『LEGO(R)ムービー』
Posted by asuka at 10:26 PM
『21ジャンプストリート』のフィル・ロードとクリストファー・ミラー監督作品。『くもりときどきミートボール』は観てませんが観たい。
知育玩具レゴを使ったファンタジーCGアニメーション。…だと思っていた。波とか爆発もすべてレゴブロックで作られていて、すごいなーと思いながら軽い気持ちで観ていたら、途中でもう根本のところから違っていたというか、突き落とされた。
以下、ネタバレです。
普通の人生を歩んできた普通の作業員のエメットが、ふとしたことからヒーローと勘違いされて、巻き込まれるようにして世界を救う冒険へ出る。
確かに、登場人物は勿論、背景や特殊効果などにすべてレゴが使われていることはすごいと思った。でも、普通の人が巻き込まれて、冒険をするうちに成長して世界を救う話はありきたりでもあるかな…と思いながら映画を観ていた。ストーリーを勝手に想像してしまっていたのだ。
そのうち、逃げるエメットたちの乗り物の車輪が取れてしまうというピンチに陥るシーンが出てくる。仲間に「何かアイデアを出して!」と言われて、この時、マニュアルではなく、エメットは初めて自分で考えるんですが、回るもの回るもの…と考えて、自分の首が回ることを発見。頭に車輪を付けて、自分が車軸の代わりになってしまう。
当たり前だが、人間の首は360度は回らない。ということは、エメットたちは人間がレゴの姿をしているわけではなく、自分たちがレゴだと認識しているのだ。
でも、こんな風になんでもアリにしてしまったら、ピンチなんてなくなってしまうのではないか?と思ったけれど、実はその辺がこの映画のテーマとなる部分だったのだ。
おしごと大王許すまじと思いながら観ていた後半、急に実写に変わる。視点が一気に変わる。
最近のレゴってよくできてるんですよね。きっちり作って飾ると見栄えがいい。きっちりと完璧に世界を作っていたのに、子供がそれをバラバラに崩してしまう。父親は子供を叱り、もうブロックをバラバラにできないようにボンドでくっつけてしまおうとする。
そうゆう話だったのか!
ブロックで作った世界を壊されて怒る父親の気持ちもわかったし、映画を観ながらストーリーを勝手に想像して、なんでもアリを否定した自分こそがおしごと大王になっていた。いつの間にか、そちら側の人間になってしまっていたことに気づかされてぎくりとした。
レゴブロックをボンドでくっつけるなんて、本末転倒じゃないか。誰が何と言おうと、恐れずに自由な発想で遊べばいいんだ。エメットの頭に車輪を付けたっていいんだ。
でも、決してマニュアル通りに作ることを否定はしてないのも、この作品の優しいところだ。マニュアル人生を歩んできたエメットも、その性質を生かしてビルに侵入する。
エメットがおしごと大王に投げかける、「あなたは悪者にならなくていい」という言葉も泣ける。おしごと大王側は敵視していても、エメットたちは決して敵だと は思っていない。彼の作る世界もそれはそれで素晴らしい。マニュアル通りに作られたレゴだって素晴らしいし、逆にそれは、子供には作れないものかもしれない。
レゴのサイトにもあるけれど、レゴはブランドバリューとして、イマジネーション(想像力)、クリエイティビティー(創造性)、ファン(楽しみ)、ラーニング(学び)、ケアリング(思いやり)、クオリティー(品質)というのを掲げていて、これはまさに、この『LEGO(R)ムービー』のテーマともなっている。だから、映画のタイトルにはちゃんと(R)を付けた方が良い。
実写パートの父親役はウィル・フェレル。実写で出てきた時に、なるほど、それでおしごと大王の声をあてていたのもウィル・フェレルだったのかと思った。いかにもレゴ好きの大人に見える。そしておそらく、子供の頃は同じようにレゴでクリエイティブに遊んでいたに違いない。おしごと大王とも髪型が似ているのもおもしろい。
他の声優さんも豪華。ウィトルウィウス役のモーガン・フリーマンは幽霊になったときの「ヒョオオオォォォォ」みたいな声が可愛い。バッド・コップを演じたリーアム・ニーソンはグッド・コップになったときに高い声が可愛い。チャーリー・デイが演じるバーニーは終始高い声で可愛い。宇宙船を作っては壊してがっかりして、いよいよ作っていいよと言われた時の「SPACESHIP! SPACESHIP!」の連呼は、興奮のあまり声が裏返っていた。このシーンはちゃんと吹替え版でも裏返っていたのもおもしろい。
また、スーパーマンとグリーンホーネットがチャニング・テイタムとジョナ・ヒルの『21ジャンプストリート』コンビ。多少ブロマンス風なのも狙ったか。
二回目に2Dで観たら、画面が明るくて、エメットにべったり付いた指紋や塗装の剥げやすきまに溜まる埃など、人形としてのリアルさに気づいた。
あと、ちょこちょことレゴブロック以外の日常使うものが紛れているのにも気づくし、その意味合いがわかった。スパボンはもちろんなんですが、スーパーマンとグリーンホーネットがひっかかったガムもそう。あと、エメットとワイルドガールがロボットに変装しているときの銀色は、たぶんアルミホイルを貼付けてるん じゃないかな。
マスタービルダーが捕らえられて一人一人カプセルみたいなのの中に入れてしまわれるのも、フィギュアの飾り方の典型だというのも二回目で気づいた。大事なフィギュアをそう飾るのもいいけれど、それでは遊べないのだ。
あと、ビルの最上階がとりはずされて飛んで行く時のいやにチープなぶるるるるって音は、たぶん、子供が口唇震わせて音を出してるんですね。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: