『オール・ユー・ニード・イズ・キル』


桜坂洋のライトノベルが原作。漫画化もされているとのこと。どちらも未読なので、映画版との違いはわかりません。

以下、ネタバレです。









記憶を残したまま時が戻って、同じ時間を何度も繰り返すいわゆるループもの。ただ、何をしようと結果は同じになってしまうというものではなく、ちょっとずついろいろ変えて先に進める点、死んで最初に戻る点は『ミッション:8ミニッツ』系。ただ、あれはあれこれやりながら真実に近づいていく話でしたが、こちらは異星人だか謎の生命体の進撃を止めるということで、よりアクション色が強いかも。

予告編を見た時に、死んで記憶を残したままやり直すというところがゲームっぽいと思った。実際、死んで元に戻って、戦場に繰り出したときに敵やその他の人など、主人公以外の動きは同じなので、敵の動きを憶え、右に避け左に避け、ここで攻撃など、記憶をしながら少しずつ進んで行くさまはアクションゲームのようだった。

また、闇雲に進んでもだめというのもゲームっぽい。戦場でリタという女性に会って、「私をさがして」と言われる。ただ戦場に来ただけでは先に進めず、突入する前にリタをさがさねばならないのだ。
リタをさがすためにも、分隊から一次離脱をはからねばならず、その離脱の途中で失敗して死んだりもしていた。こんなつまらないところで…というのが、アクションゲームではよくあることだし、この作りにはすごく納得した。

また、アクションパートの操作ミスでの死だけではなく、アドベンチャーパートで選択肢を間違えてバッドエンドを引き起こしてしまうこともあった。この場合、必ずしも死ぬわけではないので、リタにリセットと言われながら銃で撃たれて殺されていた。
アクションパートはともかく、アドベンチャーパートは選択肢を手当たり次第ためしていて、途中セーブができないから失敗すると最初からやり直しだし、私だったら攻略サイトとかどうにかして解答を見ているところだと思った。

そうやって、途方もない回数、最初からやり直しているんですが、映像の作り方に無駄がないのがうまいと思った。前回と違う部分だけ流しても、ループしている気がしない。かといって、同じ映像ばっかり流すのも退屈。
同じシーンでは主人公が面倒くさそうにしてたり、先のことを言って他の兵士を驚かせたりと、多少コミカルに作ってあるのがいい。そして、見慣れたシーンから新しい場所へ進めたときには、まるで自分がゲームを進めているかのような、ほっとした感じとこれから何が起こるんだろうという期待感に胸が包まれる。わくわくする。

主人公のケイジを演じているのがトム・クルーズなんですが、彼の演技が際立ってうまく感じた。ループしているのは彼だけだから、というのもあるかもしれない。
元々は広報だったケイジが軍隊に放り込まれて、最初は戸惑いしかないんですよね。戦場に向かう飛行機の中では恐怖で表情がかたいし、安全装置の解除の仕方もわからないまま戦場に出ることになって、わたわたと何も出来ないまま、あっという間に死ぬ。
二度目は戸惑いと混乱の中、これもあっという間に死ぬ。
回を重ねるごとに、そしてリタの話を聞くことで事情をのみこみ、余裕と繰り返した重みが備わる。どんどんタフになるし、顔つきも精悍になっていく。

もちろん、すべての回を見せているわけではないので、全部で何度ループしているのかわからない。映画内で初めて流れたシーンでも、リタと会話をするときに、「これが初めてじゃないの?」と聞かれて曖昧に笑っていた。
死ぬことで元に戻ることがわかってはいても、毎回恐怖も感じただろう。途中で無駄死にも何度かしたはずだ。
それを全て乗り越えて、最後、何度目かわからないリタとの出会いのシーンで、微笑んで一瞬涙ぐむのがすごくうまかった。いままでの苦労とまた会えて良かったというリタへの想いと気のゆるみなど、全部が凝縮されたあの表情は本当に素晴らしい。

リタとの出会いのシーンですが、リタ役のエミリー・ブラントが黒いタンクトップで一人腕立て伏せみたいなのをしてるんですね。そして、近づいて来たケイジを不審そうに見ながら、体をぐっと反らす。体は汗で光っている。
このシーンはループで何度も流れます。たぶん、いいシーンだからだと思う。

ケイジはリタとのこの出会いを何度も経験している。リタとしては毎回初回だから不審な顔をするんですが、ケイジは懐かしそうな嬉しそうな顔をしていたと思うんですね。最初から始めてここまで来るのも一苦労だろうし、とりあえず会えるところまでで一段落なんだと思う。それで、その時点では初対面でも事情を知っているのは彼女だけだし、何度も出会ってその都度打ち解けることで、特別な感情も芽生えただろう。

そんなケイジの想いを踏まえた上で、最後の一瞬涙ぐむ表情を思い浮かべると泣きそうになってしまう。

敵がいまいち何者なのかは最後までよくわからないんですが、別にその解明をされたところで解決することはなさそうだし気にすることもないのかな。倒し方は水の底のコアみたいなところに爆弾をぶちこんでいて、少し『パシフィック・リム』を思い出した。

あと、ロンドンが舞台だと聞いていたんですが、あまりロンドンらしさはない。しかし、特別に許可されたというトラファルガー・スクウェアでの撮影は大興奮。あの狭いスペースにイギリスの軍用ヘリが…。場所的に作戦本部はナショナルギャラリー内なのかな。

0 comments:

Post a Comment