『ワイルド・スピード ICE BREAK』



ワイルド・スピード8作目。
監督は『ストレイト・アウタ・コンプトン』のF・ゲイリー・グレイ。

アクション映画としてはおもしろかったけれど、ワイスピ感は薄いのかなと思った。でも、私は1作目とユーロ・ミッション(6作目)以降しか観ていないので、私のワイスピ感が間違っているのかもしれない。
過去作からもキャラクターがふんだんに登場するので過去作を見ておいたほうが良さそう。私は少しわからない部分がありました。

以下、ネタバレです。








それがワイスピ感なのかはわからないけれど、カーアクションが少なく感じた。
カーアクションといっても、普通の映画に出てくるカーチェイスのようなものではなく、それを車でやっちゃうの?とか、そんなバカな!みたいなやつです。

今回の敵がハッカー(この敵とドムは、初対面ではなさそうだったけれど、シャーリーズ・セロンは過去のワイルド・スピードに出ている気配はないので、初対面でいいのだろうか)ということで、車を多数ハッキングして自動運転で操縦するシーンがあった。今の時代に合っている。自動運転車が当たり前になったら、このような事件があるのだろうか…と少し思ったけれど、ワイルド・スピード自体はありえないカーアクションの連発なので、そこまでは多分大丈夫だろう。

このシーンに限ったことじゃ無いし、もしかしたらワイルド・スピード全般に言えることなのかもしれないけれど、ロボットもののSF映画のようにも見えた。車がロボットで、乗っている人間が操縦士だ。自動運転の車が列をなしている様子は、制御を失ったロボットが追いかけてくるシーンのようだった。

裏切ったドムの車の周囲をファミリーの車が囲って、逃がさないようにそれぞれの車から紐を飛ばしてドムの車に繋げるシーンがあった。言葉はなくても、その紐を通じて、仲間たちの気持ちがドムに向かって行っているように見えた。車だけでも感情表現ができる。

また、ラスト付近で、生身のドムを仲間の車で囲んで爆風を避ける(いくら頑丈な車でもたぶんそんなことは無理だろうけれど、ワイスピなら許される)シーンも、仲間の想いの強さがわかった。

氷の下から巨大な潜水艦が浮上してきて追ってくるシーンは、まるで怪獣のようにも見えた。怪獣に追いかけられるロボット…。もう何の映画だかわからない。
このシーンから副題がICE BREAKなのかなとも思うけれど、言うほどアイスシーンも多く無い。予告にも出てくるし仕方ないけれど、氷の上を走るというのは伏せてほしかった。
オープニングは灼熱のキューバだし、そこからのギャップがおもしろい。

ただ、アイスブレイクとは、初対面同士が打ち解ける手法というような意味合いもあるらしい。新キャラも出てくるし、一緒に戦えば仲間になれるよ!という意味も含まれているのだろうか。

オープニングのキューバパートが一番ワイルド・スピードっぽかった。毎回、最初にレースは入るものなのかな。スターターのセクシーなお姉さんとともに。
無理をしすぎてエンジンから炎があがり、それでもそのまま走り続け、炎で前が見えなくなってきたので、バック走行に切り替えるというとんでもなさ。
しかも、相手の自動車のキーは受け取らず、尊敬だけ受け取っておくよとは恰好良すぎる。その上、このバトルの相手が伏線になっていたのもよかった。

しかし、オープニングでいいところを見せていたドムも、その後すぐに敵に服従してしまい、ファミリーと対立することになってしまう。ほとんど最後のほうまで、ドムの活躍は敵側の行動だけなのでさみしい。やはり、本当ならば、仲間のリーダーとして活躍しているドムが見たい。

ドムの裏切りの理由は、自分の子供を人質に取られてのことだったけれど、その辺が少しわからなかった。一緒に閉じ込められていたのは前妻なのかなと思ってしまったがどうやら違うらしい。私はドムの恋人はレティしか知らなかったけれど、その前というか、レティが死んだと思われた時に関係を持ったらしい。その時にできた子供なのだろう。

ただ、序盤にレティが子供が欲しいというようなことを言っていたけれど、ここに違う女性とドムの子供がいる…。どうするのだろう?と思った。けれど、見せしめとして、ドムの子供の母親は殺されてしまう。
これでドムは従わざるをえないだろうというのもわかるけれど、どうもご都合主義的に殺された印象を受けてしまった。

ドムの裏切りによって、EMP奪取に失敗したホブスは刑務所に収監される。そこで、正面の監房の中にいたのがデッカードだ。二人が言い合っている様子は、ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサム好きとしてもとても嬉しいし、可愛い。
このあとの刑務所脱出アクションも、重量感のあるドウェイン・ジョンソンと流れるような動きのジェイソン・ステイサムと対比が見応えありました。特に、収監されていたからデッカードは当然武器を持っていないが、警備の人間の銃を持つ手を掴んで他の人を撃ったりするのが恰好よかった。

ホブスはドムが敵側にいる間は、実質リーダーのような感じになっていて、本作では出番がとても多い。
ホブス登場のシーンは、自分の娘のサッカーチームとハカを踊って敵のチームを威嚇するというものだった。小さい女の子たちと一緒にハカを踊るドウェイン・ジョンソンが本当に可愛い。全力で敵チームをあおっていたけれど、敵チーム(これも当然女子)からはあきれられるという始末。可愛い。

本作ではデッカードもファミリーに入る。呉越同舟である。ここでもホブスとわーわー言い合っていて可愛い。けれど、デッカードが死んだという報告を受けたあとは、寂しそうにしていた。

ファミリーの中でわーわー言い合うといえば、ミスター・ノーバディの部下として新人が入ってきて、その新人とローマンもソリが合わなそうでまた可愛かった。言い合いながらも協力する描写がたまらない。
この新人役がスコット・イーストウッド。『スノーデン』だと体育会系の役だったけれど、今回は青二才というか真面目ゆえに考えが行き届かないというか、どちらにしてもあまり賢くはない役だった。今回は憎めない役だった。

本作で一番好きなのは、デッカードがドムの子供を救い出してから脱出するまでのシーンである。子供といっても赤ちゃんである。赤ちゃんを寝かせたバスケットを片手に持ちながらのバトルがとてもいい。演舞のような流れるアクションはそのままに、合間合間で赤ちゃんのご機嫌もとる。銃声がわからないように、子供向けの楽しげな曲が流れるヘッドホンをつけてあげるのだが、子供の機嫌をとるシーンではその曲が小さく流れる。
赤ちゃんを守りながらだから、アクションはさらに複雑になるし、恰好良いバトルと赤ちゃんをあやす可愛さが交互にでてきて、そのギャップが面白いし、ジェイソン・ステイサムがより好きになってしまった。
ただ、カーアクションでもないし、ワイルド・スピード感はない。好きなシーンだけど、あとから考えた時に、あのジェイソン・ステイサムは何の映画だったか…とわからなくなりそう。

後半ではデッカードの弟、オーウェン(ルーク・エヴァンス)もファミリー側として参戦。でもほんのちょっとだけだったので、せめて最後の打ち上げシーンに来てほしかった。

同じく、話題になっていたヘレン・ミレンも出番はほんのちょっとだけだった。デッカードとオーウェンの母親役ということで、風格はばっちりだったけれど、アクションはなかった。「車を運転できるなら出演依頼を受けるわ」と言っていたのであるのかと思っていた。また、運転しないにしても、アクションはできるんだし、『RED2』のように、助手席で銃をかまえるとか…。でもそうしたら、そのまま『RED2』になってしまうか。もしかしたら次作以降に出てくるのだろうか。

今回、キャラクターが多かったけれど、ちょっと生かしきれていないかなとも思った。ただ、私の好きなドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムはかなり活躍する。

せめて、最後の打ち上げでいろいろと回収してほしかった。ショウ一家も勢ぞろいしてほしいくらいだったけれど、三人揃ったらそのまま乗っとりそうかな。

ただ、死んだはずのデッカードが現れたのだから、ホブスと言い合うなり、一言交わすなり、何かあってほしかった。ただ、ホブス関連だと、FBIに戻る/戻らないの話があったので、これ以上打ち上げでホブスについては触れられなかったのかもしれない。本当に主人公になってしまう。ただでさえ、本編中もドムの影が薄めだったのに。

あと、レティは別に自分の子じゃなくても、ドムの子供ということでいいのかな。もっともめたり悲しんだりするのかと思っていた。その件をドムが説明したりもしていなかった。死んでいたと思われる時期のことだし、別に誰の子よ!ともならないのか。過去作を観ていないので、エレナとレティの関係もわからないけれど、顔なじみなのだろうか。エレナの子なら…という感じなのかな。殺されたエレナに対する追悼もそれほど大きく取り上げられなかった。

それより、子供の名前をブライアンと発表するなど、ポール・ウォーカー追悼が続いていた。「名前はあなたが決めて」というセリフが中盤に出てきたときに、ブライアンにするのだろうなというのは予測がついたし、前作の最後のポール・ウォーカーを追悼するシーンが完璧だったので、どうなんだろうと思ってしまった。でも、前作とは監督が違うし、F・ゲイリー・グレイも追悼したかったのかもしれない。ブライアンはそれだけ特別なキャラクターだということだろう。

もう少し、本編が楽しかったことに対するまとめの打ち上げシーンであってほしかった。ただ、本編中でドムはほぼファミリーを離脱して味方側にいなかったけれど、打ち上げの中心はドムであることを考えると、そのバランスが難しくなってしまうのも仕方ないかもしれない。



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