『ラブ・アゲイン』


2011年公開。なんとなくシリアスで暗めの夫婦の危機っぽい話かと思っていたんだけど、わちゃわちゃしたロマコメでした。スティーヴ・カレル主演という時点で気づくべきだった。あと、『ラブ・アゲイン』という少しロマンチックなタイトルよりも『Crazy, Stupid, Love.』という原題のほうが合っていると思う。登場人物の多い恋愛群像劇。群像劇好きなので楽しかったです。ある夫婦の間に入った亀裂がきっかけとなって物語が動き出す。
監督は『フィリップ、きみを愛してる!』のグレン・フィカーラとジョン・レクア。音楽がニック・ウラタさんなのも一緒。ニック・ウラタさん、『ルビー・スパークス』もそうでした。

スティーブ・カレルの他にも、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジュリアン・ムーア、ケヴィン・ベーコンなどが出ている。
特にライアン・ゴズリングはただでさえ色男なのに、それが色男を演じていたので迫力があった。最初にスティーブ・カレル演じるキャルと外で待ち合わせをした時のキメたスーツにサングラス姿はさすが。日中のショッピングモールにあんな人がいたら目立つ。現れたキャルがよれよれのポロシャツに汚いスニーカーなのがまた。それで、ジェイコブ(ライアン・ゴズリング)のほうが先に来ているあたりも、これはモテる。キャルはナイロンにマジックテープのバリバリいう財布を持っていて、誰が見てもわかるモテないアイコンとして登場する。
その彼をジェイコブが育てていくというちょっとした『マイ・フェア・レディ』のような序盤でした。
一箇所、バーでキャルの話を聞いていたジェイコブが、困ったようなでも仕方ないなという表情と、ほれみたことかみたいなしてやったりの表情と、笑っちゃいけないでも笑っちゃうという表情が混ざったような顔で楽しそうににまにまするシーンがあるんですが、そこのライアン・ゴズリングが本当に素敵で、私の隣りに座ったゴズリングが話を聞いてあんな笑顔を見せたら…と考えるだけでドキドキしました。

百戦錬磨のようなジェイコブがエマ・ストーン演じるハンナと恋に落ちるシーンが良かった。彼の家に行って、「一発やる!」と言いながらも、照れのあまり、通販で買った枕やマッサージチェアの話など、色気のない話をべらべら話すあたりがリアル。また、ここまで気取ったイメージだったジェイコブの内面が見える。これ以降、人間味が出てくるのもいい。

キャルが妻と別れそうになり、モテて見返そうとすったもんだするのと、ジェイコブの恋を軸にして、周囲でも細かい問題が起こっている。
キャルの息子はベビーシッターに恋をしていて、そのベビーシッターはキャルに恋をしていて、キャルの妻は同僚に言い寄られていて、キャルが寝たのは息子の先生で。
更に、ベビーシッターがキャルを悩殺しようと撮影したヌード写真が親にバレて、ジェイコブと付き合ったハンナの親がキャルで。

キャルが復縁を持ちかけようと、庭にパークゴルフを作って、妻をもてなすシーン(ここでキャルが用意したBGMがSpandau Balletの『True』なのも古くてそれっぽい)で、全員がぶつかり合う。
それは恋愛だけじゃなく、娘を想う父親の気持ちやキャルを思って妻の浮気相手を殴ったジェイコブの気持ちも含まれているけれど、大切な人を大切に思うことには変わりがない。みんな好きな人に一生懸命で、それはかなったりかなわなかったりだけれど、あのシーンは切なさよりも滑稽さが勝る。笑ってしまうけれど、それだけではなく、全員の一生懸命さが伝わってきて、少し泣けるし、登場人物がみんな大好きになった。

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