『アイム・ソー・エキサイテッド!』


おもしろかったけれど、おすすめはしにくい。飛行機内トラブルですったもんだの密室劇。ペドロ・アルモドバル版『ハッピーフライト』…なんていうと耳ざわりがいいんですが、『ハッピーフライト』のほうが話は良くできているし、誰もが安心して楽しめる。
R-15になっていましたが、実際はもっと年齢制限高めに設定したほうがいいような感じがします。下品さが多少エグめだと思う。その明け透けな感じがゲイゲイしくもある。

以下、ネタバレです。







カメオとしてアントニオ・バンデラスとペネロペ・クルスが最初に出てくる。以降は飛行機内でのワンシチュエーションコメディなので、カメオとして出すなら冒頭しかないでしょう。ちょっとしたシーンですが、まあまあ重要な役割だし、やっぱり有名人二人は華やか。

以降はずっと飛行機内、しかもビジネスクラスとコックピットだけです。エコノミーの人たちとオネエCA三人以外の普通のCAの人たちはクスリで眠らされている。ストーリーを作る上で都合が良すぎるという気もしますが、もう細かいことを考えて観る映画でもないので気にしない。ちなみに、最初に“これは実話ではないです”というテロップが出ます。そりゃそうだ、ということが次々起こる。

乗客たちと機長、副操縦士、CAたちそれぞれのドラマなので、群像劇といえば群像劇。だけれど、非常事態とはいえ、地上と電話で繋いで話を展開させるのも、もっと何かあっただろう…と思ってしまう。話の持って行き方があまりうまくは感じられなかった。

また、メスカリンを用いて、セックスをしてすべてが丸く収まるというのも、どうなんだろう。飛行機が無事に着陸できるかできないかという危機的状況は感じられなかった。それは全編を通してだけど。まあ、危機的状況だからこそ、セックスなのかもしれないけれど。別に隠れたりすることなく、ビジネスクラスのシートの上で二組がセックスしている図はなんかもうシュールにも見えた。

無事に着陸できるかどうか、その瞬間を映さないのはもちろん予算の関係もあるんだとは思いますが、誰もいない空港内を映しながら、外の音だけ流すという手法がとられていた。映像にない部分は観客の頭の中で補わせる。性行為のシーンでも、誰一人裸になっていないんですよ。それでも、明らかに、“している”のがわかる。
ラストも同じですよね。泡がもこもこ動いていて、副操縦士の帽子がひょいっと投げられる。絡みは見えなくても、ストレートではなくなってしまったね、というのがわかる。

そして、雲の上でトラブルはあったけれど、結局みんなパートナーを見つけることでハッピーエンド。飛行機が無事に着陸できたことはなんとなく二の次で、登場人物がそれぞれ大切な人といちゃいちゃしている。それこそが、生きている実感なのかもしれないけれど。とにかく、全員が幸せそうな終わり方なので、細かいことを言わなければ、後味も最高です。楽しめました。私は。

タイトルにもなっているポインター・シスターズの『アイム・ソー・エキサイテッド』に合わせて三人のオネエCAが踊るところが一番の見所であり派手なシーンだと思う。三人とも本業では?と思うくらいキレのあるショーパブのようなダンスを繰り広げるんですが、少なくとも、聞かれるとなんでも喋っちゃうCA役のハビエル・カマラさんは俳優さんなので本業じゃなかった。スペインの俳優さんに詳しくないのでわからないけど、他の二人もたぶん本業ではないんでしょう。ちなみにあのダンスはブランカ・リーという振付師の方によるものらしい。ダフトパンクやビヨンセの振り付けをやっていたり、去年は明和電機ともプロジェクトをやっていたみたい。

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