『ダラス・バイヤーズクラブ』


突然HIV陽性と宣告されたカウボーイ、ロン・ウッドルーフの実話。
マシュー・マコノヒーは21キロの減量が取り沙汰されますが、演技もすごかった。(追記:アカデミー賞、主演男優賞マシュー・マコノヒー、助演男優賞ジャレッド・レト、W受賞おめでとうございます)

以下、ネタバレです。




映画の中でウッドルーフがドラッグディーラー呼ばわりされるんですが、何の情報も仕入れずに観た私も、ドラッグディーラーの話なのかと思っていた。なんとなく、主人公からダーティな雰囲気を感じ取っていたからかもしれない。
実際は、独学で治療薬の知識を得て、国で認可されてない薬を求めて世界各国に飛んで密輸するという話だった。密輸なのでダーティといえばダーティなんですが、末期症状と診断された患者自身が奔走するので、必死さと生きようとする強さが伝わってくる。

動かなければ死んでしまうという状況になったときに、自分ならどうするだろうと考えた。死ぬ気で頑張るなんて言葉はよく聞かれるけれど、本当にその状況になったときに、ウッドルーフのように、開き直りにも似た思い切りで行動できるだろうか。

密輸にしても、国の認可を受けている薬が毒物だと自らの身体をもって実験をしてわかっているからで、これも仕方ないとも言える。でも、一応は法律には背くわけで、それができたのもまた勇気だと思う。

また、最初はゲイに差別的な発言を繰り返していたウッドルーフが同じ境遇になって、ビジネスパートナーとして行動して、トランスジェンダーであるレイヨンと少しずつ打ち解けるのも良かった。ずっと憎まれ口は利いていたけれど、それは差別的な発言ではなく、親しみをこめたものだった。
同じような患者に薬を分けるようになったのも、レイヨンに心を開いたからだろう。

レイヨン役のジャレッド・レトもかなり減量をしたらしい。女装をしているのですが、セリフやしぐさなどが大仰にならずに自然なのが良かった。ウッドルーフにやいやい言う気が強い面やイブに見せる優しい面もありつつ、ドラッグがやめられないという弱い一面も持ち合わせた難しいキャラクターだったと思う。

マシュー・マコノヒーはいつもとは違って外見的には痩せているのに、力強くて頼りになる役柄だった。外見に反して、演技力でこの印象を与えるのだからすごい。

また、世界各地にいって、身分を詐称しながら取引をするんですが、その映画の中で演技をするシーンがちゃんと演技をしているように見えた。もともとのウッドルーフだってマシュー・マコノヒーの演技なのに。ちなみに、世界各地の中には日本も入ってるんですが、たぶんセットかなにかだと思う。実際にロケには来ていないはず。

この映画のポスターが最高。ビルなどの大都市を背景にしたウッドルーフが両手を広げて得意げな笑顔で立っている。なんてことないようで、映画を観賞後だとかなりグッとくる。
世界は俺のものとでも言うべき力強さやウッドルーフの生命力の強さを感じるし、社会の大きな力にも勝てるという確信めいたものも感じる。

この映画も『アメリカン・ハッスル』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』と主人公の質が似ていると感じた。清廉潔白ではないが、自分のしていることに自信と誇りを持っている。

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