『ビリー・エリオット ミュージカルライブ』


日本で2001年に公開された映画『リトル・ダンサー』をミュージカル化したもの。ロンドンでは2005年から上演されている。監督は映画と同じスティーブン・ダルドリー、音楽はエルトン・ジョン。
今回の映像は、9/28にロンドンのヴィクトリア・パレスで行われたもので、ライブ配信された国もある。
最初に監督が客席に挨拶をするのですが、そこでちゃんと「日本でも少し遅れて公開されます」と言っていて、最初から日本公開も想定されていたのが嬉しい。そのせいか、NTLよりも日本語字幕がしっかりしていた感じがした。
どちらにしても、現地で見のがしたのでNTLに続き、こうして日本でも映画館で観られるのはありがたい企画です。

NTLと同じく、最初にメイキングや楽屋紹介などの短い映像がついていた。楽屋紹介は今回主役を演じるエリオット・ハンナくんによるもの。今期でもビリー役が4人いるらしいけれど、そのうちの一人。大体、北東部の子が選ばれることが多いらしいけれど、彼はリバプール出身とのこと。夢はミュージカル俳優になることらしい。

「11時間も練習してるんだ!」と言っていたけれど、スタッフの方が実際は7時間と訂正していた。それでも大変だ。でも、実際に内容を見ると、常に出ているし、ダンスシーンも多いので納得。

舞台上の椅子は同じ大きさに見えるけれど、少しずつ大きさが違っていて、ステージの奥行きを感じさせ広く見えるようにしている、という裏話も公開されていた。本編を見ても、まったくわからなかった。

観られて良かったことには変わりないけれど、歌やダンスはやはり生で観たいと思わせた。NTLの『フランケンシュタイン』を観た時よりもそれは強く感じた。

映画と大筋では同じだけれど、映画がストで負けて以降、だいぶ話が重く暗くなってくるのに対して、ミュージカル版はもちろん重くはなるけれど、どこかコミカルな部分が残した作りになっている。
特にオーディションを受けにロンドンに出てくるシーンの父子ともどものおのぼりさん具合はおもしろかった。その前の、町をあげてビリーを送り出すシーンが泣けただけに余計に。
ステージの幕を下ろして、父子だけが幕の前に出て「ここがロンドンかー」などと話すシーンは、キャストがこちら側に来たようでおもしろかった。

家のシーンでは螺旋階段が下から来て、上がるとビリーの部屋が二階のようになっていた。セットも凝っていたけれど、インターミッション後のクリスマスパーティは、労働者階級の人たちが不満はあれども楽しそうだった。最初、全員がサッチャーのマスクをかぶっているのもおもしろい。現在の状況をしめす人形劇をやりながら、上からすごく大きなサッチャー人形が出てきて、それも当時の状況をしめしているのだと思った。
ここでの父親のカラオケが泣ける。無骨ながらも、亡くなった妻に対する想いが歌われていた。
気持ちがそのまま歌われるシーンはどれも泣いてしまうけれど、18才になったら読んでと母から託された手紙や、最後の母親との別れの歌が特に泣きました。

エルトン・ジョンの曲もどれも良くて、2005年から変わっていないのかどうかはわかりませんが、長く愛される魅力はここにもあると思った。
ミュージカルにおいて、曲が混じるシーンが好きなのですが、今回もあった。お前らのおかげで給料が上がったと炭坑夫たちを挑発する警察官とあくまでも戦う姿勢を崩さない炭坑夫たち。この言い合いのような勇ましく攻撃的な曲と、バレエを習っている子供たちの自由に踊ろうという華やかで力強い曲が混じる。
大人たちの争いと子供たちは無関係であってほしいと思う。それでも否応無く取り込まれてしまう様子がこの二つの曲が混じるシーンでうまく表されていた。

自由にやりたいことをやろうよというのは、バレエだけでなく、ビリーの友達のマイケルにも言えることだ。マイケルがお姉さんのワンピースを着ていて、ビリーにも女物の服を着るように促してコーディネイトしてあげる。色とりどりの洋服を二人の少年が着ながら、踊るシーンは楽しかった。途中で大きなドレスが出てきて一緒に踊るんですが、おじさんのズボンみたいな服だけ、男物はいらない、とマイケルに追い返されていた。

マイケルは女物の服が好きなことを隠そうとはせずに、いいじゃないか好きなんだから、と開き直るような姿勢も見せていた。途中でゲイであることも告白。もちろん悩んでいないわけはないだろうが、それよりもあっけらかんとした様子が印象的だった。最後にビリーがマイケルの頬にキスをするのも泣ける。

マイケルのことだけではなく、途中途中でゲイネタが織り交ぜられていた。客いじりもそうだったし、男がバレエをやるなんて!というのも何度も出てきた。
また、ロンドンのバレエ学校からの手紙にBilly Elliot,Esquireと書いてあるのを、Billy Elliot,Queerと読み間違えるシーンも。

ビリーはうっかり習うことになってしまったバレエに興味を持つけれど、中で踊るダンスはバレエだけではなかった。
タップダンスも多かったし、縄跳びをしながらのタップダンスは曲芸のようだった。
ほぼ親の事情と意見によりバレエ学校の試験を受けられなくなってしまった時の怒りのダンスは、バレエを基調としてるのかもしれないけれど、より激しいものだった。
オーディション後に「踊っている時にどんなことを考えますか?」という質問を受けて、自由になるんだと歌いながらのダンスもバレエでありながらより全身を使っていて、体操の床種目のようなものも取り入れられていた。ここの曲もとても良くて泣けるのですが、ダンスからも生命力のようなものを感じた。歌いながら必死に踊るので、少し息切れもしているのがまたいい。

大人になったビリーと現在のビリーが一緒に踊るシーンがあるけれど、今回はその大人ビリー役として初代ビリーのリアム・ムーアが特別に演じている。現在はバレエダンサーとして活躍しているらしい。
白鳥の湖に合わせて、二人並んで椅子を使って同じように踊っているけれど、途中からペアを組んで踊る。大人と子供が組んで踊るのを初めて見ました。また、同じ役の二人というのがいい。

また、今回のみの特別な企画として、歴代のビリーを演じた27名が揃って踊るカーテンコールも楽しい。現在のビリー以外はBILLYと書かれたTシャツを着ていた。当たり前ですが、全員青年になっていた。

カーテンコールは出演者がチュチュを付けて出て来て、笑いながらもいい舞台を観たとしみじみ思って涙が出てきた。特に、おばあさん役の方はチュチュ姿で椅子に座って足を開くなど、サービス精神旺盛でした。

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