『レゴ ムービー2』



度肝を抜かれた前作から5年、まさかの続編登場。あの内容で続けられる?と思ったけれど、ちゃんと続くし、前作必須の内容だった。
監督はロード&ミラーから『シュレック・フォーエバー』のマイク・ミッチェルに変更されたが脚本に携わってもいるし、テイストは変わらず。

以下、ネタバレです。前作のネタバレも含みます。













前作は兄(実写)が作ったレゴの王国に、妹(実写)のデュプロが攻め込んでくる描写で終わったが、本作はその続きである。
妹のデュプロは主人公の王国をめちゃくちゃにする。映画内でエメットたちは戦争を仕掛けられてあたふたしているが、実写側では妹はただただお兄さんに「一緒に遊んでー」と言っているだけなのだ。

前作は後半で急に実写が出てきて、そういう話だったか!と大層驚いたけれど、今回はそういう話なのがあらかじめわかっている。
つまり、エメットたちに起こっていることは、実写の世界で起こっていることだと認識しながら観られるのがおもしろい。
今回はネタばらしではなく、みんなわかってますよね?という視点で進んでいくから、途中途中に実写が混じる。また、実写が混じらなくても、エメットたちに起こっていることを見れば、実写の兄妹がどんな関係なのかわかるという、めちゃくちゃ凝った構成。前作の内容を知っているということを逆手にとっている。ストーリー的に前作の続きだから前作を観た方がいいとは思うけれど、前作を踏まえていない場合はただ単に戦争しているだけに見えるかもしれない。

エメットたちの世界で時が5年後に進むが、これは実写でも5年進んだことを意味する。また、映画自体も前作から5年です。細かい。
エメットのプリントはハゲかけていて、5年の月日が感じられる。5年前の時点でボロボロだったベニーはさらにボロボロに。でもまだ捨てずに持っていた!
エメットたちの世界は自由の女神が崩され、一面砂に覆われ、猫好きのおばさんの飼ってる猫もトゲトゲした武器を付けられていて…という世紀末的な世界になっている。
要は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の世界観なんですが、たぶん、実写のお兄ちゃんがこれを観て影響されている。ゴツゴツした車も出てきた。
その世界にもたびたびファンシーな敵が襲いかかる。要は、作り上げた世界を妹に破壊され続けてるんですね。ミニフィグ(人形)も奪われ続けていたようで、それは、シスター星雲にさらわれたという言い方をされていた。

兄妹は音楽の趣味も違うようで、シスター星雲では“頭にこびりつく”(という歌詞)ポップスが流れている。この音楽に汚染されるとその国に染まってしまう。ベニーは星型のサングラスをかけられ、バットマンは白いコスチュームに変えられる。先にさらわれたスーパーマンやグリーンランタンはキラキラのコーティングになっていた。
星型のサングラスも白いコスチュームも、妹がもっと可愛くしたいと思ったのだろうし、キラキラもマニキュアか何かでコーティングされていた。
ルーシーも黒髪にメッシュだったが、洗うとマジックが落ちて水色とピンクのポップな髪色だった。兄は自分の趣味でゴスっぽくしたんですね。
特に兄妹だと男の子と女の子だし、一緒に遊べないだろうなと思う。

エメットがさらわれたルーシーたちを救いに行くという行為は、兄が人形たちを取り戻す行為である。
エメットにはレックスという味方ができる。彼の宇宙船の乗務員はすべてヴェロキラプトル。レゴのジュラシック・ワールドシリーズについてくるようですが、もちろんエメットのCVがクリス・プラットなので中の人ネタ。レックスもTレックスだったのかな。

エメットは優しすぎるのが難点で、序盤から世紀末的な世界でも前作のオープニングと同じようにコーヒーを買って、♪Everything Is Awesome!と歌っている。デュプロ軍団にもレゴでハート型を作って渡していた。
けれど、ルーシーはそれが気に入らない。もっとタフになってほしいと思っている。
レックスはエメットがタフに育った将来の姿だった。確かにタフでも、乱暴者で、シスター星雲を破壊する。ハートを渡すようなことはしない。
エメットはタフ側に成長しそうになっていて、マジックで無精髭を描いたり、髪型を変えたり、服を変えたりしていた(ミニフィグの上半身がつけ変えられるのを知らなかった…)。しかし、それは実写の兄の成長の方向を意味する。決して妹の世界を受け入れず、人形は取り返し、妹の作ったレゴの世界を壊す。

これは、もしかしたらだけど、自国第一主義とか不寛容社会みたいなものの暗喩でもあるのかもしれないとも思った。自分と意見の合わない世界は受け入れないという風潮に対する抗議でもあるのかもしれない。

でもレゴムービーの世界は根本が兄妹ゲンカのため、すべてを終わらせるのは母である。二人がケンカしている部屋に入ってきて怒り、お約束としてレゴを踏むという…。

兄は一緒に遊びたい妹を受け入れる。二つの世界は融合する。見た目はいびつでも、レゴはみんなで遊べば楽しいね!というメッセージまで含まれている。前作も思ったけれど、ちゃんとレゴブロックというおもちゃに対するリスペクトが一番大きくなっているのが素晴らしい。

『スパイダー・バース』でも思ったが、ロード&ミラーの脚本の巧みさは職人芸になってきてる。テンポが良くて、くすっと笑わせつつも、いくつもの要素を混ぜ込んで、細かいところをついてきながら結局普遍的なテーマに持ち込んで、最後には泣かせるいい話になる。本当に感心してしまう。

エンドロールでは兄妹や兄弟、夫婦など、趣味の合わない二人が作ったいびつなレゴが流れるのも楽しい。キメラみたいになっちゃってるのもあったけど、完璧な世界観を作り上げるだけがレゴではないのだ。なんでもあり。なんでも作れる。

また、エンドロールの歌が、エンドロール待ってました!みたいな曲になっているお遊びもおもしろかった。曲の歌詞の字幕を見るのと、エメットたちミニフィグがレゴで作られているのを見るので忙しかった。そこで、このエンドロール長くない?という歌詞もあったけれど、この後も本当に長くて、さっきのは伏線だったか…と思った。エンドロールで頭にこびりつく曲を流すのもずるい。




0 comments:

Post a Comment