『アデル、ブルーは熱い色』


カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。
女性同士のセックスシーンが話題になっているけれど、確かに釘付けにはなるけれど、この映画の見所はそこではなく感じた。同性間だから…というような、差別的なことは描かれていない。恋愛と青春と、その終わりの話。

以下、ネタバレです。





アデルはエマに一目惚れをするんですが、その青い髪の色を印象づけるかのように、青がモチーフ的に使われていた。
名前すら知らない、でも頭の中は彼女でいっぱいで、なんとなく高揚している気持ちを発散させるかのようなデモ行進のシーンでは青い発煙筒を持っている。恋愛 し始めで、デモに参加してはいても、どこかお祭り気分で、頭のどこかで常に彼女のことを考えているからずっとドキドキしていて、なんとなくワクワクするよ うな楽しい気分になっているのが伝わってきた。
あと、同級生に階段でキスしそうになっているときに、その子は指に大きな青い石がついた指輪をしているのも気になった。所詮、彼女の代わりでしかない。

二人が付き合い始めて、別れた後も、セックスする時のシーツの色が青かったり、アデルが別れたエマと会うレストランやエマの展覧会を見に行く時など、好んで 青い服を着ていたりと、要所要所で目立つが、特に気になったのは付き合う前の二箇所だった。それは私が恋に落ちる様子が描かれている映画が好きだからかもしれないけれど。

ゲイバーでエマを見つけて、二人で話すシーンも良かった。そこで初めて名前を知って、何をしている人なのかとかを訊いた り話したりしますが、もうお互いにおしゃべりが止まらない。相手の事をもっと知りたい、知って欲しいという気持ちが前面に出ている。店内の音楽はうるさかったはずなのに、カウンターで話す二人だけ世界が違っているようで、音楽さえも気にならない。

アデル役のアデル・エグザルホプロスの演 技が素晴らしい。彼女の表情を正面からとらえているシーンが多いのですが、このゲイバーで初めてエマと話すシーンでも、恋に落ちたのがわかる。セックス前 のシーンでも、欲情したのが顔に出ている。物思いに耽る、不安がるなど、すべての感情が表情にうまく表れていた。

また、映画はアデルの高校時代から始まって、卒業して先生になって…と時を経るんですが、明らかに後半では疲れているというかやつれてきている。
恋に恋しているかのような序盤。同級生と恋愛について喋っていた頃は子供っぽい表情だった。エマと恋愛をして、それから関係のことで悩んで、結局別れる事に なった後半は大人になっている。ただ、相手を好きなだけではだめなのだ。家族が違う、育ちが違う、仕事に対する考え方が違う…。すれ違いと別れを経験し て、大人になったのが表情にしっかり出ている。

エマの髪の色が、途中から青ではなく金髪になるのですが、そこで青春は終わったのだと思う。でも、きっとアデルは青い髪のエマが好きだったのだ。たぶん、エマのほうが年齢的な面もあるのか、少し大人になるのが早かった。

ラストで、アデルの事を気にしていた男性がアデルを追いかけますが、逆側に行ってしまう。会えたのか会えなかったのかはわからないけれど、それは新しい恋の 始まりなのだと思う。アデルがエマに一目惚れをしたときに、ストリートミュージシャンがスチールパンのようなものを叩いていて、その音がバックで流れてい るのですが、ラストにもその音が鳴っていた。きっとこれも恋が始まる暗示なのでしょう。だから、はっきりとは描かれていなくてもハッピーエンドなのを確信 している。

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