『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
Posted by asuka at 9:05 PM
原作は『ハヤブサが守る家』というファンタジー小説。2011年のベストセラーにも選ばれたらしい。
映画の邦題もこのままの方がわかりやすいのではないかと思ったけれど、ティム・バートン監督の映画なら『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』というタイトルの方が合っている気もする。
以下、ネタバレです。
謎の島にある謎の屋敷、そしてそこに住まう謎の人々…。そんな設定からしてわくわくする。
キャラとキャストがばっちり合っていたと思う。またキャラ造形が可愛いというよりはちょっと不気味なのもいい。金髪縦巻きカールのお人形さんみたいな少女の後頭部にもう一つ巨大な口があったり、双子が謎のマスクを付けていたり。
空気より軽い少女、エマの鉄の靴のデザインも凝っていて、見ていて楽しい。衣装は今回もコリーン・アトウッドです。
屋敷の女主人、ミス・ペレグリンの髪の毛が真っ黒ではなく少し青っぽいんですが、青いハヤブサに変身するのも綺麗。
前半は、ジェイクの目を通して、奇妙なこどもたちとペレグリンを観察するといった感じ。自己紹介パートだったと思う。
中盤、ペレグリンが悪いやつにさらわれてからは、こどもたちがそれぞれの能力を生かして戦う。まるでX-MENのようだった。
特に、ブラックプールの遊園地でのバトルは音楽を含めて楽しかった。イーノックの能力で命をさずけられたガイコツたちが触手のモンスターに果敢に挑んでいく。
序盤でも出てきたけれど、イーノックが命をさずけたものの動きはCGのようななめらかさではなく、コマ撮りのようにカクカクしているのがいい。本当にコマ撮りなのか、CGをコマ撮り風にしているのかわからないけれど、ティム・バートンだから本当にコマ撮り撮影なのかもしれない。
この遊園地の乗り物にティム・バートンが乗っているのも発見できて楽しい。
この後の建物内のシーン、炎を操る少女と氷を操る悪者のシーンは少し対決があるけれど、もう一声欲しかった。物足りなさが残った。
あと、マスクを取って石にする双子は、あの能力は1日一回しか使えないとか、充填する時間が必要とかなのだろうか。あの能力があったら、二人だけで倒せそう。
物足りないといえばペレグリンなんですが、自分でも言っていたけれど、彼女には鳥に変身する能力と時を戻せる能力しかないんですよね。バトルはできない。だから、後半のバトルで見せ場がないのが残念。せっかくの女主人というかボスっぽい存在感なのに。途中からずっとハヤブサの姿です。檻から放たれても飛んで逃げるだけ。
ファンタジー特有というか、作品内のルールがいまいちよくわからなかった部分もあった。
一番重要なループまわりです。島のトンネルを抜けると現代から過去に戻る(このループを作ったのがペレグリン?)。それは屋敷がドイツ軍の爆撃に襲われる日なので、ペレグリンが爆撃直前から朝に戻して同じ日を繰り返す。
ペレグリンがバロンにさらわれるが、その向かった先がブラックプールのループをくぐった場所。現代だけれど、ジェイクが来た時間(島のループを通った先の現代)よりは少し前である。このループは戦いの日の夕方にとじることになっていて、ジェイクはそのまま現代に残って、少し前ではあるけれど自分の世界に戻った感じになる。
ただ、冒頭の祖父の死は回避できたものの、そこから何度かループを通って、閉じたブラックプールのループの先へたどり着く。ここまでの紆余曲折をジェイクが話すけれど、結構早口なのと、途中でおもしろ日本が出てきて注目してたら字幕を読み損ねて何を言っているのかわからなかったのと、最後まで言い終わらないうちに、ジェイクの口をエマがキスで塞ぐんですよね…。
どんな過程を経たのかわからないけれど、世界各地にあるループを通って、何度か行き来を繰り返すとブラックプールのループが閉じる前に戻れたってことなのだろうか。でもそうすると、倒したはずのバロンも生きてたりしない? バロンを倒した後、ループの閉じる直前だろうか。でもそうすると、ループのこちら側で座り込んでいるジェイクはどうなる? 同じ人間には会わない仕組み?
考えれば考えるほどわからないし、これがラストシーンなので、なんとなく腑に落ちないまま幕が降りてしまう。なんとなく不完全燃焼だった。
あと、これは個人的なストーリーの趣味なんですが、行きて帰りし物語方式にしてほしかった。
現代でジャックはバイトもつまらなそうだったし、お友達もいないようだった。でも、本当だったら、過去でもなんでも冒険先で成長して、戻ってきて、現実とも折り合いをつけて生きていくというようにしてほしかった。
本作はただの一般人巻き込まれものではなく、ジャックにも実は特殊能力があったから、奇妙なこどもたちの仲間には入れるんですよね。祖父も、現代に戻ってきて後悔したのだろうか。ジャックも現代でこのまま生きていても、変人扱いされるだけだと思ったのだろうか。でも、戻ってきて、祖母と結婚して、ジャックの父が生まれて、ジャックが生まれた。そのジャックに向かって、彼女たちの元へ行けなんて言うだろうか。祖父にとって、ペレグリンの屋敷から帰ってきた後の人生はなんだったのだろう。まったく話に出てこなかったけれど、祖母のことはどう思っていたのだろうか。ずっとエマを想い続けていたのだとしたら失礼な話である。
それに、現代に残した父母や序盤で気遣ってくれたバイト先のおばさんはどうするのだろう。もう2度と会えないけれど、何か説明をして出かけたとも思えない。第一、そんな説明は通じないだろう。また病院に連れて行かれるだけだ。それでも、父母なんだし、黙って出かけて2度と会えないというのもどうなのだろうと思う。
この辺、原作も同じなのだろうか。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: