『赤ずきん』


2011年公開。アマンダ・サイフリッド主演。ゲイリー・オールドマンが出ているということで観てみました。

全体的には所謂『赤ずきん』の話はほぼ関係がない。アマンダ演じるヴァレリーが赤いずきんをかぶるのと、狼が出てくるくらい。一応、おばあさんとの会話、「おばあさんの耳はなぜそんなに大きいの?」「お前の声をよく聞くためさ」なども出てくるけれど、夢の中の話であり、ストーリーには関わらない。また、『赤ずきん』モチーフなのは、誰が狼か?という謎の騙しとしても有効だったかもしれない。おばあさんがあからさまにあやしい感じがしてしまう。あと、ラスト付近で、人狼の腹を割いて石をつめて湖に沈めるシーンはあり。人間の姿なので、多少グロテスクである。

村に狼が出て、この中の誰が人狼なのか?と疑心暗鬼になる、閉鎖された空間ではよくあるといえばよくある話。そこに、ヴァレリーと幼馴染みと婚約者という三角関係が絡む。

禁断の恋愛みたいな謳い文句だったため、出演者の中で二番目に名前の出たゲイリー・オールドマンが実は狼で、彼とアマンダ・サイフリッドが恋に落ちるのかと思っていた。もしかしたら、『ドラキュラ』を思い出していたせいかもしれない。

でも、ゲイリー・オールドマンは村を救いにきた神父役だった。ソロモン神父はかつて、人狼になってしまった妻を自らの手で殺したという暗い過去にとらわれていて、この村の人狼もなんとしても殺そうとする。まるで恐怖政治のように力で村を弾圧する。
演説調の喋り方がノリノリで、紫のビロードで大きく十字が書いてある衣装や銀の爪もハマっていて、カリスマ性を感じたが、ゲイリーだけが頑張っていた印象を受けた。彼だけ演技がうまくて逆に浮いてしまっていたというか。
でも、ヴァレリーをめぐる二人の若者があまり魅力的ではなかったので、なおさら、ソロモン神父との恋愛が見たかった。
後半であっさり死にます。悪役めいていたからかな。

そして、何が禁断かというと、結局父親が人狼で、助けにきた幼馴染みを噛んだから幼馴染みも人狼になってしまって…、でもあなたが好き!みたいな展開がラストにあったからなんですけども。確かに禁断なのかもしれないけれど、ティーン向けな感じがしてしまった。
観ていないけれど『トワイライト』っぽいのかなと思っていたら、『トワイライト』と同じ、キャサリン・ハードウィック監督だったらしい。じゃあ多分、『トワイライト』っぽいのだろう。

村の雰囲気や衣装、美術が素晴らしかった。
ソロモン神父が持ってくる巨大な象は乗り物なのかと思っていたら、乗る部分の布が上に開いて人を閉じ込める拷問器具だった。

村の宴のシーンは長めですが、まさに村の宴といった感じで良かった。狼を倒したと思い込んで浮かれているんですが、羊のマスクを被ってメエメエ言っている人がいたり、三人が豚のマスクを被って『三匹の子豚』を再現していたり。

全体的に色調が暗いんですが、アマンダ・サイフリッドが着る赤いずきんというかマントだけが鮮やかな赤なのが印象的。後ろが長いんですが、それで雪の上を歩くシーンなどとても美しかった。
また、アマンダの白い肌と金色の髪と赤ずきんがよく似合っていた。なおさら、村の若者たちが冴えなく見えてしまった。
後半、赤ずきんのお馴染みの恰好で、手に持ったかごの中にゲイリーの銀の爪付きの手が入っているのも少しホラー要素があって良かったです。

美術はトム・サンダース。『ドラキュラ』でアカデミー賞にノミネートされている。だから『ドラキュラ』っぽいと思ったのかもしれない。


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