『アメリカン・ハッスル』


アカデミー賞主演男優・女優、助演男優・女優に加え、作品賞、監督賞、美術賞など全10部門でノミネートされています。
実話がもとになっていて、騙すことで何かを成し遂げるというあたりの情報しか入れていなかったので、なんとなく『アルゴ』と似たような話なのかなと思ったらまったく違った。
以下、ネタバレです。





まず、一番最初にクリスチャン・ベイルのぶよぶよのお腹が出てくるんですが、写真を見ていたからわかっているのにその体型に驚かされた。人間はこんなに急に太れるものなの…。
舞台が78年ということで、衣装や家の内装なども見応えがあるんですが、髪型もおもしろい。ブラッドリー・クーパーのパンチパーマ!そして、ジェレミー・レナーのリーゼント!ブラッドリー・クーパーの髪型は慣れたけれど、ジェレミーは最後まで慣れなかった。ちょっとおもしろい感じになっちゃってた。
この髪型や体型などは実際の人に似ているらしいので、実話を元にしているとは言っても、ほとんど実話なのかもしれない。ただ、実際はロザリンは自殺してしまっているらしいので、その点は違う。

他の作品でも観ているよく知ってる俳優さんたちが他では見られない姿をしていて、少しコスプレっぽい感じもする。

姿形だけではなく、演技面も素晴らしかった。これは、演技部門全ノミネート、納得しました。
ブラッドリー・クーパーは感情の起伏がありすぎる役で、デヴィッド・O・ラッセル監督の前作『世界にひとつのプレイブック』にも似ていた。ただ、あれよりも悪意がある。どちらかというと悪役です。
エイミー・アダムス演じるシドニーに切羽詰まった状態でセックスを迫る場面があるんですが、普段のブラッドリー・クーパーならオッケーでもこれはNG。
もちろん、髪型のせいもあると思う。でも、イケメンでなくても演技もできるということをまた今回も証明してみせた。
でも、イケメンなブラッドリー・クーパーも観たかったり…。『特攻野郎Aチーム』の続編、まーだー?

もう本当に全員良かったんですが、ジェニファー・ローレンスも良かった。ちょっとアバズレ風味でしたたかなのはいつものことなんですが、今回は頭があんまり 良くない役。このロザリンが何も考えず好き勝手に行動するせいで、うまくいくものも失敗する。結構苛つきはするんだけれど、なぜか憎めない。
トイレでシドニーと言い合いをしたあとにやけくそと挑発が混ざったキスをし、トイレを出た後にマフィアの胸で泣くという感情の爆発のさせ方が凄まじい。
また、ポール・マッカートニー&ウイングスの『Live and Let Die(死ぬのは奴らだ)』を激しく歌いながら、親の仇のように部屋の掃除をするシーンが本当に最高! 本当にどうしようもないキャラなのに、恰好良くて可愛い。

あと、マフィアの裏ボスみたいな形でロバート・デニーロが出てきて、それはそれは大迫力だった。やっぱりマフィアをやらせると、ひと味もふた味も違う。怖い。おそらくカメオ扱いでしょう。本領発揮というか、いきいきしてた。
よく考えたら、デニーロも『世界にひとつのプレイブック』にも、アメフト好きのお父さん役で出てきていた。

観終わったあとだと、丸くおさまるし爽快でおもしろかった!と思えるけれど、序盤は途中まで何の話なのかわからなかった。喋るシーンが多いので、字幕を読むのに精一杯で展開についていけなかった。事態の把握ができなかった。英語ができたら良かったのに。
また、シドニーが途中で正体を明かす場面、イギリス訛りをとるのもいまいちわからなかった。英語のみで、英語を聞き取ることに一生懸命になってたら気づいたかもしれないけれど、日本語字幕があると読んでしまい、英語はほとんど聞いていないのがよくわかった。

序盤の展開のわかりにくさとは別の話ですが、詐欺が題材なので、誰が誰を騙しているのかがわからない点はおもしろい。

ジェレミー・レナーが演じている市長も、少し金に対してはだらしない面があったものの、市民のためを思ってのことだった。誠実さのかたまりのような人物で裏があるかと思いきや、真っ直ぐな人物だった。アーヴィン(クリスチャン・ベイル)のことも信頼しきっていた。悪徳政治家とは言えないと思う。だから、パンフレットに載っていた肩書きが“汚職政治家”なのはちょっとどうかなと思う。
ジェレミーはアカデミー賞にノミネートされていないし、そんなに話題にもなっていないけれど、演技はうまかった。いつもとは雰囲気の違う役だったので難しかったと思うけれど。好きだから贔屓目で見ているかもしれないけど、良かったと思う。

エイミー・アダムスについても、所謂、不二子ちゃんポジションなのかと思っていたけれど、違った。
はっきりいって、シドニーのような美人がアーヴィンのようなハゲでデブな男を本当に好きになっているとは思っていなかった。
リッチー(ブラッドリー・クーパー)のことを本当に好きになって、結局、男二人共を出し抜くのかと思っていた。
しかし、彼女は最後までアーヴィンのことが好きだったし、最後まで観れば、観客である私たちもアーヴィンのことが好きになった。シドニーが好きな気持ちがわかったのだ。
これは、ストーリーがそう作られているのか、クリスチャン・ベイルの演技力なのかわからない。両方かもしれない。

結局はアーヴィンとシドニーのラブストーリーだったのだ。
最初は誰に感情移入していいのか、誰の側で観たらいいのかがよくわからなかったけれど、二人を中心にすれば良かったのだ。

その視点の固定とイギリス訛りに注目して、本当はもう一度観に行きたいところですが、この先、公開作が目白押しなので行けなそう…。

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