を解こうと頑張ってるのだと思っていたが、ストーリーが進むうちに、腹違いの兄と関係を持ったことや、夫と兄を一緒に亡くしたことなど仄暗い過去が明らかになる。
また、エミリーの夫とも関係を持ってしまう。この夫役のヘンリー・ゴールディングの所作がとても恰好良かった。女癖が悪いんですが、それも仕方ないと思わせる恰好良さだった。『クレイジー・リッチ』に出ているとのこと。
ステファニーはエミリーの家に住むことになって、エミリーの服などを処分しようとしていた。憧れの人に成り代わるために殺したのではないかと思ってしまった。
また、夫は夫で、エミリーに多額の保険金をかけていたり、職場の助手とも関係を持っていて怪しい。
しかし、途中でエミリーが実は生きている?という疑惑が持ち上がる。死体は見たし…と思っていたら双子でした。
ミステリーでの双子設定は禁じ手だと思っていて、出てくるとがっかりしてしまうんですが、本作はその奥に悲しい設定が隠れていて、ただの双子設定とは違ったので良かった。
双子は二人で厳格な父から逃れるために家に放火をし殺したという過去を持っていた。エミリーとフェイスは家を離れ、途中で別れるが、仕事などで成功したエミリーとは違い、フェイスは薬物中毒になっていた。そのため、金をよこせとフェイスはエミリーを脅す。
双子なのでエミリーもフェイスもブレイク・ライブリーが演じている。もちろんメイクやヘアスタイルのせいもあるだろうが、まるで別人のようになっていて演技力に唸った。
また、ここではメイクやヘアスタイルで印象は変わるよということを教えてくれているようにも思えた。
そうじゃなきゃ、こんなにファッションにこだわった映画にならないだろうし、そこはポール・フェイグ監督の良さだと思う。監督自身がものすごくおしゃれ。
ステファニーは最初こそ猫ちゃんソックスだし襟に猫の顔のついた服だったが(それも可愛い)、リップの色が濃くなり、服装が垢抜けていく。
序盤に、エミリーの会社(服飾デザイン?)に行く時に精一杯の大人っぽい服装としてスカーフを巻くのが可愛かった。しかし、なんか変だなと思ったら、スカーフの結び方が変なのと、「GAPにヴィンテージエルメス」(会社の人に指摘される)だったそう。ヴィンテージって言いかたですが、要は古い、時代遅れということ。しかし、その似合ってなさ、決まらなさも、それはそれで可愛い。
最後はさながら服装交換という感じだった。エミリーがふんわりしたワンピースを着て、髪型もふんわりとフェミニンな印象になっていた。夫も「ステファニー?」と間違えていた。
ステファニーはここまで着ていなかった黒、そしてパンツスタイル。ステファニーはどちらかというと派手な色で、モノクロな服を着ていたのはエミリーのほうだった。更に囲み目メイクで銃を構える。
ミステリー自体もおもしろかった。特に、最後にご近所が助けに来るのはステファニーの今までが報われたようでほろりとした。
ステファニーは周囲にバカにされていたのを自分で気づいていたのかいなかったのかわからない。でも、知り合いがブログをやってたらみんな見ますよね。
最初は馬鹿にしていたご近所さんは、家族向けの豆知識と料理について、本当に便利だと思ったのかもしれない。また、ステファニーの人柄も滲み出ていた。すっかりブログの読者になっていて、ステファニーのファンにもなったのだと思う。
ファッションだけでなく、フランス・ギャルやセルジュ・ゲンズブールやブリジット・バルドーなどフレンチポップが使われているのもおしゃれ。踊るアナ・ケンドリックも可愛かったが、歌うシーンも本当に可愛かった。自分がイエー!!となってるときに、ギャングスタラップを歌ってるのも可愛かった。
ファッション、特にアナ・ケンドリックがとても可愛くて、それも加味した評価にはなってしまってると思う。でもいい映画でした。
読みやすさ度外視のエンドロールもおしゃれだった。
観終わってからわかったのですが、カタカナ表記のロゴ、“バー”の点々がマティーニグラスになっていた。当たり前ですが日本語独自のタイトルロゴ。ここまでこだわってくれるのがとても嬉しい。
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