『スノーピアサー』


ポン・ジュノ監督。クリス・エヴァンス、ジェイミー・ベル、オクタヴィア・スペンサー、ティルダ・スウィントン、ソン・ガンホ、ジョン・ハート、エド・ハリスという豪華俳優陣が揃えられている。
以下、ネタバレです。





温暖化を止めるために打ち上げられた薬品で地球が逆に氷河期になってしまう。そこを走る箱舟のような列車が舞台。最後の少しのシーンを除いて、すべて列車の中で話が進んでいく。

一番後ろの車両に貧困層が集められていて、前のほうの車両には富裕層が乗っている。先頭車両にはエンジンを守る列車の持ち主。貧困層の者たちが革命を起こし、先頭車両を目指していく。
貧困層が住んでいるカプセルホテルを汚くしたような場所を見て、SABU監督の『蟹工船』(2009年)を思い出した。しかも、権力者をひきずりおろすべく革命を起こす。

設定がすごく漫画っぽいと思ったら、フランスの漫画が原作らしい。これが列車ではなく舞台が塔だったら、最上階を目指すゲームになりそう。
行方を阻む敵のヴィジュアルも漫画やゲームっぽい。斧を持って顔を隠していて…というのは、ドラクエのモンスターの実写版のよう。
また、最後のほうにラスボスからの「世界の半分をお前にやろう」的な提案があるあたりもゲームっぽい。

近未来SFだからかもしれないけれど、どこというわけではなく雰囲気ですが、ウォシャウスキー姉弟監督っぽい感じがした。車両ごとに違う世界に迷い込むような様子が『クラウドアトラス』でいろいろな世界をタイムトラベルするのにも似ている。あと、出演俳優陣の豪華さと多国籍具合も似てる。

車両ごとの異なった世界は見応えがあっておもしろかった。給水所、温室、水族館、寿司屋、子供の英才教育をする学校、金持ちのサロン、クラブ…。それぞれに特色があって、しっかり作り込まれていたので見ていて楽しかったし、扉を開けるごとに広がる次の世界はどんなものだろうとわくわくした。

登場人物が多いが、それぞれのキャラクターがちゃんと作ってあるのも良かった。
ジョン・ハートはレジスタンス側の長老でご意見番。この前の『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ』あたりと同じ感じですね。エド・ハリスは列車を作った男でラスボス。貫禄があったし、彼の理論にも少し頷きそうになってしまうくらい説得力があった。オクタヴィア・スペンサーは子供を攫われた母親役だが、やはりうまい。ジェイミー・ベルは主人公を慕う子分のような役。
クリス・エヴァンスはレジスタンス側のリーダーで正義感の強い役。だが、哀しい過去を持っていて、その告白するシーンとそれ以降のシーンがうまくて見入ってしまった。
ソン・ガンホは初めて観たんですが、無頼者っぽい演技が良かった。それぞれ全員アクが強い。
そして、何より一番アクが強かったのがティルダ・スウィントン。列車内の総理ということで体制側。こちらもいつもの通りの支配者かなと思ったら、支配者は支配者でも、簡単に寝返るようなコモノだった。しかも、瓶底眼鏡に入れ歯という外見も仮装のよう。いつもの冷たさを感じるような美しさはまるでない。ただ、これ、本人はものすごく楽しんでいるのが伝わってくる。この人は演じないとおばさんにならないらしい。演説シーンの語り口調も大袈裟でおもしろかった。日 本人の庭師みたいな人に「大丈夫ですか?」って言葉に「ダイジョブ!」って日本語で答えていたのもキュートでした。

あと、なぜかペ・ドゥナが出ると思い込んでいて、ソン・ガンホの娘役の子がそうかと思ってたんですが、それにしても顔が違う、ノーメイクだから?と思っていたら違う子だった。『グエムル』に出てた子らしい。ちなみに、観てないんですが『グエムル』にペ・ドゥナも出てるらしい。

世界観もいいし、キャラクターもいい、話の筋も現代の世界の構造にも通じるところがあって考えさせられた。
楽しんで観られたことは観られたんですが、エンターテイメントとして売っていくにはちょっと人が死にすぎるかなとは思った。また、殺され方が大体残酷なのも気になった。

あと、ラスト、主人公級の二人は先頭車両まで生きて辿り着いたのに、扉の爆発であっさり死んでしまったっぽいのがなんとも…。そしてそのあと、列車から出てきたヨナとティミーがしっかり毛皮を着ていたのがちょっと違和感があった。ヨナは毛皮を羽織るくらいだったのに、あんなにかっちりと着ていたのは不自然に思えた。ティミーは子供用の毛皮をどこで見つけたんだろう。もともとクラブから盗んできたものだったと思うので、小さいサイズのものを一緒に盗んだとは思えないし、大人用のを小さく作り直す時間もなかったと思う。細かいところなんですが、少し引っかかった。

エンドロールのスペシャルサンクスのところにポール・ダノの名前があったんですが、あれはなんだったんだろう。気になる。

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