『大鹿村騒動記』


原田芳雄さんの遺作としても有名になっている本作。撮影がいつだったのかはわからないですが、公開後、まもなく亡くなられたとは思えないほど元気そうに見える。これも演技力なんでしょうか。
“偏屈だけど根は優しいオヤジ”、“望んでか望まざるか集団の指揮をとるリーダー気質の男”といういつも通りの役でよかった。今回は、人の親という意味でのオヤジ(親父)ではないのが少し違う。娘、息子はいないようです。その分、夫婦間の問題や愛に焦点が当てられている。

ベテラン揃いの出演者は、さすがに全員演技がうまい。岸部一徳、佐藤浩市、三國連太郎、でんでん、松たか子、瑛太など。登場人物が多く、それぞれのエピソードが少しずつ出てくるため群像劇の要素もあるけれど、それぞれの描きこみはあっさりしていて、上映時間は93分に収まっている。

奥さんと友人が駆け落ちして…というあらすじを聞くと、ドロドロしてそうな感じもするけれど、そこは田舎の村が舞台のせいなのか、どこかのんびりしていて、おかしみを含んでいる。悪人は出てこず、万引きが見つかっても、「顔見知りだから、金を払ってくれればいいんだけど」といった様子。
後半の歌舞伎のシーンが長いという話を聞いていたけれど、歌舞伎も本格的なものではなく、あくまでも村の人が演じているので、途中でおちゃらけが入ったりするので退屈はしなかった。普通の歌舞伎のようにぴきっと緊張感が持続するわけではなく、観客もにこにこしているし、あたたかな映画の雰囲気を損なうものではない。
一応、すったもんだはあっても、村を追放とか致命的な仲違いはせずに、事件というよりは本当に“騒動記”といった風で、観ていてとても心地の良い映画でした。

原田芳雄演じる風祭善が営業している鹿肉料理店『ディア・イーター』に“大鹿ジビエ”というポスターが張ってあって気になったんですが、実際に大鹿村ではジビエの地域ブランド化に取り組んでるらしい。また、『ディア・イーター』は映画後にそのまま、営業しているらしいです。行ってみたい!


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