『ホビット 決戦のゆくえ』
Posted by asuka at 9:16 PM
ホビット三部作の三作目であり、『ロード・オブ・ザ・リング』の一作目に繋がるらしい。
サブタイトルは“行きて帰りし物語”のほうがいいのではないかと思っていたけれど、“決戦のゆくえ”で良かったと思う。
いま調べたら、原題も“There and Back Again”ではなくて“The Battle of the Five Armies”に変更されていたらしい。
以下、ネタバレです。
面白かったことは面白かったけれど、ホビットの三作目と言われるとどうなんだろうと思った。一作目でビルボが「冒険に行くんだ!」と意気揚々と駆け出したシーンの印象が強かったので、冒険で三部作観たかった。今作はほとんどが戦闘シーンだった。
前作は竜のスマウグが「村を襲ってやる」と言って、飛んで行くところで終わった。一体どうなってしまうのか、ひやひやする終わり方だった。今作は前作のあらすじも何もなく、いきなりスマウグが村の上空に来るシーンから始まる。
前作のあらすじは別になくてもいいと思う。でも、スマウグのシーンはあっさり終わってしまう。
前作で、バルドが黒い矢を放てば…みたいな話が出てたけれど、まさにそれでスマウグが倒される。今回出てくる新しい案は特にない。ピンチらしいピンチと言えば、弓が折れて息子の肩を使って矢を放つというところくらいで、わりと短時間で事態は収束する。村は焼き払われてしまうが、スマウグは討伐される。
こんな短い時間で片付くなら、『ホビット3』までひっぱる必要はあったのかなと思ってしまった。2の最後に入れられたのではないか。
前作の最高潮の盛り上がりに続けて観たかった。いきなり最高潮から始まっても、気持ちがついていかない。
そう考えるとやはり、あらすじを入れてもらって、その間でちょっと気持ちを盛り上げたほうが良かったのだろうか。
その後は、トーリンがスマウグの金貨にとりつかれてしまうことはあっても、ほぼ戦闘です。人間、エルフ、ドワーフ、オーク軍が入り乱れる。サブタイトルの“The Battle of the Five Armies”のとおりなんですが、もうホビットをはずして、“The Battle of the Five Armies”というタイトルの映画のようなだった。
Fiveのもう一つはなんだろう。魔法使いかホビットかなと思うけど、ガンダルフは魔力を失ってるからホビットかな。
わくわくするような冒険を期待してたんですが、今回は場所はほとんど動かない。ただ、はなれ山を目指していてそこに辿り着いたのだから、どうするのだろうとは前作の時に思った気がする。
行きて帰りし物語だったなら、ビルボがホビット庄に帰る冒険が観たかった。でも原作がある映画だし、勝手にそんなこともできないのだろう(原作未読)。
それか、今回の戦闘を短くして、前二作をもう少し短くして、少しずつずらせば三作目の途中ではなれ山に辿り着いたのではないか。
今回、ビルボはほとんど活躍しない。あまり戦闘に向かなそうだし、戦闘が主の本作では仕方が無いのかもしれないけれど、補助的な役割だった。
どちらかというと、トーリンが主人公のようだった。ただ、金貨に惑わされたトーリンが、自分自身の声で正気に戻るのはもったいないと思う。自分の中の“祖父とは違う”という言葉を反芻してのものだった。あんなに仲間がたくさんいるのに、仲間の言葉には聞く耳持たずだったのは残念。
映画のほとんどを占めるのは戦闘というか戦争で、それぞれの軍の人数の多さにまず圧倒される。楯をがっと並べてその隙間から槍を出した守りの部隊と、それを乗り越えて戦闘部隊が飛び出してくるシーンも恰好良かった。
人間は馬に乗っているのは、まあよくある風景である。その中でもバルドが白馬に乗っているのは、周囲にも村の代表と認められたようでかっこいい。他の種族が他の乗り物に乗っているのが面白い。
エルフの王スランドゥイルはムースのような大きな角をつけた動物に乗っている。左右の角で三匹ずつオークをとらえて首を刎ねるのが恰好良かった。また、動物の大きな角とスランドゥイルの太い眉毛がなんとなく合っていたのもおもしろい。
ドワーフ軍の代表、トーリンのいとこのダインはイノシシのような大きな豚のような動物に乗っていた。ドワーフは体が小さくごつっとしているが、動物も同じようなイメージだった。
それぞれの種族がそれぞれの体に合った動物に乗っていた。また、その動物たちが装飾品や鎧を身につけているのも見ていて楽しかった。ちょうど『300』の象のように。
動物の装飾だけではなく、武器などの造型のこだわりや一つの画面の中での情報量の多い戦闘、大人数が入り乱れているあたりなど、ところどころで『300』を思い出すシーンはあった。
トロールが出てきた時のその大きさにも驚いた。ここも引いて撮っているので、人間大に比べての巨大さがわかる。その攻撃方法もおもしろく、背中に二、三人オークを背負っていて、トロールが屈んで後ろのオークたちがパチンコの容量で石を飛ばし、壁を破壊していた。
このような、ストーリーとはまったく関係のない細かいところに凝っている様子も『300』っぽい。逆に言えば、今作はそのほとんどが戦闘シーンで占められているので、凝ってはいるけれど、内容はほぼないです。
前二作を観ているときもゲームっぽいなと思っていたのですが、それはファンタジーRPGっぽかった。今回は、ゲームはゲームでもジャンルは違う。大人数の戦闘は戦国BASARAのようだったし、後半のトーリンやキーリがアゾク達と戦う一対一の戦闘は格闘ゲームのようだった。どちらにしてもアクションです。
倒れた塔を橋代わりにして、壊れるところをひょいひょいジャンプして渡るレゴラスは、エルフの軽やかさがよくわかった。華麗でした。ゲームだったらあんなにタイミングよくジャンプするのは難しそうと思ってしまった。
その次のアゾクとトーリンの戦闘は更に難しいステージといった感じだった。まず、足場が氷になっているため立っているのもやっとで戦いづらい。そして、鉄球のようなものを打ちつけてくるので、避けても足場が壊れる。これは難易度が高い。
戦闘は戦闘で、これ単体で見れば非常に見応えはあって面白い。ただ、140分のほとんどが一つの戦闘で、しかも、これがホビットの最終章というのはどうなのだろうと思う。別の映画だったら最高でした。
戦闘が終わったあとには、きっとこれは『ロード・オブ・ザ・リング』に繋がるのだろうなと思うエピソードも出てきた。
レゴラスの向かう先のことも出てくるのだろうし、ガンダルフがビルボの家を訪ねてくるシーンで終わったけれどそこから始まるくらいなのではないかと思う。また、序盤だけれど、森の奥方が追い払ったネクロマンサーたちのことも出て来るのだろう。
毎度お馴染みのHFRで観ましたが、相変わらず明るいシーンでは色がはっきりしすぎてコントのようになっていた。
ただ、今回は村が焦土にされるのも夜だし、戦闘シーンも雪が積もっていて空も曇りのため、あまり日中のシーンはなかった。
また、瞳の色がいつも綺麗な色になるのが目をひいていたけれど、アゾクの小さな瞳まで綺麗な澄んだ色になってしまっていた。
前二作と雰囲気は違っても、画面につめこまれた情報量という面では同じなので、高画質のほうが細かいところまでよく観られたとは思う。
あと、HFRは関係ないかもしれないですが、今回もカメラが後ろにぐわーっとひくことで全体の広さを示す撮り方をしていて、これが毎回酔う。
あとこれも、別にHFRとは関係がないかもしれないけれど、スマウグが上空後方から来るシーンで、本当に映画館の後ろのほうから飛んできたように錯覚した。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: