『ユナイテッド-ミュンヘンの悲劇-』


2012年公開。イギリスでは2011年にテレビ放映、劇場公開作品ではなかったようです。『300<スリーハンドレッド>〜帝国の進撃〜』の戦う息子役のジャック・オコンネルが良かったので観たんですが、デイヴィッド・テナントもほぼ主役で出てきた。1958年に起こったミュンヘンの悲劇を描く実話。

サッカーに詳しくないので“ミュンヘンの悲劇”という事故も知らなかったんですが、それでも楽しめた。試合シーンはほとんどなく、中盤に問題の飛行機事故を据えて、そこまでのジャック・オコンネル演じるマンチェスター・ユナイテッドの選手ボビー・チャールトンの台頭と、それ以降のチームの再生とボビーの復活を描いている。

サッカーがよくわからなくても、少し前まで一緒にいて、雑談を交わしていたチームメイトの大半が一気に亡くなってしまうつらさはわかる。特に親しかった友人も亡くなった。喪失感もあるだろうし、なぜ自分は生き残ってしまったのかとも思うだろう。
それでも、もう一度サッカーを、と試合前の選手控え室の扉を開けるシーンが泣けた。扉の向こうの世界へ、文字通り一歩踏み出す。
そのシーンの少し後に、足を負傷したが奇跡的に命は助かった監督についても、別の試合での選手控え室の扉を開くシーンがある。
二人とも、扉を開けて、新しいチームを目の当たりにして一歩踏み出すのは勇気がいったはずだ。新しいチームを受け入れることは、前のチームメイトがいなくなったことを受け入れることでもあるからだ。それでも、信じたくない現実をしっかりと見据える、その強さが良かった。

デイヴィッド・テナントはコーチ役だった。前半はボビーを育て、後半はチームの再生に奔走する。遠征には参加していなかったので、飛行機事故も当事者ではないのだが、一番近い場所ですべてを見守る役だった。
デイヴィッド・テナントというとやっぱり『ドクター・フー』の印象が強いので、ドクターが別の役をやってるという感じになってしまうのかなとも思ったんですが、そんなことはまったくなかった。
少し痩せていたので、目の大きさが目立った。顔がかなり特徴的ですが、声も目立つ。前半の控え室で試合前の選手を鼓舞するシーンが最高だった。ちょっと舞台演技ではあるのかな。声を張り気味に、早口で話す。
後半の新しい選手をかきあつめて契約させて写真を撮るシーンの連続作り笑いも良かった。
飄々としていて調子が良くやっているだけのようでも、選手とチームのことを人一倍考えているのが伝わって来た。常に一生懸命だった。
事故のあと、病院に駆け付けて、惨状を見て、誰もいない階段で泣くシーンも良かった。人前では絶対に弱さを見せないが、耐えきれず一人で姿を隠して号泣していた。
役自体が良かったのかもしれないけれど、デイヴィッド・テナントにも合っていたのだと思う。

キーパーであり、飛行機事故のときには怪我人を救出し、チームにも早々に復帰していたハリー・グレッグ役のベン・ピールが恰好良かった。ジャクティン・ティンバーレイクにちょっと似ている。彼をイギリス顔にした感じ。2013年のTOYOTAハリアーのCMに出ています。

イギリス人俳優満載だから、出だしからかなりイギリス訛りなのかと思っていたけれど、考えてみたらサッカー選手だから余計そうなんですね。ボビーの住んでいるのもそれほどいい家でもなさそうだったし、おそらく労働者階級だと思う。

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