『レゴバットマン ザ・ムービー』



クリス・マッケイ監督。『LEGO ムービー』では編集をしていたらしい。

『LEGO ムービー』で度肝を抜かれたため、フィル・ロード&クリストファー・ミラーが監督でないのは残念。
ストーリー自体もつながっているわけではない。だから、別に『LEGO ムービー』を観ていなくても、本作だけで楽しめる。

けれど、根底に流れるものが同じなので、もしも本作を面白いと思ったならば、『LEGO ムービー』を後からでも観てみるとなるほどと思う面があるはずだ。

イギリスの古典『高慢と偏見』にゾンビを加えたら?というとんでもパロディがベストセラーになった『高慢と偏見とゾンビ』の作者セス・グラハム=スミスの名前が脚本と原案にあるのも驚く。

以下、ネタバレです。
『LEGO ムービー』と『ダークナイト』と『ダークナイト ライジング』についてのネタバレも含みます。











吹き替えは小島よしおが中心人物を担当していて、しかも持ちネタを入れてくるというので(別に小島よしおのせいではないけれど)許せないと思って字幕で観ました。

キャストは、ロビン役にマイケル・セラ、ジョーカー役にザック・ガリフィアナキス、前作から続投でスーパーマン役にチャニング・テイタム、グリーンランタン役にジョナ・ヒルとなかなか豪華。バットマン役のウィル・アーネットも続投です。

ただ、小ネタが満載で、わりとちゃかちゃかと画面が展開する部分が多いため、字幕を読んでいると拾いきれない。

歴代のバットマンのポスターとかメインヴィジュアルをレゴで模した画像があって、すごくよくできていそうだったのに、ちゃんと観られなかった。ソフト化された際には一時停止しながら観たいです。

それに小島よしおがそれほど悪くないらしいという話も聞いたので、ならば字幕版ではなく吹き替えでもいいのかもしれない。
ちなみに、もう一つのお笑い芸人、おかずクラブのほうが気になってしまうらしいが、私はおかずクラブを知らないから声を聞いても顔が浮かばないし気にならなそう。それに、ロビンほどメインのキャラクターでは無い。

バットマンについてはクリストファー・ノーラン版しかほとんどわからない。
『ダークナイト』では、ブルースはアルフレッドに引退をしたらどうかと言われていた。彼自身も引退をして、あとは新市長であるハービー・デントにゴッサムを託し、レイチェルとの結婚を考える。

本当のバットマンとかブルース・ウェインというキャラがどうなのかはわからないけれど、自警団をしつつ、素の姿、ブルースに戻ると一人きりというのは共通しているのではないだろうか。両親を幼い頃に亡くしているのは変わらないだろうし。
本作のブルースは一人きりの部分が強められていて、極度のさみしがりやである。しかし一人でも大丈夫!と強がる面もあったりと、かなり面倒臭い性格になっている。

そんな彼に絡んでいくのが孤児院の子供ディック(ロビン)とジョーカーだ。
ジョーカーとバットマンの関係については『ダークナイト』でも思っていたけれど、愛憎が入り混じっている。バットマンにかまってもらいたいジョーカー。彼を殺すことのできないバットマン。
本作ではこの面もより強められている。
序盤で、ジョーカーからの「俺のことライバルだと思ってるでしょ?」との問いに「別に」と答えるバットマン。ジョーカーは悲しくって目がどんどん潤んでくる(レゴですが)。もうそれが可哀想やら可愛いやら。そこで、ジョーカーからしたらバットマン憎さ100倍になってしまう。
ちなみにジョーカーの吹き替えが子安武人さん、バットマンの吹き替えは『レゴムービー』から引き続き山寺宏一さんである。観たい。

強いテーマとしては二つ。バットマンとジョーカーの関係と、孤独なバットマンが仲間と戦ううちに彼らと絆が作れるのかというところ。
『ダークナイト ライジング』でもブルースは最後セリーナ(キャットウーマン)とどこか外国に一緒にいる。それを見たアルフレッドが一安心したような顔をする。
両親を失ったブルースに擬似であれ家族ができるというのは、バットマンとしての行き着く先の一つというか、ハッピーエンドの一つなのだと思う。

中盤、ジョーカーのアイディアで、バットマンシリーズのヴィランではなく様々な作品から悪役が連れてこられて大暴れする。アベンジャーズ感がある。
ジャンルの違う悪者が入り乱れて暴れるのは某映画を思い出したけれど、タイトルを書くとその映画のネタバレになってしまうので書きません。ジョス・ウィードンっぽさとでも言ったらいいか。

キングコング、サウロン、グレムリン…。そして、ヴォルデモートも出てくるけれど、レイフ・ファインズはアルフレッドの吹き替えです。中の人ネタは字幕ではなかったけれどあったのだろうか?

またブリティッシュロボットと言われていて、何かと思ったら『ドクター・フー』のダーレクが! 字幕だと“知ってたらマニアック”という説明、吹き替えだと“お友達に聞いてみよう!”という説明だったらしい。どちらも名前の紹介はないが、かなり活躍していた。
この辺りはダーレクだけではなく、悪役たちのそれぞれの動きも一時停止をしながら確認して観てみたい。

いろんな作品から悪いやつが連れてこられるのは単純に楽しいのですが、もしかしたらこれって、ぼくのかんがえた最恐軍団では…と思ってしまった。
『LEGO ムービー』が、実は子供が遊んでいたというのが最後で明らかになるが、こちらも種明かしこそないものの、多分同じなのだ。

ゴッサムの地盤が脆いのも、実写ではなくレゴだからだ。子供なのか大人なのかはわからないけれど、手作りなのだ。
コンピューターと呼ばれているのがSiriなのも、外部の音源を使うという手作り感が表れている(ちなみに本物のSiriに、“Hey,computer.”とか“Do you like LEGO Batman Movie?”などと聞くと小ネタ回答を見ることができるとのこと。日本語でもオッケーらしい)。

子供の頃、作品の括りを無視して適当にその辺にある悪そうなキャラを混ぜてラスボスにして遊んだ記憶があるだろう。それである。
一応、すべてレゴで出てる作品から持ってきたのかな。『ドクター・フー』は出てますが。

要するに究極のごっこ遊びなのだ。
しかし、悪役をたくさん連れてくるから、バランスをとるために、正義側もバットマン一人ではなく、他のキャラにも手伝わせることにする。そうすると、自然にバットマンが仲間を得るというストーリーが出来上がる。
ごっこ遊びの果てに、バットマン自体の核心部分にうっかり迫ってしまう。
オチを考えてからそこに向かってストーリーを組み立てて…という手順を踏まない、自然に、遊んでいるうちにストーリーができてしまったような楽しさがあるのだ。

種明かしとして父子が出てきたりはしないけれど(そうしたら前回と同じになってしまうし)、前作を観たら想像のつくことである。前作の話の続きというわけではないけれど、スピリットは同じだし、レゴである意味と、バットマンを題材にした意味を同時に叶えているのが素晴らしい。よくできている。

クライマックスで大きな地割れができたときの解決方法もレゴならではだった。
レゴの人形の頭の髪の毛とか帽子をとると突起がでてくる。それを足と繋げる。人形を繋げて橋を作ってしまう。うっとりするような発想の柔軟さ。どんな遊びをしようと自由なのだ。

ラストではジョーカーも、バットマンに“I hate you,forever.”とはっきり言ってもらえてにっこり。「興味ない」が一番つらいものだ。
完全ハッピーエンドです。楽しかった!

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