アカデミー賞主演男優・女優、助演男優・女優に加え、作品賞、監督賞、美術賞など全10部門でノミネートされています。
実話がもとになっていて、騙すことで何かを成し遂げるというあたりの情報しか入れていなかったので、なんとなく『アルゴ』と似たような話なのかなと思ったらまったく違った。
以下、ネタバレです。





まず、一番最初にクリスチャン・ベイルのぶよぶよのお腹が出てくるんですが、写真を見ていたからわかっているのにその体型に驚かされた。人間はこんなに急に太れるものなの…。
舞台が78年ということで、衣装や家の内装なども見応えがあるんですが、髪型もおもしろい。ブラッドリー・クーパーのパンチパーマ!そして、ジェレミー・レナーのリーゼント!ブラッドリー・クーパーの髪型は慣れたけれど、ジェレミーは最後まで慣れなかった。ちょっとおもしろい感じになっちゃってた。
この髪型や体型などは実際の人に似ているらしいので、実話を元にしているとは言っても、ほとんど実話なのかもしれない。ただ、実際はロザリンは自殺してしまっているらしいので、その点は違う。

他の作品でも観ているよく知ってる俳優さんたちが他では見られない姿をしていて、少しコスプレっぽい感じもする。

姿形だけではなく、演技面も素晴らしかった。これは、演技部門全ノミネート、納得しました。
ブラッドリー・クーパーは感情の起伏がありすぎる役で、デヴィッド・O・ラッセル監督の前作『世界にひとつのプレイブック』にも似ていた。ただ、あれよりも悪意がある。どちらかというと悪役です。
エイミー・アダムス演じるシドニーに切羽詰まった状態でセックスを迫る場面があるんですが、普段のブラッドリー・クーパーならオッケーでもこれはNG。
もちろん、髪型のせいもあると思う。でも、イケメンでなくても演技もできるということをまた今回も証明してみせた。
でも、イケメンなブラッドリー・クーパーも観たかったり…。『特攻野郎Aチーム』の続編、まーだー?

もう本当に全員良かったんですが、ジェニファー・ローレンスも良かった。ちょっとアバズレ風味でしたたかなのはいつものことなんですが、今回は頭があんまり 良くない役。このロザリンが何も考えず好き勝手に行動するせいで、うまくいくものも失敗する。結構苛つきはするんだけれど、なぜか憎めない。
トイレでシドニーと言い合いをしたあとにやけくそと挑発が混ざったキスをし、トイレを出た後にマフィアの胸で泣くという感情の爆発のさせ方が凄まじい。
また、ポール・マッカートニー&ウイングスの『Live and Let Die(死ぬのは奴らだ)』を激しく歌いながら、親の仇のように部屋の掃除をするシーンが本当に最高! 本当にどうしようもないキャラなのに、恰好良くて可愛い。

あと、マフィアの裏ボスみたいな形でロバート・デニーロが出てきて、それはそれは大迫力だった。やっぱりマフィアをやらせると、ひと味もふた味も違う。怖い。おそらくカメオ扱いでしょう。本領発揮というか、いきいきしてた。
よく考えたら、デニーロも『世界にひとつのプレイブック』にも、アメフト好きのお父さん役で出てきていた。

観終わったあとだと、丸くおさまるし爽快でおもしろかった!と思えるけれど、序盤は途中まで何の話なのかわからなかった。喋るシーンが多いので、字幕を読むのに精一杯で展開についていけなかった。事態の把握ができなかった。英語ができたら良かったのに。
また、シドニーが途中で正体を明かす場面、イギリス訛りをとるのもいまいちわからなかった。英語のみで、英語を聞き取ることに一生懸命になってたら気づいたかもしれないけれど、日本語字幕があると読んでしまい、英語はほとんど聞いていないのがよくわかった。

序盤の展開のわかりにくさとは別の話ですが、詐欺が題材なので、誰が誰を騙しているのかがわからない点はおもしろい。

ジェレミー・レナーが演じている市長も、少し金に対してはだらしない面があったものの、市民のためを思ってのことだった。誠実さのかたまりのような人物で裏があるかと思いきや、真っ直ぐな人物だった。アーヴィン(クリスチャン・ベイル)のことも信頼しきっていた。悪徳政治家とは言えないと思う。だから、パンフレットに載っていた肩書きが“汚職政治家”なのはちょっとどうかなと思う。
ジェレミーはアカデミー賞にノミネートされていないし、そんなに話題にもなっていないけれど、演技はうまかった。いつもとは雰囲気の違う役だったので難しかったと思うけれど。好きだから贔屓目で見ているかもしれないけど、良かったと思う。

エイミー・アダムスについても、所謂、不二子ちゃんポジションなのかと思っていたけれど、違った。
はっきりいって、シドニーのような美人がアーヴィンのようなハゲでデブな男を本当に好きになっているとは思っていなかった。
リッチー(ブラッドリー・クーパー)のことを本当に好きになって、結局、男二人共を出し抜くのかと思っていた。
しかし、彼女は最後までアーヴィンのことが好きだったし、最後まで観れば、観客である私たちもアーヴィンのことが好きになった。シドニーが好きな気持ちがわかったのだ。
これは、ストーリーがそう作られているのか、クリスチャン・ベイルの演技力なのかわからない。両方かもしれない。

結局はアーヴィンとシドニーのラブストーリーだったのだ。
最初は誰に感情移入していいのか、誰の側で観たらいいのかがよくわからなかったけれど、二人を中心にすれば良かったのだ。

その視点の固定とイギリス訛りに注目して、本当はもう一度観に行きたいところですが、この先、公開作が目白押しなので行けなそう…。


2005年公開。ベドロ・アルモドバル監督作品。DVDジャケットのまるで少女漫画のようなコテコテのデザインが気になって観ました。

監督の半自伝的な作品、とのことですが、映画の中で更に映画を撮っているため、何重構造にもなっていておもしろい。映画監督をしているエンリケの前に、幼馴染みであり初恋の相手であるイグナシオが脚本を持って十数年ぶりに目の前に現れて…といった内容。

脚本の内容は序盤は過去のことで自分も知っている内容で、気持ちの吐露とともに、恋愛が再燃するラブストーリーなのかと思っていた。もしくは、大人になった二人で、幼い頃に苦しめられた神父をやっつけにいくのかと。どちらにしても、二人は幸せになると思っていたんですが、そんな単純な話ではなかった。

途中で、脚本を持ってきたのがイグナシオではなく彼の弟だと発覚する。しかも、イグナシオはすでにこの世にはいないということもわかる。
その時点でも哀しかったが、イグナシオのふりをした弟が主演の映画を撮り終わったあとで明かされる事実がまた哀しい。
構造、ストーリーともに、一筋縄ではいかないところが好きでした。

脚本を読んでエンリケが想像しているのは、イグナシオの弟の女装している姿で、それは案外似合っているというか、普通に綺麗だったりするんですが、現実のイグナシオは女装をしていてもそれほど綺麗でもないし、ドラッグ中毒で痛々しくもある。エンリケは結局、姿を実際に目にはしていないけれど、頭で思い描いている現在のイグナシオは綺麗な姿なんですよね。事実を知ったほうがいいのか、知らないほうがいいのが。

最後に後日談が文章で出るんですが、エンリケの部分が“彼は情熱をもって映画を撮り続けている”という風に出て、しかもpassionの文字が大写しになって終わるんですが、これはまさしくアルモドバル監督自身のことなのだろうなと思った。

イグナシオ役のガエル・ガルシア・ベルナルは時々名前を聞くんですが、エンリケ役のフェレ・マルティネスは初めて聞きました。スペインの俳優さんに詳しくないので、そりゃそうなんですが。若い頃の吉井和哉を縦に伸ばした感じというか、玉木宏にちょっと似ている。『バッド・エデュケーション』以降の作品は日本公開されていないようです。残念。

あと、『アイム・ソー・エキサイテッド!』のオネエCA役だったハビエル・カマラが出ていた。女装したイグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナルのほう)のお友達役。どうやら、アルモドバル作品の常連さんらしい。


おもしろかったけれど、おすすめはしにくい。飛行機内トラブルですったもんだの密室劇。ペドロ・アルモドバル版『ハッピーフライト』…なんていうと耳ざわりがいいんですが、『ハッピーフライト』のほうが話は良くできているし、誰もが安心して楽しめる。
R-15になっていましたが、実際はもっと年齢制限高めに設定したほうがいいような感じがします。下品さが多少エグめだと思う。その明け透けな感じがゲイゲイしくもある。

以下、ネタバレです。







カメオとしてアントニオ・バンデラスとペネロペ・クルスが最初に出てくる。以降は飛行機内でのワンシチュエーションコメディなので、カメオとして出すなら冒頭しかないでしょう。ちょっとしたシーンですが、まあまあ重要な役割だし、やっぱり有名人二人は華やか。

以降はずっと飛行機内、しかもビジネスクラスとコックピットだけです。エコノミーの人たちとオネエCA三人以外の普通のCAの人たちはクスリで眠らされている。ストーリーを作る上で都合が良すぎるという気もしますが、もう細かいことを考えて観る映画でもないので気にしない。ちなみに、最初に“これは実話ではないです”というテロップが出ます。そりゃそうだ、ということが次々起こる。

乗客たちと機長、副操縦士、CAたちそれぞれのドラマなので、群像劇といえば群像劇。だけれど、非常事態とはいえ、地上と電話で繋いで話を展開させるのも、もっと何かあっただろう…と思ってしまう。話の持って行き方があまりうまくは感じられなかった。

また、メスカリンを用いて、セックスをしてすべてが丸く収まるというのも、どうなんだろう。飛行機が無事に着陸できるかできないかという危機的状況は感じられなかった。それは全編を通してだけど。まあ、危機的状況だからこそ、セックスなのかもしれないけれど。別に隠れたりすることなく、ビジネスクラスのシートの上で二組がセックスしている図はなんかもうシュールにも見えた。

無事に着陸できるかどうか、その瞬間を映さないのはもちろん予算の関係もあるんだとは思いますが、誰もいない空港内を映しながら、外の音だけ流すという手法がとられていた。映像にない部分は観客の頭の中で補わせる。性行為のシーンでも、誰一人裸になっていないんですよ。それでも、明らかに、“している”のがわかる。
ラストも同じですよね。泡がもこもこ動いていて、副操縦士の帽子がひょいっと投げられる。絡みは見えなくても、ストレートではなくなってしまったね、というのがわかる。

そして、雲の上でトラブルはあったけれど、結局みんなパートナーを見つけることでハッピーエンド。飛行機が無事に着陸できたことはなんとなく二の次で、登場人物がそれぞれ大切な人といちゃいちゃしている。それこそが、生きている実感なのかもしれないけれど。とにかく、全員が幸せそうな終わり方なので、細かいことを言わなければ、後味も最高です。楽しめました。私は。

タイトルにもなっているポインター・シスターズの『アイム・ソー・エキサイテッド』に合わせて三人のオネエCAが踊るところが一番の見所であり派手なシーンだと思う。三人とも本業では?と思うくらいキレのあるショーパブのようなダンスを繰り広げるんですが、少なくとも、聞かれるとなんでも喋っちゃうCA役のハビエル・カマラさんは俳優さんなので本業じゃなかった。スペインの俳優さんに詳しくないのでわからないけど、他の二人もたぶん本業ではないんでしょう。ちなみにあのダンスはブランカ・リーという振付師の方によるものらしい。ダフトパンクやビヨンセの振り付けをやっていたり、去年は明和電機ともプロジェクトをやっていたみたい。


2006年公開。園子温監督作品。最近では血がどばどば出たり、はっちゃけた感じが売りっぽくなっているけれど、こちらは純粋な青春もの。
でも、『愛のむきだし』や『みんな!エスパーだよ!』も青春ものだし、それらにあったアクの強さこそ抜かれているものの、もともと青春ものがうまい監督なのではないかと思う。
また、荒井由美の『翳りゆく部屋』がテーマ曲みたいになっているけれど、みんなで歌うシーンで歌詞を出す演出などは、いかにも園子温っぽかった。

5年前に所属していたクラブの先輩が事故死をして、それをきっかけにメンバーが久しぶりに集まる。青春の忘れ物を回収して、完全に終わらせるといったストーリー。
主演は『みんな!エスパーだよ!』で全裸になってた深水元基。この辺から園子温とのつながりがあったとは。
他にもいしだ壱成や安藤玉恵や長谷川朝晴などが出ています。

ライティングなどは安っぽく、映画というよりはテレビドラマのような感じだった。ただ、気球に傾倒する村上先輩の部屋にたくさんの風船が浮かんでいる様子や、巨大なバルーンの中での飲み会など、画は普通のテレビドラマでは出てこない。
また、バルーンに近づいてくる美津子をバルーンの内側から撮って輪郭をぼやかしたり、ラスト付近でみどりに話す美津子をずっとカメラがとらえていたりと、カメラワークは凝っている。特にラスト付近のシーンは美津子を演じる永作博美の演技が素晴らしく、あの表情をじっととらえているのは自分もその場にいたかのような気分にもなって効果的だと思った。
永作博美はどのシーンでも魅力的に撮られていた。序盤の悪女っぽさ、村上のことを好きな普通の女の子っぽい可愛さ、自分のことを見てくれていない苛立ち。最初は何考えているかわからない謎なところが魅力だけど、最後まで見ると、とても人間くさいのがよくわかるし、ラスト付近のあの撮り方のせいで、感情移入までしてしまった。

それと同時に、そんな美津子のことが好きだった二郎の気持ちも伝わってきた。最後に手紙をつけた風船を空に放つことで完全に過去の気持ちと訣別したのだろうと思うし、青空に飛んでいく風船を映したあのラストは、切ないながらも晴れやかな気持ちになった。


2011年公開。なんとなくシリアスで暗めの夫婦の危機っぽい話かと思っていたんだけど、わちゃわちゃしたロマコメでした。スティーヴ・カレル主演という時点で気づくべきだった。あと、『ラブ・アゲイン』という少しロマンチックなタイトルよりも『Crazy, Stupid, Love.』という原題のほうが合っていると思う。登場人物の多い恋愛群像劇。群像劇好きなので楽しかったです。ある夫婦の間に入った亀裂がきっかけとなって物語が動き出す。
監督は『フィリップ、きみを愛してる!』のグレン・フィカーラとジョン・レクア。音楽がニック・ウラタさんなのも一緒。ニック・ウラタさん、『ルビー・スパークス』もそうでした。

スティーブ・カレルの他にも、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジュリアン・ムーア、ケヴィン・ベーコンなどが出ている。
特にライアン・ゴズリングはただでさえ色男なのに、それが色男を演じていたので迫力があった。最初にスティーブ・カレル演じるキャルと外で待ち合わせをした時のキメたスーツにサングラス姿はさすが。日中のショッピングモールにあんな人がいたら目立つ。現れたキャルがよれよれのポロシャツに汚いスニーカーなのがまた。それで、ジェイコブ(ライアン・ゴズリング)のほうが先に来ているあたりも、これはモテる。キャルはナイロンにマジックテープのバリバリいう財布を持っていて、誰が見てもわかるモテないアイコンとして登場する。
その彼をジェイコブが育てていくというちょっとした『マイ・フェア・レディ』のような序盤でした。
一箇所、バーでキャルの話を聞いていたジェイコブが、困ったようなでも仕方ないなという表情と、ほれみたことかみたいなしてやったりの表情と、笑っちゃいけないでも笑っちゃうという表情が混ざったような顔で楽しそうににまにまするシーンがあるんですが、そこのライアン・ゴズリングが本当に素敵で、私の隣りに座ったゴズリングが話を聞いてあんな笑顔を見せたら…と考えるだけでドキドキしました。

百戦錬磨のようなジェイコブがエマ・ストーン演じるハンナと恋に落ちるシーンが良かった。彼の家に行って、「一発やる!」と言いながらも、照れのあまり、通販で買った枕やマッサージチェアの話など、色気のない話をべらべら話すあたりがリアル。また、ここまで気取ったイメージだったジェイコブの内面が見える。これ以降、人間味が出てくるのもいい。

キャルが妻と別れそうになり、モテて見返そうとすったもんだするのと、ジェイコブの恋を軸にして、周囲でも細かい問題が起こっている。
キャルの息子はベビーシッターに恋をしていて、そのベビーシッターはキャルに恋をしていて、キャルの妻は同僚に言い寄られていて、キャルが寝たのは息子の先生で。
更に、ベビーシッターがキャルを悩殺しようと撮影したヌード写真が親にバレて、ジェイコブと付き合ったハンナの親がキャルで。

キャルが復縁を持ちかけようと、庭にパークゴルフを作って、妻をもてなすシーン(ここでキャルが用意したBGMがSpandau Balletの『True』なのも古くてそれっぽい)で、全員がぶつかり合う。
それは恋愛だけじゃなく、娘を想う父親の気持ちやキャルを思って妻の浮気相手を殴ったジェイコブの気持ちも含まれているけれど、大切な人を大切に思うことには変わりがない。みんな好きな人に一生懸命で、それはかなったりかなわなかったりだけれど、あのシーンは切なさよりも滑稽さが勝る。笑ってしまうけれど、それだけではなく、全員の一生懸命さが伝わってきて、少し泣けるし、登場人物がみんな大好きになった。


2002年公開。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の続編。ただ、続編とはいえ、レスタトがトム・クルーズじゃない時点でもうあんまり続編の意味もないような気もする。ブラッド・ピットやクリスチャン・スレーター、アントニオ・バンデラスも出ません。中の人が出てないだけでなく、登場人物もレスタト以外は変わってます。
時代も現代なのでだいぶ雰囲気が変わっている。続編とはいっても、前作を期待してはいけない。

レスタトを演じているのはスチュアート・タウンゼント。なんで名前に覚えがあるのかと思ったら、たぶん、『ひかりのまち』に出ていたから。『ひかりのまち』のナディアが知り合うあやしい遊び人風のカメラマンですね。

レスタトが現代でバンドを組んでいてロックスターになっているのですが(この辺からして設定がなんかおかしいんですけど、これも原作通りなのかな)、それがゴスバンドなのがいかにもという感じ。そして、挿入歌含め、レスタトがライブで披露する曲や、エンドロールで流れる曲など、KORNの曲が多く使われていた。エンドロールに5、6曲クレジットされていたようでした。
ライブシーンは、あれはスチュアート・タウンゼントが歌ってたのかな。ジョナサンの歌い方をだいぶ真似ていたので、たぶんあれもKORNの曲なんだと思っていたけど確認はしていません。

そのライブに来ているのもゴスキッズたちで、模造斧とかドクロのマラカスとか持ってきていて、これもいかにもな感じでした。

バンドと、レスタトと人間の女の子の恋が主題となっていそうで、お耽美でもないし、普通の青春映画のようでした。ただ、やっぱり血を吸うシーンはブラジャーの肩ひもの見せ方などはわざとらしくはあったけれど、エロティックに見せようとはしていたし、恰好良かったです。ヴァンパイア映画の良さは一応はありました。

ただ、あの『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の続編を名乗られるとちょっと。たしかに原作で次の話を映画化したんでしょうけど、まるっきり別物。

女の子がロンドンの子だったし、主演のスチュアート・タウンゼントがアイルランド出身なので、イギリスが作っているのかと思ったらアメリカだった。
あと、翻訳がアンゼたかしさんでした。


2012年公開。実話で主人公のケンプと主演のジョニー・デップが友達だったんだったかなと思いながら観ていたんですが、そうではなくて、原作者のハンター・S・トンプソンとジョニー・デップが友達だった。ハンターの家に遊びにいった時に、ジョニーデップが原稿を発見して出版することになったらしい。ただ、別のところを見ると、この『ラム・ダイアリー』はハンターの自伝小説とも書いてあるので、ケンプがハンターということでいいのかも。映画の最後の“あなたがBUSTERSなら、彼はあなたの敵になるだろう”という一文も実話っぽくしてるだけかなと思ったけど違うのかも。
ハンター自身は2005年に拳銃自殺で亡くなっていて、映画の最後にはIN MEMORYSという書き出しとともに彼の名前が出る。

公開時の評判はいまいちだったように思うんですが、地味ではあると思うけど、そんなに言われるほど悪くはなかった。ジョニー・デップファンが飛びついても拍子抜けするのかも。ただ、上記の理由で主演はジョニー・デップ以外あり得ないでしょう。

ラムが大好きなジャーナリストが酔っぱらって…みたいな宣伝文句を聞くと、なんとなく『ラスベガスをやっつけろ』みたいなラリラリの幻想的なもうファンタジーともいえるような映像満載なのかと思ったけれど、そうではなかった。酔っぱらった描写も出てくるけれど、それもわりと地味目。フードのラストオーダーが終わった店で酔っぱらって「ステーキを出せ」としつこく言うシーンがあるんですが、それも地味なわりに長い(ちなみに、『ラスベガスをやっつけろ』もハンター・S・トンプソンが原作らしい)。
タイトルにもなっているラムを飲むシーンも多いけれど、それほどハメをはずした飲み方をしていない。常に酔っぱらってはいても、正義感にあふれた、しっかりしたジャーナリストとして描かれている。話が思っていたよりもちゃんとしているので、その辺をどう見るかによると思う。破天荒さを期待しているとだめだと思う。

笑いの要素も地味だけれど、これについても嫌いじゃない。壊れた車を運転するシーンと、祈祷師のシーンでくすっとしました。

ラムということで、プエルトリコが舞台なんですが、街並や海などの風景や住んでいる人などが見られて、その辺も良かったと思う。また、話の中で、闘鶏が重要な位置を占めているのですが、闘鶏はプエルトリコでは合法で、テレビ中継もされているほどポビュラーなスポーツらしい。そんな文化を知ることができたのもおもしろい。

最近、ジョニー・デップと婚約したと報じられているアンバー・ハードが出ている。よくいるセクシーアメリカンセレブ美女みたいな感じで、それほど魅力的ではなかったけれど、アーロン・エッカート演じるハルと別れたあとは清純っぽい服装になって、それは可愛かった。けれど、それほど魅力的ではないのは変わらず…。映画を観た限りでは、どこに惹かれたのかはわからなかった。

『大脱出』


シルヴェスタ・スタローン主演。ポスターやCMだと、アーノルド・シュワルツェネッガーと二人の主演っぽい印象でしたが、観てみると、シュワルツェネッガーはどちらかというと、共演止まりだった。
あと、『パーソン・オブ・インタレスト』のリース君ことジム・カヴィーゼルが出ているので、個人的にはそれを楽しみに観に行きました。

大脱出というタイトルからして、二人が協力して脱獄するのかなとも思ったんですが、まあ大筋はそうなんですけれど、単純なプリズンブレイクではなかったです。
予告編やポスターにちょっとした部分ですがネタバレがあるようなので、なんの情報も仕入れないまま観に行ったほうがおもしろいと思う。一応、どんでん返しみたいなのもありました。

以下、ネタバレです。







最 初、簡単な脱獄シーンから始まるんですが、それを使って早めに状況説明をするのがうまいと思った。あらゆる方法で脱獄を試みて、刑務所の弱点を指摘する人というのはなかなか新しい。また、危機管理に対する本も執筆しているというのは、ちょっとスタローンのイメージとは違ったので最初から騙されました。

本を出しちゃうくらいだから、スタローン、頭がいい役なんですよ。途中、受刑者の眼鏡を用いて、六分儀を自作しちゃう。それで、船の位置を調べるという…。また、コンピューターにも強いみたいだった。
もちろん、アクションもこなしているんですが、同時に博識で頭脳派でもある。この辺が少し違和感があった。

ただ、スタローンがオールマイティなせいで、シュワルツェネッガーの活躍どころがあんまり無かったのが残念。もっと半々くらいで活躍してくれても良かったのに。それか、二人の共演が売りならば、もう肉弾戦だけで良かったような気がする。頭脳についてはそれ専用のメンバーを入れるとか。『007/スカイフォール』のQみたいな感じの。筋肉と対照的なメンバーとして、あのベン・ウィショーのような細っこい眼鏡の若者みたいなのがいると良かった。
それか、スタローンの所属している組織のやり手の女性とコンピューターに詳しい男性がいたので、彼らが後方支援にあたれば良かったのに。彼らは結構キャラクターがはっきりしていそうだったのに、出番が少なかった。まあ、どこにあるかも不明な監獄が舞台だったし、外部との通信は遮断されていたので仕方が無いか。

この監獄が海に浮かんでいる巨大フェリーみたいなのだったんですが、これ、観ていたらそこそこ驚く場面なんですけど、予告編やポスターだとこの事実がバラされているらしい。中盤より少し前くらいにもう明らかになることなので、それほど重大事項というわけではない。でも、この監獄の場所はどこなんだろうと思いながら観ていて、この事実がわかったときに、外に出たところで逃げ場がないじゃないかと絶望する感じとか味わえないのはもったいない。

ただ、船の中の閉鎖空間というと、『キャプテン・フィリップス』を思い出すんですが、あちらのほうが描き方や撮り方や演出などの面で数段上だと感じた。緊迫 感がまるで違ったのはなんでなんだろう。『大脱出』のほうは海上で逃げ場が無いにしても、内部はわりと広々としているからだろうか? それか、いまいちリアリティがないから、緊迫感までは伝わってこなかったのかも。

シュワルツェネッガー、出番は思ったよりも少ないんですが、髭が生えているのと、ほわほわっとしているけど明るいムードメーカーっぽさが良かった。なんだかんだで、スタローンの言いなりなのも良かったし、いいキャラクターでした。確か予告で“敵か、味方か”みたいなことを言われていたけれど、敵らしいそぶりはまったくなかった。
また、監獄内で監視されてるから仕方ないんだけど、体の大きい男性二人が身を寄せ合ってひそひそ話をしているのは可愛かった。

あと、やっぱりジム・カヴィーゼル。『パーソン・オブ・インタレスト』ではすべてを諦めたような目をした世捨て人風だけれど、今回の悪役はイキイキしていた。二人を徹底的に貶める役です。喜々として演じていて、目もキラキラしていたので、PoI出演時よりも若く見えた。よく笑うのも可愛い。リース君はニヒ ルな笑顔しか見せないけれど、ちゃんとした笑顔が見られて良かった。ちゃんとしたとは言っても、悪役なので悪い笑顔です。リース君のときよりも細身でキチッとしたスーツもよく似合ってた。

わりと死人の多く出る映画だったので、観ている途中で、もしかしたらジム・カヴィーゼルの死体姿も見ることになるのか?と思ったけれど、爆死だったのでなんというかほっとした。他の作品とは言え、リース君の死に際は見たくない。


こちらも去年の見逃し案件。『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督。音楽もエンニオ・モリコーネ。役者さんの演技や調度品などの美術も上質で、観ていてうっとりするミステリー。

以下、ネタバレです。






まず、ジェフリー・ラッシュ演じる主人公であるオークショニアであり美術品鑑定士が、人間不信ぽかったり、手袋をはずさなかったり、家の中に女性の肖像画のみを集めた秘密部屋を作っていたりと、偏屈を通り越して変態なのがいい。しかも、裏で安く絵を落札していたりとやっていることもあやしい。

そんなちょっと変わった主人公の元に、鑑定の依頼が来るところから物語が始まる。

両親が残した巨大な屋敷とそこに残された美術品や絵画の数々。そして、依頼人自体は姿を見せない。もう主人公に輪をかけてあやしいし、不気味。
ここから、ジェフリー・ラッシュ演じるヴァージルがこの屋敷の謎を解いていく、探偵ものになるのかと思った。

途中までは確かに探偵ものだった。姿を見せない依頼人は電話の声からすると若い女性。家を訪ねていくうちに、実は部屋にいることがわかったり、少しずつ謎が明らかになる。
それと平行して、地下室にはまた別の謎の部品が落ちていて、それを機械修理店に持っていくと、オートマタ(機械人形)の部品だと判明、少しずつオートマタも出来上がっていく…。

いろんな要素がつめこまれていて、謎が解かれていく様子にぞくぞくしながら観ていたのだが、女性が姿を現して以降、話の流れが変わる。

姿を隠しているときには好奇心のほうが強かったように思うが、顔を合わせて以降は、気づいたら老紳士のラブストーリーになっていた。
ヴァージルは人嫌いだから、どうしていいかわからず、機械修理店の青年に恋愛相談をする。プレイボーイだから、その辺に詳しいんですね。

オークショニアであり美術品鑑定士は恋する老紳士になり、機械修理店の青年は恋を相談される友人になり、謎めいた依頼人は憧れの女性になる。最初の肩書きめいたものがすり替わって、ヴァージルはもじもじしているし、もうストーリーのあやしさや不気味さがなくなってしまう。
そして、結局恋が成就して、ヴァージルの家に一緒に住むことに。ヴァージルの家を案内していて、屋上にさしかかった時の明るく安っぽさすら感じる太陽光。ああ、これでハッピーエンドなんですね。めでたしめでたし。

な、わけはなかった! 作り物の世界から一気に現実へ。いや、現実なんてもんじゃない、天国から地獄へ。
あそこまでやる必要はなかったのではないかと思うくらい残酷ではあるけれど、あのまま終わらなくて良かったと思うし、自業自得的な面もある。

ラストシーンでヴァージルが訪れる店『ナイト&デイ』の内装が歯車をあしらったもので、美術的にもとても恰好良い。
テーブルに一人で座るヴァージルを真ん中に置いてのショットは、序盤でレストランで一人で食事をしていた時のショットと同じなのが気になった。ただ、最後のショットでは手袋をはずしているし、人を待っていると言う。カメラが引いていくので、まるでヴァージルが歯車の中に埋もれていってしまうようだった。美しいです。

ジェフリー・ラッシュ、全体的に好きだったんですが、特に好きだったのは、オークショニアの仕事をしている時です。張りがあって、独特の調子もうまく、恰好良かった。良い声。
ただ、まだ62歳なことに驚いた。もっとおじいさんなのかと思ってた。役の上でもおじいさんの話だと思っていたけれど、たぶん、もっと若い設定だったんだろう。


1976年のF1グランプリを中心にした実話。
以下、ネタバレです。




観終わって一番最初に思ったのは漫画っぽい!ということで、これが実話だという事実がなにより一番すごい。
ジェームス・ハントとニキ・ラウダという人物が生き方がまるで逆。そして、それが走り方にもちゃんと出てきている。女好きで奔放なジェームス・ハントは運転も荒い。かたや、堅実なニキ・ラウダは運転も細かく計算されている。
ライバル関係でありながらも二人の間に友情もあったというのは、このように全ての部分でまったく正反対だったからなのだろう。お互い、自分にない部分に惹かれたのではないだろうか。


そんな二人が同じシーズンに走っているのがすごい。そして、ニキ・ラウダが怪我をして、全身火傷から数週間後に復活して4位になったというエピソードもすごいし、怪我で離脱中にポイントを稼いでいたジェームス・ハントが1ポイント差でなんとかシーズン王者になったとうのも劇的すぎる。もう本当になにもかもが漫画のようなのだ。

おまけにジェームス・ハントは45歳で亡くなったというのもまた彼らしい。ニキ・ラウダはまだご存命とのこと。
二人の生き方のどちらが正しくてどちらが間違っているとかではないのもいい。

映画を観たあとで二人の人物像や1976年のグランプリの様子を見てみると、本当に映画の通りで、ほぼ実話なのに驚く。こんなドラマ性のある話が実話とは。

ジェームス・ハントとニキ・ラウダを演じている二人が良かった。
ジェームス・ハントを演じたクリス・ヘムズワーズがハマり役。なんとなく、筋肉一辺倒な印象があって、私の中ではチャニング・テイタムと似たイメージなんですけれど、チャニング・テイタムよりも、胸筋が平らでいい。チャニング・テイタムのほうが胸筋がもこっとしてて、むきむきしている。クリス・ヘムズワーズのほうが体つきが精悍で、F1レーサーっぽい。
ニキ・ラウダ役はなんか見たことあると思ったらコッホ先生のダニエル・ブリュール。特徴ある顔で気になる俳優さん。

何より、二人とも実在のご本人たちにそっくり。これほど実話寄りの話となると、似ている配役になっていることも映画の重要なポイントの一つになると思う。
私は知らない話だったけれど知っている人にとっては似てない人が演じても興ざめするだろうし、このキャスティングなら納得してもらえるのではないか。


去年観ようと思っていて、迷っていたら結局行けなかった映画。最初は興味がなかったんですが、予告から連想されるような家族を思う感動ものでは無いという点(『ワールド・ウォーZ』を思い出す)と、最近発表されている賞レースにノミネートされているという点で徐々に気になってきました。
よく考えたら、ボーンシリーズの監督、ポール・グリーングラス監督なんだから、簡単な感動ものなんて作ってくるわけは無かった。観終わったあとでは、“勇気だけが彼の云々”というキャッチコピーがひどく安っぽく感じられる。

以下、ネタバレです。








家族感動ものどころか、原作よりも家族のエピソードが削られているらしい。確かに最初の数分、フィリップスを送り出すシーンと、途中でフィリップスが家族へ手紙を書こうとするシーンが少し出てくるくらいだった。
原作というか、実話を元にしているので、手記のようなものが元になった伝記映画です。

映画のほとんどが船上でのシーン。最初は大きいコンテナ船、後半は狭い救難船。
まず、船に乗り込んでくるのを阻止するために針路を変えたり波を起こしたり偽の通信をしたり放水したりと、様々な手口が見られるのもおもしろい。レーダーでどんどん近づいてくる海賊船の様子はドキドキするし、もうこの先ずっとそうなんですが、海の上だから基本的に逃げ場がなくて、緊迫感がラストまでずっと続く。

海賊が乗り込んできてからも、見つからないように隠れたり、罠を仕掛けて陥れたりと、ここでの手口も見応えがあった。撃たれる直前で海賊側のリーダーがストップをかけるシーンも緊張したし、乗務員が隠れている最下層へいくのをなんとか阻止しようとフィリップスが機転をきかせるシーンもヒヤヒヤした。

結局、フィリップスだけが人質にとられ、海賊と一緒に救命ボートに乗るんですが、もう後半はほとんどその狭い中での話になる。風景があるわけでもない。海賊とフィリップスの駆け引きめいた会話と一触即発感がラストまで続く。外にSEALsがひかえていたりもするが、救命ボート内はますます緊迫していく。
SEALsの皆さん恰好良かったし大活躍だったんですけれど、予告でまったく海軍のことは出てきてないんですよね。もっと海軍をフューチャーしたら観る層が違ってきてたんじゃないかと思いますが、まったく予告に出てこなかったということは、たぶん意図的に海軍関係のシーンは抜かれたんだろうし、海軍好きな層へのアピールは必要なかったんでしょうね。

ラスト、突入されてからのトム・ハンクスの演技が素晴らしかった。目隠しをされているのですが、銃声だけが聞こえ、返り血を浴びて、必死に目隠しをとって目に飛び込んでくるのが、先程まで一緒に話していた海賊たちの死体。
救助されてからも、機械的に身体検査をされて、質問にもうまく答えられない様子の演技が本当にすごい。助けられてもちろん安堵感はあるのだろうけれど、それだけではなく、まだ恐怖が続いているような表情。そして、短い時間とはいえ閉鎖空間に一緒にいた海賊たちの話を聞いて、彼らの境遇に同情めいたものを感じて始めていて、でもその彼らが目の前で殺されたことでの複雑な心中。しかし、撃ってくれなければ、自分が撃たれていたかもしれないという状況。わかってはいるけれど、理解ができない放心状態と、でもやっぱり安堵感が少しだけ勝っているというようなあの表情はちょっとなかなか見られるものではない。あの表情で何もかもを語っていた。助けられても、笑顔はまったくなかった。
トム・ハンクスの映画をそれほど観てきているわけではないけれど、あんな演技をする人だと思っていなくて、去年のイベントで戸田奈津子さんが言ってた“すごい人格者”という話も相俟って、なんとなくトム・ハンクスファンになってしまった。