『マグニフィセント・セブン』



『七人の侍』、『荒野の七人』のリメイク。もちろん観ていたほうがリメイク元からの違いとかモチーフにしているキャラクターとかを考えられて楽しめると思いますが、観ていなくてもまったく問題ないです。

監督は『サウスポー』のアントワン・フークア。

以下、ネタバレです。







リメイク元とストーリーは大体一緒だと思う。
金鉱目当てで悪党が村を乗っ取るために乗り込んでくる。村の外から訪れた凄腕のガンマン七人が、戦いの素人である村人たちと力を合わせて悪党とバトルをするというもの。

最初からやっつけるべき悪党がわかっている。また、同情の余地がないほどの悪党なので、善悪について考えるということもない。この辺は西部劇っぽいのかもしれない。

倒す側はならず者であり、七人のキャラクターが濃い。
主人公はデンゼル・ワシントンが演じるサム・チザム。バウンティーハンターだが、全身黒ずくめ、馬も黒いということで影がある。めちゃくちゃ強い。

最初に仲間になるのは調子のいいギャンブラーで手品師のファラデー。クリス・プラットが演じているが、食えない奴である。携帯している拳銃のことを片方は妻、片方は愛人と呼んでいた。手品で気をそらしている間に撃ったりと正攻法ではない。
最期も死んだふりからのダイナマイト投擲というのは彼らしいではないか。もう何発もくらったところでタバコをくわえる。敵は最後の情けと思って火をつけてやる。そこで撃とうとするけれど、そのまま前に倒れこむ。死んだならば撃つことはないだろうと、敵は銃を仕舞うんですが、ジョシュは起き上がり、タバコの火をつかって着火したダイナマイトを投げるという。手品と同じ、やっぱり油断させてからのニヤリなんですよね。飄々としたキャラがクリス・プラットによく合っていた。

賞金首のヴァスケスは、逃がす代わりにサムたちの仲間になった。メキシコ人で、ファラデーとは人種差別ばりばりな言い合いをしていた。それでも本気で仲が悪いわけではなく、いいコンビである。
二人とも二丁拳銃で、二丁拳銃好きとしては嬉しい。

イーサン・ホーク演じるグッドナイトはサムと長らくの知り合いのようだった。ウィンチェスター銃を使うスナイパー。腕は確かだけれど、南北戦争で多数の人間を殺した経験からPTSDになっている。
ジョシュも人の死について話していたけれど、西部劇特有かもしれないけれどとにかく簡単に人がどんどん死んでいく映画である。相手は悪党だから、銃をバンバン撃って人が倒れていくのは爽快感もあるけれど、ちゃんと死にも言及していた。

グッドナイトの相棒ビリーにイ・ビョンホン。銃も使うけれど、ナイフ投げとか髪の櫛で攻撃するのが独特で恰好いい。
無表情で愛想も無いけれど、グッドナイトの前だと喋るし笑うのがいい。

助ける村へ行く途中、一行の前に現れたネイティブアメリカンのレッドハーベストも仲間になる。銃も使うが弓矢と斧を投げる。

敬虔なクリスチャンなのか、聖書の一節を唱えることが多いハンターのジャック。大きな体格を生かしての攻撃もしていた。

このように、七人それぞれのキャラが濃い。体格もバラバラ、人種もバラバラで統一感がない。大げさなキャラ付けなので、漫画っぽい。入り乱れての戦闘でも誰がどこにいるかすぐにわかる。

ストーリーの流れとしては、村が襲われる。襲われた村から来た女性にサムが雇われる。サムは七人の仲間を募り、村に着き占領している悪党の子分たちを成敗。それを聞きつけたボスが新たな仲間を引き連れて村に襲撃。罠を作ったり銃の練習をしたりした村人と七人が悪党をやっつけるという本当にシンプルなもの。
しかも、案外苦労することなく七人は集まるし、大きな喧嘩もない。村に行く途中に襲われたりもせず、旅の道中も短い。

この映画は133分と長めである。じゃあ、何に時間が割かれているのかと言ったら、ほぼガンアクションなどのバトルである。これが本当に恰好いいし、七人それぞれがちゃんと動くので見ていて飽きない。おそらくもう一度観たら新たな発見がありそうなくらい見どころが多い。

ほとんどバトルとは言っても、戦い方にキャラクターがよく出ているし、バトル前日の飲み会でも性格はよくわかるから、しっかりと命の通ったものになっている。

キャラクターの濃さも漫画っぽいが、展開のお約束加減とか見たいものをしっかり見せてくれるのも気持ちが良かった。
敵側にネイティブアメリカンの強い人がいたけれど、やはりこちらのレッドハーベストとの戦いがある。PTSDを理由に途中離脱したグッドナイトは、やはり最終決戦には戻ってくる。悪党のボスを仕留める最後の一撃は、やはり夫を殺された村の女性によるものだった。
やっぱりそうでなきゃな!の連続がとてもいい。

また、デンゼル・ワシントンが真っ黒い服装で真っ黒い馬に乗りながら銃をぶっぱなしているだけで本当に恰好いいけれど、その他にも画作りのこだわりが感じられた。

教会の鐘の近くからグッドナイトとビリーがウィンチェスター銃で遠くの敵を撃っていたが、ガトリング銃で狙われてしまう。その連射で二人も撃たれるが、弾は鐘にも当たってカンカンと非情な音を鳴らしていた。

悪党のボスは教会で死ぬが、十字架のまえで悪党が倒れているのも、画面がまとまっているというかまるで絵のようだった。

最初から最後まで悪党でしかないボス役にピーター・サースガード。最初に村に来た時にもそうだったが、平然と、死ななくてもいい人を撃つあたりが怖い。また、ガトリング銃を持ち出して部下が村を一網打尽にしているときには恍惚とした表情をしていた。不思議な色気がある役者さんだと思う。最後、教会では許しを乞いながら涙目になっているのも良かった。死にかけながらも銃に手をやる底意地の悪さも姑息で完璧だった。

色気といえば、イ・ビョンホンも良かったです。寡黙ながらもナイフ使いが華麗で確実に仕留める姿もいいし、長めの前髪が顔にかかる様子もいい。
彼が演じるビリーとグッドナイトの関係も良かった。この映画では描かれていなくても、ここまで長い期間コンビを組んでいて、絆が深いのがよくわかった。
グッドナイトはサムと再会するまで、PTSDのことはビリーにしか話していなかったのだろう。酒に逃げて、外には弱さを見せないようにしていたのだと思う。ビリーはそんなグッドナイトも受け入れて、サポートしていたのだろう。

最終決戦時にグッドナイトが戻ってきて、「戻ってくると思ってたよ」と言って彼のスキットルを胸から出してビリーが笑う。ここまでびしっとした表情だったのに、一気ににっこりする。それは破顔とも言えるくらいに。もちろん戻ってきたのが嬉しかったのもあるとは思うけれど、おそらくもう死ぬのがわかっていて、それを覚悟したようにも見えたのだ。いいシーンで好きでした。

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