『バッド・エデュケーション』


2005年公開。ベドロ・アルモドバル監督作品。DVDジャケットのまるで少女漫画のようなコテコテのデザインが気になって観ました。

監督の半自伝的な作品、とのことですが、映画の中で更に映画を撮っているため、何重構造にもなっていておもしろい。映画監督をしているエンリケの前に、幼馴染みであり初恋の相手であるイグナシオが脚本を持って十数年ぶりに目の前に現れて…といった内容。

脚本の内容は序盤は過去のことで自分も知っている内容で、気持ちの吐露とともに、恋愛が再燃するラブストーリーなのかと思っていた。もしくは、大人になった二人で、幼い頃に苦しめられた神父をやっつけにいくのかと。どちらにしても、二人は幸せになると思っていたんですが、そんな単純な話ではなかった。

途中で、脚本を持ってきたのがイグナシオではなく彼の弟だと発覚する。しかも、イグナシオはすでにこの世にはいないということもわかる。
その時点でも哀しかったが、イグナシオのふりをした弟が主演の映画を撮り終わったあとで明かされる事実がまた哀しい。
構造、ストーリーともに、一筋縄ではいかないところが好きでした。

脚本を読んでエンリケが想像しているのは、イグナシオの弟の女装している姿で、それは案外似合っているというか、普通に綺麗だったりするんですが、現実のイグナシオは女装をしていてもそれほど綺麗でもないし、ドラッグ中毒で痛々しくもある。エンリケは結局、姿を実際に目にはしていないけれど、頭で思い描いている現在のイグナシオは綺麗な姿なんですよね。事実を知ったほうがいいのか、知らないほうがいいのが。

最後に後日談が文章で出るんですが、エンリケの部分が“彼は情熱をもって映画を撮り続けている”という風に出て、しかもpassionの文字が大写しになって終わるんですが、これはまさしくアルモドバル監督自身のことなのだろうなと思った。

イグナシオ役のガエル・ガルシア・ベルナルは時々名前を聞くんですが、エンリケ役のフェレ・マルティネスは初めて聞きました。スペインの俳優さんに詳しくないので、そりゃそうなんですが。若い頃の吉井和哉を縦に伸ばした感じというか、玉木宏にちょっと似ている。『バッド・エデュケーション』以降の作品は日本公開されていないようです。残念。

あと、『アイム・ソー・エキサイテッド!』のオネエCA役だったハビエル・カマラが出ていた。女装したイグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナルのほう)のお友達役。どうやら、アルモドバル作品の常連さんらしい。

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