『ピープルVSジョージ・ルーカス』


DVDスルーだったようで、日本で発売されたのは2011年。アメリカでの公開は2010年。
スター・ウォーズのファンたちのインタビューを中心にして、ジョージ・ルーカスの過去のテレビ出演時の映像を交えたドキュメンタリー。フランシス・フォード・コッポラやサイモン・ペグなども出てくる。

ファンたちはエピソード4、5、6が好きで、コスプレをしたり、おもちゃを作ったり、パロディ映像を作ったりして一様に賞賛している。
ところが、1997年に“特別篇”と銘打たれた4、5、6が上映される。

私は、4、5、6は好きではあっても、何度も繰り返し観ているわけではないからわからなかったけれど、一部がCGで差し替えられていたり、ハン・ソロが先に撃った/撃たなかったみたいなシーンがあったらしい。
わからなくても、彼らの怒りはよくわかる。熱狂的に何度も観た映画、例えば『ダークナイト』や『インセプション』が手直しされて特別篇としてリリースされたらやっぱりすごく怒ると思うからひとごとじゃない。
しかも、スター・ウォーズに関しては過去の映像をDVDなどでソフト化する予定は一切ないそうだ。
過去のレーザーディスクがインターネット上にアップロードされているからそれを観たらいいという意見も飛び出していた。違法なのはわかっているけれど、文化を保護しているのだという言い分もあった。

まるで聖書を書き直されたようだとか、他人の記憶を押し付けられたようだとか、絵画だって手直しできないじゃないかとか、ファンの意見にいちいち頷いてしまった。

もちろん作品を作ったルーカスがその世界の神様なのはわかる。だから、神様が直したいというのなら、仕方が無いのかもしれない。でも、一度手を離れたらもう、それは作った人だけのものではないのもわかってほしい。

一度作品に触れたらもう、触れる前には戻れない。それを今更特別篇などと言われても、記憶は消せない。
一番最初に触れた時の驚きがファン一人一人の中で育っているのだ。

そして、次にファンを怒らせたのがエピソード1の存在である。
映画公開まで散々盛り上がって盛り上がって、肝心の内容が…。公開に向けて上がっていったボルテージが一気に下がっていく様子。これは、私もリアルタイムで体感した。
初日にオールナイト上映で観たので、ライトセーバーを持っている人もいた。拍手も起こっていたと思う。あの文字が流れる様子とテーマ曲は本当にわくわくした。でも、途中で寝てしまった。

映画の中でも、何かの間違いだと思って何回も観に行くファンがいたけれど、私もオールナイトだったからかなと思ってもう一度観たけれどまた寝てしまったし、テレビで観た時にも寝てしまった。

あと、映画に出てくるファンの人たちはジャー・ジャー・ビンクスのこと大嫌いすぎて逆におもしろかった。エピソード5の最後の方でハン・ソロが氷漬けにされますが、あれのジャー・ジャー版のが作られていた。ジャー・ジャーのマスクをかぶった人に物が投げつけられたりしていた。

エピソード2だったかな。ジャー・ジャーがカメラ目線になってこちらに向かって笑うシーンがあるらしい。「“不人気だけどまだ出ますよ(笑)”ってあおられてるようだった」って言ってて、そのシーンが観たくなった。

これも知らないんですが、クリスマスのホリデースペシャルみたいなのがあったみたいで、チューバッカが里帰りするらしいんですが、そこで20分くらいチューバッカが家族とうめき声だけで会話するシーンがあるらしい。字幕はなし。観たいですが、お蔵入りだそうです。

特別篇とエピソード1、2、3で打ちのめされて、嘆きながら自分たちで編集し直したり、新しいスター・ウォーズを作ったりしていた。
なんでもそうだと思うんですが、好きなんですよ。憎いわけじゃなくて、好きだから怒るし、文句をつけたい。
『レベルE』で、最初は乗る気のしなかったゲームに対して、もっと○○だったらいいのにみたいな意見が出始めて、それはハマっている証拠だと言われるシーンがあるんですが、それと同じ。
スター・ウォーズに関しては、自分で何かを作りたいクリエイティブなファンが多そうなので、余計に俺なら私ならこうする、と考えてしまうのかもしれない。

作品は誰の物なのか。作り手とファンとの間に齟齬が生じた時、どちらが譲歩するのか。いっそ離れるという選択肢は無さそうだった。
殴られるのがわかっているのに夫のところへ行く妻と同じですよ、なんて笑えない話も出てきた。

最後の人形遊びはルーカスとファンの関係でしょう。ぶちゅうっとキスをした後、お互いにうえー、うえーとなって、何事もなかったように、まあまあコーヒーでも飲みに行きましょうかとなる。
根本的に嫌いなわけではない。端から見たら面倒くさい人たちだと思われそうだけど、作品にたいして人一倍執着心とこだわりがある。

VSとは言え、完全にファン目線だし、私もファン側だから偏った意見かもしれないけれど、作る側の人たちは、ファンを決してないがしろにしちゃいけないと思う。

ところで、エピソード7はディズニーがルーカスフィルム買収して監督がJ・J・エイブラムスに決まってますが、ファンたちはこの件についてはどう思っているんだろうか。


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