『8月の家族たち』


予告を見た感じだと、エキセントリックな母親に振り回されて、すったもんだありながらも三姉妹(とその夫)が力を合わせて危機を乗り切って大団円みたいな話かと思ってたけど、違った。
以下、ネタバレです。





家族ものは細かい部分はもちろん違うものだけれど、根本的な部分では一緒だから、登場人物の気持ちが伝わってきやすい。特に家族の揉め事となると、本当によくわかる。
家族だから、近い人間だから、遠慮や配慮がなくなって余計な一言二言がばんばん出る。謝らないのも甘えなのかもしれない。
もう修復不可能と思っても、血がつながっているし、縁は切れてもその事実は変えられない。だからこそ、余計に怒りがわいてくるし、
更に、家族間の揉め事は家族間で解決しなければならない点も厄介。

この映画の中では、揉め事が新たな揉め事を呼び、三姉妹も夫婦間も親子間もすべてが破綻する。しかも、ジュリア・ロバーツ演じるバーバラに関しては自分の母親と自分の子供と両方だ。

家族ものは丸くおさまるのがセオリーなのかと思ってた。もちろん、本作もあの後丸くおさまるのかもしれない。なんとかおさまるんでしょう、きっと。どうかおさまってください、と自分のことのように願いたくなってくる。

メリル・ストリープもジュリア・ロバーツも、出演作を好んで観る女優さんたちではないけれど、それぞれアカデミー賞主演女優賞、助演女優賞にノミネートされていただけあって、演技に見ごたえがあった。家族の会合ものなので、狭い世界のわりに出演者が多く、有名俳優が集められてるけれど、二人以外は脇役に見えた。
葬式の後の食事のシーンとブーツの話をするシーンのメリル・ストリープはさすがとしか言いようがないうまさ。あれだけ苦悩するジュリア・ロバーツというのも初めて見た。迫力があった。結局は数日間の出来事だけれど、その演技によって密度が濃くなっている。もともとが戯曲らしいので、セリフが多いのも濃くしている要員なのかもしれない。

ユアン・マクレガーもクリス・クーパーも良かったんですが、ベネディクト・カンバーバッチが出てきたところで、映画館内の気温が1、2度上がる感じがした。一気に、映画館内の観客さんたちが色めき立ったのを感じたんだけれど、もしかしたら、私の体温が上がっただけかもしれない。
また、少し気弱だけれど優しい男の子という役柄もいい。更に、ピアノを弾きながら歌うシーンがあるのは貴重なのではないか。しかも、すごくうまいわけではなく、でも健気さというか一生懸命さは伝わってくるあたりがずるい。

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