『ダークナイト ライジング』(五回目)


気になったシーンをいくつか。
ネタバレです。










苦しいこと(ここでは身近な人の死)を忘れて前に進みなさいという意味で使われていたように思う“move on”。物理的/精神的両方の意味で、一度落ちたところから上にのぼる意味で使われていたように思う“rise”。
一見すると同じ意味のようですが、“move on”がこの場所に留まりたいのに無理やり背中を押されたようなイメージで、“rise”はこの場所から自分の意志で動いたようなイメージだった。
何度か“rise”という言葉が使われていたと思うんですが、一番初めは、ベインのThe fire rises.ですかね。

アルフレッドが出て行った次の朝、家の玄関のベルが鳴って、ブルースが「アルフレッド?」とか言いながら階段下りて行きますが…。あれは、“玄関のベルが鳴ってるのになんで出ないの?”という意味なのか、訪ねてきたの人をアルフレッドだと思ったのか。どちらにしても、自分で追い出したことを忘れちゃったのかな。都合が良すぎる。それだけずっと身近な存在だったってことか。

アルフレッド関連だと、最後の墓場のシーンはブルースの両親の墓に向かって謝罪してた。ブルースに謝っているのかと思ってた。亡くなってもなお、アルフレッドは両親にも仕えていた。両親の代わりにブルースを護っている自覚があったんですね。

アン・ハサウェイの小憎たらしさはどのシーンでも魅力的。ネックレスを盗んだことがバレたときのOops.の表情。「ただし例外はある」と言ってブルースの杖を蹴っ飛ばして窓から逃げるときのスタイルの良さ。場末のバーの襲撃シーンでの「助けて!」と叫んだ後のいたずらっぽい表情。ジュノー・テンプルちゃんが財布盗んだの盗んでないのとワイワイやってるところを助太刀して、ちゃっかり時計まで盗んだときの茶目っけのある顔。ルーシャス・フォックスとの「君みたいなガールフレンドがいたとは」「彼、ラッキーよね」のやりとり。逃げちゃうかもといいながら、ちゃんと戻ってくるところ(でも銃を使ってベインを撃っちゃうところ)。

トム・ハーディというかベインは、大体のシーンでは、演説調の多少芝居がかった煽動口調なんですが、ブルースを奈落へ連れて行った最初の時だけは少し話し方が違う。So easy,so simple.のあたりの話し方は囁くようで色っぽい掠れ声になっている。このとき、マスクを剥ぎ取られたブルースは、動くこともできないし、もう死にかけなので、ベインは下手に威嚇する必要がないと思っているのかもしれない。あまりの弱さを蔑み、見下しているようにも思える。
ベインは立ち上がるときに、ブルースの胸のあたりに手を当てて体重をかける。あえて、そんな相手がみじめになるような簡単な方法で、ブルースに苦痛を与えているように見える。
実際、力の差が歴然なのは、その前の殴りあいのシーンでもわかる。ここは毎回、痛々しく見てられない。単純な肉体的な痛さもあるけど、煙幕のしょぼさもひどい。バットマンの隠し技的なのって、その程度だったっけ?

『ダークナイト』ではジョーカーが脱獄して箱乗りしているシーンが一番絶望的な気分になったんですが、今回は、雪の中、ウェイン産業の隠し武器庫から盗まれた戦車(?)が走るのを上からとらえているシーンで絶望的な気分になりました。静かすぎて、走るときに雪を踏みしめる音だけが聞こえてくるのが不気味。暴動は一段落して、すでにベインの陣営がゴッサムを支配しているのがわかる。

スタジアムの広告は、DoritosとUA.comなど実在の企業でした。プロダクトプレイスメント。

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