『イコライザー』



2014年公開。『マグニフィセント・セブン』がおもしろかったので、同じアントワーン・フークア監督の別の作品も観てみました。
80年代にアメリカで放映されたテレビドラマの劇場版とのこと。

以前、映画館で予告を見た時には、16秒でコロスとか娼婦の少女を救うためみたいな印象だったので、『レオン』っぽいのかと思った。

けれど、観てみるとそのイメージとは違っていた。昼はホームセンター勤務、夜は殺し屋(?)ということで、『ザ・コンサルタント』っぽいのかと思った。実際には殺し屋ではなかったけれど、確実な仕事っぷりと日常生活を普通に送っているけれど世を忍ぶ仮の姿があるというのは同じなのかもしれない。
でも、別に誰かから依頼があってやっているわけではない。

主人公のロバート(デンゼル・ワシントン)は娼婦テリーを痛めつけた悪の組織に乗り込んでいく。目をギロッとさせて、周囲を観察して頭の中でシミュレーションして、その通りに動く。流れるような動きが恰好いい。あっという間に死体の山の出来上がり。

しかし、ダイナーで本を読んでいるときも、ホームセンターで日中働いているときも、穏やかこの上ない感じの人物がこんな只者ではない動きをするとは。一体何者なのだろう。

ホームセンターの同僚の実家が悪徳警官にひどい目に遭わされた時にも、赴いてやっつけていた。この事件は最初に出てきた娼婦と関係がないし、テリー役はクロエ・グレース・モリッツだったが、決して主役級ではないのだということがわかった。

その次はホームセンターのレジに強盗が来て、レジの金とレジ係の女性の指輪を盗んでいく。このシーンでは、ロバートがこらしめるシーンはもうわかったでしょ?とでも言うように省略されていた。ただ、ホームセンターの売り物のハンマーに付いた血を拭いていて、ああ、それを使っただなということがわかる。けど、売り物…。

こんな感じで、何者かわからないけどとても強いロバートがどんどん悪を倒していく世直しアクションなのだろうか?と思っていたら、こてんぱんにした娼婦宿の元締めであるロシアンマフィアが暗躍している様子が映される。自分の店をめちゃくちゃにされて黙ってはいられないだろう。

全身刺青の様子をなめるように撮り、「フハハハハ…」といかにも邪悪そうな笑い方をしていた。
また、残虐な手段で殺している様子から、相当怖い連中だということもわかる。

なんだかよくわからない謎の男が正義の味方よろしく悪を倒していき、最終的にロバートの正体が何者なのか発覚するという作りなのかと思っていた。しかし、中盤くらいで元CIAということがわかる。『RED』と同じような感じだ。

あと、奥さんを亡くしているのは、ダイナーでテリーも言っていたけれど、ここでも話に出てくる。おそらく、自動車事故でロバートだけが生き残ったのだろう。
けれど、一人で生き残った後の日常はつまらなそう。
時間をきっちり管理して行動し、生活しているようだった。どことなく寂しそうで、生きる目的を見失っている。毎日が楽しいとは言えなさそうだ。

ロバートはロシアン・マフィアに目をつけられるけれど、きっちりと影で対応していた。自分の方が強いことをそれとなく見せて、穏便に事を済ませようとする。

石油タンカーを爆破するシーンは迫力があった。後ろで大爆発が起こっているのに、振り返らずにこっちに歩いてくるロバートというかデンゼル・ワシントンが笑っちゃうくらいかっこいい。

ロバートはあなたたちが仕掛けてこなければこちらから乗り込むことはないよと示していたが、ロシアン・マフィアは、ロバートが働くホームセンターの職員たちを人質にとる。
観ながら、あーあ、怒らせた、知ーらないと思った。他の人、特に親しい人たちを巻き込むのはロバートが一番嫌いな事だと思う。

そこで『エージェント・ウルトラ』を思い出すようなホームセンターバトルが開幕する。ホームセンターにあるものを使って戦うのだ。ここはロバートの職場、つまりホームかアウェイでいったら完全にホームなわけである。負けるはずはない。

『マグニフィセント・セブン』でもデンゼル・ワシントンが砂埃や返り血で汚れることはないという指摘があった。
本作では、血が滴るナイフを持った男にのしかかられても、その血液は落ちることはない。

スプリンクラーが作動するのですが、それが土砂降りみたいに見える中、棚の向こうからデンゼル・ワシントンが現れる。恰好良すぎて、思わず変な声が出ました。
スローで、顔を伝う水滴がぽたりと落ちる。まさに水も滴るいい男である。
監督は本当にデンゼル・ワシントンが好きなんだ…というのを再確認した。
これは、映画館で見ても変な声が出てしまったかも。

それで、ロバートというかもうデンゼル・ワシントンなんですけど、話のバランスがおかしくなるくらい強い。ホームセンターにいるボスもあっさり倒す。
更に、その大ボスの自宅に忍び込んで感電死させていた。

まったくピンチらしいピンチがない。最強としか言いようがない。しかも、冷静にちゃっちゃと短時間で仕事を終える姿勢も恰好良い。

本作の最大の敵はロシアン・マフィアであり、ロバートが目をつけられた原因がテリーなのだから、テリーは一応ヒロインなのかもしれない。
最後にも出てきて、ロバートにお礼を言いに来る。でも予告ほどはまったく活躍していない。恋愛もない。
ロバートの妻に関しても、映像や声も出てこないし、ラストでも言及は無し。
ロバートは悲しみの中で戦っているのだと思うが、妻の名前を叫んだり、許しを乞うたりと、湿っぽくならない。

ただただ、ひたすらロバートが強い。そして、それを演じているデンゼル・ワシントンが恰好良く撮られている。
完全に監督の趣味映画だった。

なるほど、この過剰なまでの魅せ方は、『マグニフィセント・セブン』に受け継がれると思う。繋がっていくのがよくわかる映画だった。




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