『KOTOKO』


Coccoが主演ということや、子を思う母親の話だとか聞く限りでは、少し不安だったのですが、いつもの塚本節が炸裂しててほっとした。
激しく動くカメラ、耳に突き刺さるような強烈な金属音、そして殴られた顔の大袈裟な特殊メイクなど。塚本監督作品の特徴的な要素がちゃんと入ってます。本人も結構出てる。
また、きっと園子温なら直接的なエロ方面へすすみそうですが、ストイックなまでにそのようなシーンは削られている。それでも、暴力描写がエロティックに見えるのは、塚本監督の手腕でしょう。

主演キャストがCocco以外には考えられない作りになってるので、たぶん塚本監督はCoccoのこと考えて脚本書いたのだろうと思いながら観てたけど、原案がCocco本人だった。だから、わざわざ演技をしているという感じではなく、おそらくナチュラルなCoccoなのだと思う。

細すぎる手足、リストカットの痕と、Coccoは体つきからしてとても不安定であやうく見える。ただ、その少しあぶない面だけでなくて、子どもと遊ぶときに見せる自分も子どもに戻ったかのような愛らしさ、恋をしている甘えたような顔、歌を歌っているときの力強い姿までもを完璧にとらえ、映し出す。これがCoccoのすべてだと思う。カメラは明らかに監督目線で、塚本監督が本当にCoccoのことが好きなのが感じ取れた。

原作を読んで再挑戦。初回は画面作りや俳優さんの恰好良さは申し分ないと思ったけど、ストーリーがよくわからず仕舞いだったけど、今回はおそらく理解できたと思います。

映画は時間の制約があるから仕方ないけど、原作のほうがひとつひとつのエピソードがかなり細かく掘り下げられているし、登場人物も多い。小説を読んだ直後に映画を観たためか、だいぶ駆け足に感じた。でも、映画は原作の雰囲気を損なうことなく、いいとこどりでうまく編集してある。時系列の組み方も原作とは違うけどわかりやすい。監督は原作が好きなんだろうなというのがうかがえる愛のある編集だと思った。
以下、ネタバレです。



ラストの『La Mer』が流れ出して以降は、特に1カット1カットが見逃せない。流れるような編集の巧みさもそうなんですが、俳優さんたちの表情が好きです。サーカスに戻ってきたスマイリー(ゲイリー・オールドマン)とすました顔してすれ違ったあと、こらえきれずにニヤッとしちゃうピーター(ベネディクト・カンバーバッチ)。パーティのはじっこで所在なさげにしているジム(マーク・ストロング)を見つけたビル(コリン・ファース)のほころぶような笑顔。それを見たジムの、少数の親しい人にしか見せないのだろうと思われる気が緩んだ笑顔。サーカス諜報部の、かつてはコントロールが座っていた席に着席して、満足げな表情で周囲を見渡すスマイリー。どれをとってもいい表情でドキドキする。セリフは一切ないのに、見ごたえ十分。



続編『タイタンの逆襲』を先に観てしまったけど、テレビでやっていたので観ました。
逆襲以上にストーリーのぶつ切り具合が目立った。あと、これも3D上映だったはずですが、あまり必要性が感じられず…。家のテレビの2Dで観たせいもあるかもしれないですが。

逆襲を観たときに、黒いペガサスが気になったんですが、その出会いのシーンがあったのは良かった。あと、ゼウスが逆襲ほどおじいさんではなくて、ちゃんとリーアム・ニーソンの顔をしていた。
一緒に行動していたアンドロメダが、逆襲でのアンドロメダと一致しなかったんですが(名前が一緒の別人かと思った)、実際に役者さんも変わったみたい。

メデューサが攻撃するときに、頭のヘビ一匹一匹がちゃんと動いてシャーッてなるのが可愛かった。動きが少しカクカクして見えたのは、ハリーハウゼンリスペクト?とも思ったけど、考えすぎかも。

『クヒオ大佐』


付け鼻で、カタコトの日本語を話してて、顔が日本人で、自分はクヒオ大佐だと名乗る…って、それだけで、ものすごくあやしい。
この結婚詐欺師が映画のためにつくられたキャラクターではなく、実際に存在したことに驚く。

この主人公の具合からいって、コメディなのではないかと思っていたら、結構シリアスな内容だった。でも、電話のシーンでは声を出して笑った。二回とも笑った。

堺雅人の詐欺師はハマり役です。物腰やわらかな語り口と、何を考えてるかわからない、ぴったりとはりついたような笑顔。特に今回は付け鼻と髭のせいで、あやしさがアップしていた。
ハマり役といえば、新井くんはチンピラ役がよく似合います。恰好良かった。『アウトレイジ2』にも出るようなので楽しみ。俳優さん関連では、他に、満島ひかりと安藤サクラの『愛のむきだし』コンビが同僚役で出てて嬉しかった。

『バトルシップ』


おもしろかった! ユニバーサル100周年記念と銘打たれていますが、大作というよりはB級です。深いストーリーは無し。敢えて言うならば、主人公の成長物語なのかもしれませんが、あくまでも“敢えて”であり、とりたてて見所があるわけではなく凡庸。でも、この作品を楽しむためにはストーリーはそれほど関係ないし、むしろ邪魔とも言える。シンプルに、でけぇー!とか強ぇー!だけでいい。このあたりで少し『第9地区』を思い出した。ただ、宇宙人ものでも『第9地区』のほうは互いにコミュニケーションをとったり、悲哀みたいなものもありましたが、そうゆうものも一切ナシ。宇宙人が攻めてきたので自衛隊が迎え撃つ。どっかんどっかん爆発! とてつもない火薬量! 上がる水しぶき! 本当にこれだけ。

主演のテイラー・キッチュは同日に『ジョン・カーター』も公開されている。『ジョン・カーター』のポスターを見て、イケメンはイケメンだけど、地味目かなと思っていたんですが、動いてる姿は破天荒でワイルドなイケメンでした。特に前半の長髪シーンはプロレスラーみたいだった。

この映画の構成で変わっているのが、最初と最後の日常パートと、中盤の戦闘パートの落差です。始まったとき、劇場を間違えたかと思った。アクションバトルものだと思って臨んだのに、最初のほうはギャグを交えた軽いヒューマンドラマでした。潜入シーンでピンクパンサーのBGMはどうなんだろう。ベタすぎやしませんか? チキンブリトーの存在感とこだわりもすごい。戦艦バトル部分とはまったく違う呑気な世界。ど派手なバトルをゆるい日常で挟んでいる。

浅野忠信が準主役だったのに驚いた。『マイティ・ソー』でも、そんなに活躍すると思っていなかったわりにはよく出てたなという印象ですが、今回は欠かせない存在。アレックス(キッチュ)とはライバルですが、そのうちに共闘するという展開も良かった。
ちなみに、序盤の殴り合う手前、アレックスが鏡を見ながら「お前のこと云々」言うシーン、その言葉を聞いたナガタ(浅野忠信)が一瞬、「何を言ってるんだ?こいつ」というようにきょとんとしたあと、言葉の意味に気づいてブチッと切れ、一気に怒りが押し寄せてくる表情の変化がとても良かった。もう一回見たい。
以下、ネタバレです。




お兄さんが戦闘序盤で死んでしまうのが残念です。死んだわりにあっさりしていたので、泣きどころにしたかったわけでもなさそうで更に残念。でも、兄の死を乗り越えてアレックスは成長したのかもしれないけれど、殺す必要あったんでしょうか。特に、前半の誕生日関連で兄弟で楽しそうにきゃいきゃいやってるシーンを思い出すと、本当に残念。あの雰囲気が面白かったのに。ラストで、もしかしたら続編があるのかなという描写がちらっと出てきますが、それでもお兄さんは出てこないんですよね…。

戦艦バトルとは別の部分で、ハワイの陸の上での戦いも地味ながらも意味があって良かった。エンドロールを見ていたら、クアロアランチで撮影してたみたい。実際にハワイだったのか。


試写会。前作未見です。たぶん、前作と話が繋がっているというわけではないと思うんですが、導入部分が唐突というか、大筋が理解できないまま、話がいきなり佳境だったので混乱した。普通の漁村がキメラに襲われていた。世界観を知っておくためには前作の『タイタンの戦い』を観てからのほうが良かったかもしれない。神様と半神、人間との強さ比較もわからなかった。神様は全能なのかと思っていたけど、案外弱い。力が弱っていたせいでしょうか?
トータル99分と短めでもあるので、その辺を筋道をたてて説明している時間はなかったのかもしれない。アクションシーンの連続で、よく言えばテンポ良く進んでいってた。悪く言えば、さまざまな出来事の描きこみが薄め。流れるようなストーリー展開はなく、出来事が一つ一つぶつ切りされていた。

クリーチャーも良くできてそうだったのに、動きが速いのとカメラが手持ちっぽくなるせいで、しっかり写らなかったのが残念。ちゃんと映るのは動きが止まったとき=死んだときでした。生きて動いている姿もちゃんと観たかった。

予告だと巨人との戦いが全面に出されてたけど、巨人はほんの一部しか出てこなかった。タイタンというからには、巨人がボスなのかと思っていた。予告ではマリリン・マンソンの『Sweet Dreams』が使われていたのも良かったけれど、本編では使われなかった。最近、多いですね。

3D映画自体、そんなに本数を観たことがあるわけではないのですが、怖がらせる系の3Dでは一番飛び出していたと思う。いままで、飛行シーンと3Dは相性がいいと思っていたけど、上からパラパラと何かが落ちてくる描写も3D向けでした。

『アーティスト』


モノクロ/サイレントということで、他の映画とは土俵が違うので、比べるのは違う気もしました。サイレント映画自体、それほど観たことがないので、新鮮な気持ちで観られた。でも、内容があまり面白く感じられなかった。アカデミー賞はアイディア賞だったのかなと思ってしまった。もちろん、メイクや衣装やそれっぽい作り、音楽などは素晴らしかったし、犬のアギーも可愛かった。ジャン・デュジャルダンの片方の眉を上げた笑顔はステキでした。
以下、ネタバレあり。





予告を見て、なんとなく、あらすじは推測できた。サイレント映画のスターと、そのスターに憧れるファンの女の子が恋人同士になって、そのうち、サイレント映画の衰退とともにスターが堕落していき、代わりにファンの女の子のシンデレラストーリーが始まり、二人はすれ違い…という感じのものだろうと思っていました。

私は恋に落ちる瞬間を見るのが好きなのです。なので、序盤の映画内映画のパーティーシーンの撮影の場面はとても好きでした。幸せで顔がうっかりほころんでしまい、何度もNGを出しちゃう。はにかんだ二人の表情も良かった。

そのまま、ラブラブで甘々のまま話がすすむのかと思いきや、スターが堕落するのが案外早かった。ラブストーリーではなく、スターが一人で孤独に自分と向き合っている描写が長い。だから、アカデミー賞でも二人がノミネートされたわけじゃなく、ジャン・デュジャルダンのみが主演男優賞にノミネート/受賞したんでしょう。

根本的なことなんですが、まず、主人公が結婚していることに驚いてしまった。それは別に隠された事実ではないのですが、結婚しているならラブストーリーではないのだなと最初に思いました。もっと甘いだけのロマンティックな話で良かったのに。


試写会にて。原題の『Tinker Tailor Soldier Spy』でイギリスで予告が公開されたときからずっと気になっていて、日本での公開をずっとずっと心待ちにしていました。スマートでどこかあやしい雰囲気の予告は何度観たかわからない。邦題が『裏切りのサーカス』に決まったときにはずっこけたけど、もう慣れた。ポスターもしびれるし、トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマンというクリストファー・ノーラン映画に出てる好き俳優は出てるし、コリン・ファースも好き。
期待しすぎた状態で実際に映画を観るとそれほどでもなかったとがっかりすることが多いので、観る前に自分の中であんまりハードルは上げないようにしているのですが、もうこの映画ばかりは仕方ないです。上映前に会場内に流れていたサントラとおぼしきものを聴きながら、期待値を極限まで上げて臨みました。


それで、どうだったかというとすごく面白かった! けど、私が感じた通りの結末で良かったのかどうかわからない!
終わったあと、会場内がざわざわしていました。これは確かに人と話したくなる。気がつけば歯を食いしばっていたくらい、必死になって観てましたが、残念ながら100パーセント理解できた自信はないです。

映画が始まる前にもらったチラシに、“登場人物と相関図と簡単な用語を頭に入れておいたほうが話がスムーズにわかる”というようなことが書いてあったのでたたきこみましたが、これは正解だった。登場人物が多いので、ぼんやりとでもわかっていたほうがいいと思われます。例えば、“コントロール”が人の名前だっていうのも、知らないと字幕を読んだときに混乱するかもしれない。あと専門用語というか韻語…、例えば“サーカス”と言っても、一般的な意味でのサーカスではないということも、知っていると知らないとでは話の頭に入って来方が違うと思う。

あと、現在と過去の断片が行き来する箇所が何度もあって、しっかり観てないと、それがいつなのかわからなくなったりする。でも、この辺はしっかり観てれば大丈夫です。逆に、時系列がパッチワークみたいに組み合わさってる様子が面白かった。

ともかく、頑張って観たけれど、いまいちわからないシーンがいくつか残ってしまったので、原作を読んで改めて観たいと思う。


監督は『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソン。『ぼくのエリ』も、雪に閉ざされた小さな村という閉鎖された空間という、少しあやしくてぞくぞくするような雰囲気が良かった。映像がとても綺麗だったんですが、今作も素晴らしいです。サーカスの幹部室だか会議室だかも作りこまれていた。ツインピークスの赤い部屋を思い出した。

あと、窓枠が一番わかりやすかったけれど、四角いモチーフのものが多く取り入れられていた。そのせいで、硬質で緊迫感のある映像になっていたと思う。線路が切り替わるシーンは鉄がガッキンガッキンな感じで印象的だった。
少しくすんだ色合いは、イメージどおりのまさにイギリス。この辺もそうだと思うんですが、ポール・スミスが関わっているらしい。衣装だけではなく、撮り方、色合い、雰囲気作りまでを担当するクリエイティブ・サポートという役職だったらしい。

最後の締め方も粋でオシャレでした。音楽からのなだれ込み方が最高。

俳優さんもみなさん美しく撮られていました。特に好き俳優三人、ゲイリー・オールドマン、トム・ハーディ、コリン・ファースが色気満載で大満足。もうあの三人の色っぽさだけ観に行ってもいいくらいで、さながらアイドル映画のよう。
ゲイリー・オールドマンの口数少なく冷静でストイックな熟練スパイ役もいいし、トムハはベイン向けの体作りのためかかなり筋肉っぽいですが髪型のせいもあるのか観た映画の中では一番の男前。コリン・ファースは資料見るときだけ細い縁の眼鏡かけるシーンも良かった。ベネディクト・カンバーバッチは予告で観たときにはなんとも思ってなかったけど、この映画で好きになりました。彼は役柄もいいです。

以下、ネタバレ。





観終わった後で、「これとこれがゲイだったんでしょ?」「違うよ、これとこれだよ」って話してる人がいた。おそらくチラシの人物相関図を見ながらの会話だと思われるけど、誰のことを言っているのかはわからず。
私はビル・ヘイドンとジム・プリドーの関係と、もしかしたらピーターも?とも思ってしまった。そもそも誰もゲイじゃなかったのかもしれないと、もやもやしていたところ、「映画ではそうだったけど、原作ではピーターはゲイ設定ではなかった」と教えてもらいました。なんでその設定を追加したのか…。あと、ビルとジムは原作ではもっと恋人同士っぽかったらしい。



試写会にて。休日の昼間だったせいか、お子さんもかなり多かった。普段、お子さんと映画館で一緒になることはないんですが、おもしろい表情や奇妙で大げさな動きにすごく反応よく笑っていました。あと、スクリーンの中の登場人物がワッハッハって笑うとつられて笑っちゃってた。なかなか新鮮な経験でした。

瀬戸内海の島が舞台ということで、背景の書き込みが凝っていて綺麗。フェリーで島へ向かっていく最初のシーンから、島の中の大きな橋、古い家など。行ってみたいと思わせる風景でしたが、実在しない島らしい。モデルになっているのは広島の島だとか。

いわゆる芸能人が何名か声をあてていますが、それほど違和感はなかった。
妖怪(?)三匹は山寺宏一、西田敏之、チョーの三人。山ちゃんの安定したうまさと西田敏之の無難さはおいておいて、チョーさんがすごく良かったです。あんな演技もできるのか。

季節が夏で、ももはタンクトップやらキャミソールやらを着てるのですが、意識してるのかどうかわかりませんが、上からのカメラワークが多いのが気になった。私が意識しすぎか。
以下、ネタバレ少し。








キーアイテムである父からの手紙の内容はもう少し凝っていてほしかったです。凝っていたら泣けそうだったのに、そこで白けてしまった。でも子供向けと考えると、そのあたりもシンプルであったほうがわかりやすいのかもしれない。

『ドライヴ』


最近なにかとよく見るライアン・ゴズリングとキャリー・マリガン。売れっ子二人が一緒に出演してるので旬の映画ともいえるのかもしれない。
ライアン・ゴズリング出演作は『ラースと、その彼女』と『きみに読む物語』しか観てないですが、そのままの印象で観たので驚いてしまった。朴訥とか、良い人とか、ちょっとさえないとか、地味とか、誠実とか、そんな感じの印象だったのが一気に覆された。恰好良かったです。しかも、セクシー。実はなんで売れっ子なのがよくわかってなかったのですが、納得しました。でも、何を考えてるかわからなさみたいなのは継続して同じ印象かもしれない。

『ドライヴ』は、セリフがほとんど排除されてるのが説明くさくなくていい。ぱっと場面が転換してしまう。上映時間が100分と短めなせいもあって、緊張感が持続する。特に、60席程度の小さい劇場だったせいか、誰も音を立ててなくて、いい環境で観られたのも良かった。

セリフが少なくても、題材がシンプルなせいか、話がわかりにくくならないのが面白い。前情報をいっさい入れてなかったので、最初はハンドルを握ると性格がかわる人の話かと思ってたら違いました。一応、クルマ物だけど、『ワイルドスピード』とか『TAXi』みたいなノーテンキなアクション映画とも違う。ムチムチの水着のおねーちゃんが出てきたりもしない。どうも説明しづらい映画ではあると思う。でも語りたくなる映画です。

ライアン・ゴズリング演じる主人公は、必要なことしか言わない謎が多い男ですが、だからこそ、しゃべったときの言葉の重要味が増す。特にエレベーターに乗る前のシーンが印象深く、エレベーターの中での流れるような一連のシーンは本当に恰好良かった。

構成ですが、OPにやりくちを一通り見せるというのはよくあるのかな。『ダークナイト』方式というか。『ブラック&ホワイト』もそうだった。作品に緊迫感を持たせるし、スムーズに話にひきこまれる。

もう一つ、緊迫感があったのは音楽です。硬質で冷たいインダストリアルテクノは少しNINというかトレント・レズナーにも似ていた。これが、最近だと『コンテイジョン』と同じ方だと知って、同じ雰囲気だったのでなるほどと思った。クリフ・マルチネスという方で、レッチリのドラマーだったこともあるらしい。どうりでロック色が強いわけです。


アカデミー作品賞にノミネートされていましたが、これがアカデミー賞をとってもよかったんじゃないかと思うくらいの良作でした。

上映時間が146分と少し長いんですが、その長さを感じさせなかった。丁寧に作ってあるので、この長さになってしまっても仕方がないと思える。
作品中にさまざまな問題が起こるが、それについて、一つ一つ、しっかりと決着をつけていく。その決着のつき方は、単に問題が解消されてめでたしめでたしということだけではないけれど、とにかく決着はつく。一応すべてを回収するので、もやもやしたところが残らずにすっきりする。
また、その決着にそれぞれドラマがあり、そのどれもこれもで泣いてしまった。一つの問題が解決して泣いていると、また次の問題が解決して、ああ、そういえば、そんな問題も…と、感動ポイントがたたみかけるように出現する。散らばったいろんな問題が、映画の後半に集中してきっちりきっちりと終わっていって、映画が終わった後、とても晴れやかな気持ちになれる。


きれいな柄のワンピースやヘアスタイル、メイク、アクセサリーなど、ちゃんと60'Sに作ってあるのも注目すべき点だと思う。どれも可愛い。黒人のメイドさんの話なので、家の中の様子が多く出てくるけれど、家具や車も凝っていて、そのあたりを見るだけでも楽しい。色使いもポップ。ほとんど男性が出てこないのも特徴的でした。

ミニー役のオクタヴィア・スペンサーが助演女優賞を受賞していたり、他にもヴィオラ・デイヴィスが主演、ジェシカ・チャスティンが助演女優賞にノミネートされていたりと、演技の面でも見ごたえがあった。

こうゆうゴリッとした人間ドラマを観てしまうと、この前の週に見た『僕達急行』がとても軽く思えてしまう。あれはあの軽さが魅力でもあるので比べてはいけないかもしれないけど、見ごたえと映画後に残るものがまったく違う。