『九十九』がアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされたのも記憶に新しい森田修平監督作品の一気見に監督のトークショーが付き、更にこの7月からの新アニメ『東京喰種』の一話の放送まであるイベントに行ってきました。
いままで森田監督作品は『FREEDOM』しか観ていなかったのですが、まとめて観られる貴重な機会だった。また、『九十九』祝ノミニーの凱旋上映でもあったらしい。
以下、全ての作品についてネタバレがあります。
『カクレンボ』
2005年の作品。
3DCGのため、人物の動きが少しぎこちなかった。ただ、3DCGは人間の表情を描くのは難しいけれど、今作では全員狐の面をつけているので、それが隠せたとトークショーで言っていました。500万の借金をして、一年間で作り上げたとのこと。
童歌と神社に祀られた神様の不気味さみたいなのがよく表現されてた。仏像がからくりのように目玉がぎょろっと、パーツがガシガシ動き出し追いかけてくるのが怖い。
かくれんぼというよりは鬼ごっこのようだったけど、「もういいかい」「まあだだよ」という怖い呼びかけもかくれんぼでしか使えないし、子供が神隠し的なものに遭うために、やはりかくれんぼを題材にするのがちょうどいいのかなと思う。
香港のようなネオンで漢字が浮かび上がっている看板とか、すごく高い塔など、美術面も凝っていた。
『コイ☆セント』
2010年の作品。
平城遷都2000年の祭り中なので、舞台は西暦2710年とのこと。ネオ奈良といった感じだが、街並はかに道楽の未来版みたいなのがあって大阪のくだおれみたいだった。
これも3DCG。ファンタジーだし未来の話だし、ホログラムで浮かび上がるバスガイドなども出て来るからこちらのほうが合ってると思う。それか、だいぶ間があいているみたいなので、技術が上がったのか。
小さいおばさんとごついコミカルな兄弟が追ってくるとか、空から女の子が降ってくるとかラピュタから影響を受けてるようなシーンが多くあった。けれど、一緒に観に行く映画がたぶん『ローマの休日』だったので、逃げて来て身分を偽った姫がつかの間のデートを楽しむということで、和風のローマの休日でもあるのかもしれない。
こちらは大仏と風神雷神がからくりっぽく動く。『カクレンボ』と同じテイストが生きてる。
『九十九』
アカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート作品。『SHORT PEACE』というオムニバスの中の一遍。映画は2013年公開だけど、この作品単体ではもう少し前に出来上がっていたらしい。
古いほこら、妖怪、畳、襖、浮世絵、おまけにMOTTAINAIがテーマで、外国の人が好きだろうと思われる要素がこれでもかとつめこまれてた。富士山が最後にばーんと映るのも完璧。
ただ単につめこまれているわけでなく、カエルをモチーフにした傘の妖怪の動きはコミカルだし、着物がぶわっと嵐のように舞うのも綺麗。狭い部屋を囲む襖の柄も傘の部屋は目玉のような、傘を上から見たような二重丸だったり、着物の部屋は見返り美人のようになっているなど凝っている。
最後の部屋で、もう再生できないほど痛んだ者たちが、からくりのように一つの形を作り出す。ここでもからくりが出てきた。
からくりだけは三作品に共通して出て来るので、たぶんお好きなのかなと思ったら、妖怪好きらしいので、あれらはからくりというより妖怪なのかもしれない。本来物質であるものに命が宿っているからそうか。
ごつくて荒々しく見えるけど、器用で優しいという主人公のキャラクターもいい。
監督によると、あらすじ自体は地味で文章で説明しても面白く感じられないけど、映像で見ると面白い、まんが日本昔ばなしみたいなのが作りたかったとのこと。すこし説教が入っているあたりも昔ばなしっぽい。
アカデミー賞授賞式に監督は紋付袴で出席。ジョン・ラセターともハグした。また、マシュー・マコノヒーにも声をかけてもらったらしく、アカデミー会員でもある彼に「お前に投票したよ!」と言われたとのこと。
『火要鎮』
これで“ひのようじん”と読む。『SHORT PEACE』より、大友克洋監督作品。今回のイベントは森田監督一気見ですが、『SHORT PEACE』の上映もあったため、他の監督作品も含まれます。
上下に和柄のラインが入っていて、まるで絵巻物のようだった。登場人物も日本画のようだった。
最後のようで大火事が起こるんですが、まるで生き物のような、火の表現のうまさも堪能できる。
森田さんのべらんめえ演技ががうまかった。
『GAMBO』
『SHORT PEACE』より。『茶の味』『PARTY7』『ナイスの森』などの石井克人監督作品。最近はアニメも撮っているのを知らないかった。
山奥の村のような場所が舞台だったけれど、こんな場所に白熊が?と思ったら、見ていくうちに別に白熊ではなかったらしい。聖獣みたいなものなのかな。村を襲う鬼と戦うと、体が血で染まるのが目立つから白かったのかもしれない。
鬼の非道な行動は、吐き気がするくらい情け容赦なかった。
『武器よさらば』
『SHORT PEACE』最後の作品。ガンダムのメカニックデザインのカトキハジメさんの監督作品。
ここまで、和風だったり、時代が昔の日本だったりしたので、そうゆうコンセプトでやっているのかと思ったら、これだけおそらく未来の日本が舞台だった。富士山が映ったので未来は未来のようだけれど、日本人が出てこないので時代は不明。でも少なくとも着物の時代ではないと思う。テイストが他の三作とは違う。
そして、名前からして欧米人がパワードスーツを着込んで潜入しようとしている。
このパワードスーツも戦う戦車も乗ってた車も、デザインと書きこみが細かさが恰好良かった。これくらいの出来の良さで『機龍警察』のアニメが見たい。
パワードスーツを着ていたり、武器を持っている人間を認識して攻撃する戦車が出て来る。武器を持って侵略してくる欧米人を攻撃しているので、どこの国の人なのかをわざわざ伏せているのかもしれないけれど、たぶんアメリカ人なのかな…。
『東京喰種トーキョーグール』
森田監督初のテレビアニメ。
原作があるものだし、からくりは出てこない。それに和風テイストでもない。
でも、人ならざるものが出てきたり、単純に人でないものが悪というわけではない話というのは監督の好みらしい。
一話目だけではなんとも言えないですが、背景の夜のビルなどがすごく丁寧で、大きなスクリーンで観ても耐えられるくらいだった。
また、人を喰うことをためらっている主人公が無理矢理口に押し込まれ、ぱっと画面が暗転してごくんという呑み込む音がするという演出がうまかった。喰うシーンを映さなくても、食べちゃったんだ…というのを察することができる。この察せよがたまらない。
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