『ドン・ジョン』
Posted by asuka at 3:03 AM
ジョセフ・ゴードン=レヴィット監督・脚本・主演作品。初監督作品としてちょっと奇抜な題材が選ばれていておもしろい。“プレイボーイと絶世の美女が恋の心理戦!”みたいな宣伝文句がついていたけれど、そんなロマコメみたいな感じではなかった。
なんとなく、タイトルとその宣伝文句のプレイボーイってところから、ドンファンみたいな感じなのかと思っていたのだけれど、まったく違った。
以下、ネタバレです。
主人公ジョンは遊び人ではあるけれど、Macの起動音を聞いただけで欲情するポルノ中毒という設定。劇中で何度もMac起動音が鳴るんですが、その時に毎回、ジョンの欲望のスイッチが入ったことを感じられてわかりやすかった。そして、使い終わったティッシュをゴミ箱に捨てると、Macのゴミ箱から削除した音が鳴る。
Macの効果音を使うというのもちょっとおしゃれな演出かと思いますが、車に乗って教会へ行って懺悔、家に行って家族で食事、ジムで聖書?の一説を唱えながらトレーニングというルーチンワークが何度も出てきた。たぶん、ジョンはそんなルーチンを大切にしているのだと思う。多少変わるけれど、大体同じような流れでも退屈しているような様子はなかった。
彼女ができて、そんな自分だけの世界が壊される様子はなかなかリアルだった。何かするにもいちいち口を出してくる。トレーニングや掃除の仕方まで。しかも、付き合いで自分の趣味ではない映画を観なくてはならない。
この凡庸なラブストーリー映画に出演しているのが、なんとチャニング・テイタムとアン・ハサウェイ。なんか、すごくありがちな感じのストーリーが本当に退屈そうで、逆に観てみたくなった。この二人をもってくることができたのは、JGLの人脈なんだろう。ご祝儀出演だったのかも。
しかし、ラブストーリーをこれだけ退屈なものに仕上げるというのは、JGL自体があんまりラブストーリー好きではないのかな。
このラブストーリー好きな女性を演じているのがスカーレット・ヨハンソンで、最初にバーでナンパした時に、相手役はスカヨハか…と少しがっかりした気持ちになってしまったけど、このがっかり役にすごく合ってた。
自分の部屋には『タイタニック』のポスターが貼ってあって、漫画的といえるくらいわかりやすいキャラクター。見た目が遊んでそうなわりには恋に恋する乙女。でも、注文が多くて口うるさい。
ジョンの妹は、家族での食事中も教会でも携帯を離さないで会話にも入ってこないんですが、最後の方に「要は彼女はいいなりにさせたいのよ」と急に鋭い指摘をするのがとても恰好いい。興味無さそうに見えて、しっかり聞いてた。
完全にJGL目線だったので、妹の意見には完全に同意をしてバーバラはなんてひどい女なんだろうと思っていたけれど、そのあとにジュリアン・ムーア演じるエスターが指摘する通り、言われてみれば確かにジョンも独りよがりなんですよね。
日々のルーチンをストイックなまでに守っていることからしても、自分だけの世界観があるのがわかる。
ただ、独自の世界観をもつ男を描くときに、その主人公をポルノ動画中毒にしてしまうのはちょっとおもしろいと思う。確かに、ポルノ動画にはまっていて、現実の性行為にはまれないというのは、独りよがりを描く上でわかりやすくはあるけれど。
教会で懺悔をしたときに、神父から言葉が返されるんですが、ラスト付近の懺悔のときにジョンは「また一緒の言葉?」と聞き返す。神父なのだから私情ははさめないだろうし当たり前だと思うけれど、ジョンが初めてルーチンに疑問を持った瞬間のように見えた。いままで守ってきた繰り返す毎日を自分で壊したのだ。
題材がとんでもなかったわりには、ラストは無難に落ち着いていて、結局良い話になっていた。そこには、意外性やスリルはない。でも初監督作品なんだし、あんまり冒険しすぎてとっちらかった終わり方になるのもどうかと思うので、これで良かった。
JGLのいろんなあられもない姿が見られるサービス映画でもあると思う。他の作品では観られないサービス満点なのは、さすがに自らが監督しただけある。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: