『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』



原作は『ハヤブサが守る家』というファンタジー小説。2011年のベストセラーにも選ばれたらしい。
映画の邦題もこのままの方がわかりやすいのではないかと思ったけれど、ティム・バートン監督の映画なら『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』というタイトルの方が合っている気もする。

以下、ネタバレです。








謎の島にある謎の屋敷、そしてそこに住まう謎の人々…。そんな設定からしてわくわくする。
キャラとキャストがばっちり合っていたと思う。またキャラ造形が可愛いというよりはちょっと不気味なのもいい。金髪縦巻きカールのお人形さんみたいな少女の後頭部にもう一つ巨大な口があったり、双子が謎のマスクを付けていたり。
空気より軽い少女、エマの鉄の靴のデザインも凝っていて、見ていて楽しい。衣装は今回もコリーン・アトウッドです。

屋敷の女主人、ミス・ペレグリンの髪の毛が真っ黒ではなく少し青っぽいんですが、青いハヤブサに変身するのも綺麗。

前半は、ジェイクの目を通して、奇妙なこどもたちとペレグリンを観察するといった感じ。自己紹介パートだったと思う。
中盤、ペレグリンが悪いやつにさらわれてからは、こどもたちがそれぞれの能力を生かして戦う。まるでX-MENのようだった。
特に、ブラックプールの遊園地でのバトルは音楽を含めて楽しかった。イーノックの能力で命をさずけられたガイコツたちが触手のモンスターに果敢に挑んでいく。
序盤でも出てきたけれど、イーノックが命をさずけたものの動きはCGのようななめらかさではなく、コマ撮りのようにカクカクしているのがいい。本当にコマ撮りなのか、CGをコマ撮り風にしているのかわからないけれど、ティム・バートンだから本当にコマ撮り撮影なのかもしれない。
この遊園地の乗り物にティム・バートンが乗っているのも発見できて楽しい。

この後の建物内のシーン、炎を操る少女と氷を操る悪者のシーンは少し対決があるけれど、もう一声欲しかった。物足りなさが残った。
あと、マスクを取って石にする双子は、あの能力は1日一回しか使えないとか、充填する時間が必要とかなのだろうか。あの能力があったら、二人だけで倒せそう。

物足りないといえばペレグリンなんですが、自分でも言っていたけれど、彼女には鳥に変身する能力と時を戻せる能力しかないんですよね。バトルはできない。だから、後半のバトルで見せ場がないのが残念。せっかくの女主人というかボスっぽい存在感なのに。途中からずっとハヤブサの姿です。檻から放たれても飛んで逃げるだけ。

ファンタジー特有というか、作品内のルールがいまいちよくわからなかった部分もあった。
一番重要なループまわりです。島のトンネルを抜けると現代から過去に戻る(このループを作ったのがペレグリン?)。それは屋敷がドイツ軍の爆撃に襲われる日なので、ペレグリンが爆撃直前から朝に戻して同じ日を繰り返す。

ペレグリンがバロンにさらわれるが、その向かった先がブラックプールのループをくぐった場所。現代だけれど、ジェイクが来た時間(島のループを通った先の現代)よりは少し前である。このループは戦いの日の夕方にとじることになっていて、ジェイクはそのまま現代に残って、少し前ではあるけれど自分の世界に戻った感じになる。

ただ、冒頭の祖父の死は回避できたものの、そこから何度かループを通って、閉じたブラックプールのループの先へたどり着く。ここまでの紆余曲折をジェイクが話すけれど、結構早口なのと、途中でおもしろ日本が出てきて注目してたら字幕を読み損ねて何を言っているのかわからなかったのと、最後まで言い終わらないうちに、ジェイクの口をエマがキスで塞ぐんですよね…。
どんな過程を経たのかわからないけれど、世界各地にあるループを通って、何度か行き来を繰り返すとブラックプールのループが閉じる前に戻れたってことなのだろうか。でもそうすると、倒したはずのバロンも生きてたりしない? バロンを倒した後、ループの閉じる直前だろうか。でもそうすると、ループのこちら側で座り込んでいるジェイクはどうなる? 同じ人間には会わない仕組み?
考えれば考えるほどわからないし、これがラストシーンなので、なんとなく腑に落ちないまま幕が降りてしまう。なんとなく不完全燃焼だった。

あと、これは個人的なストーリーの趣味なんですが、行きて帰りし物語方式にしてほしかった。
現代でジャックはバイトもつまらなそうだったし、お友達もいないようだった。でも、本当だったら、過去でもなんでも冒険先で成長して、戻ってきて、現実とも折り合いをつけて生きていくというようにしてほしかった。

本作はただの一般人巻き込まれものではなく、ジャックにも実は特殊能力があったから、奇妙なこどもたちの仲間には入れるんですよね。祖父も、現代に戻ってきて後悔したのだろうか。ジャックも現代でこのまま生きていても、変人扱いされるだけだと思ったのだろうか。でも、戻ってきて、祖母と結婚して、ジャックの父が生まれて、ジャックが生まれた。そのジャックに向かって、彼女たちの元へ行けなんて言うだろうか。祖父にとって、ペレグリンの屋敷から帰ってきた後の人生はなんだったのだろう。まったく話に出てこなかったけれど、祖母のことはどう思っていたのだろうか。ずっとエマを想い続けていたのだとしたら失礼な話である。

それに、現代に残した父母や序盤で気遣ってくれたバイト先のおばさんはどうするのだろう。もう2度と会えないけれど、何か説明をして出かけたとも思えない。第一、そんな説明は通じないだろう。また病院に連れて行かれるだけだ。それでも、父母なんだし、黙って出かけて2度と会えないというのもどうなのだろうと思う。
この辺、原作も同じなのだろうか。

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